[O-ED-02-3] リハビリテーション専門職の業務効率と業務実施における意識との関連について
―共分散構造分析による検証―
Keywords:業務効率, 管理運営, 共分散構造分析
【はじめに,目的】
近年,生産性向上や産業衛生の分野で注目されているpresenteeismは,出勤していても心身の健康状態による業務生産性低下の状態を示し,欠勤や休職で業務に就けない状態であるabsenteeismよりも職場の生産性低下の影響が大きいとされている。先行研究では,presenteeismは「時間管理」,「身体活動」,「集中力・対人関係」,「仕事の結果」等と関連があるとされ,管理職は,労働者のメンタルヘルスを含む安全配慮義務としてpresenteeismの発生を防ぎ,業務効率を向上させる為に,管理運営を行う必要がある。ところが,リハビリテーション専門職(以下リハ専門職)は,昨今の診療報酬改定により,さらに質の向上が求められ,書類作成やカルテの記入,他職種との情報交換などの業務量が増加している。ゆえに,リハ専門職を取り巻く環境は,新たにpresenteeismが発生し,業務効率に影響することが予測されるが,実際に各職員の業務に取り組む際の意識が業務効率に繋がっているのかどうかは定かではない。そこで,本研究は,当院のリハ専門職の業務効率と業務に取り組む際の意識との関連について検証することを目的とした。
【方法】
H28年7月から8月に,当院に在職しているリハ専門職91名(男性39名,女性52名,平均経験年数7.5±5.1年)を対象とした。研究デザインは,調査研究とし,独自に作成した調査項目を用いた。項目は,「個人属性」,「カルテの記入」,「他職種との情報交換」,「昼休憩」,「治療時間」,「超過勤務」についての6要素を含めた全22項目であり,それぞれの項目に合わせた尺度水準により回答を求めた。その後,「超過勤務」を従属変数,他の項目を独立変数としたモデルを検討するため共分散構造分析を行った。統計解析にはR(version3.3.1)を用いた。
【結果】
アンケート回収率は100%で,有効回答数は91名であった。「超過勤務」を従属変数,「カルテの記入」,「昼休憩」を独立変数としたモデルの適合度は許容水準を満たす値を示した(χ2(17)=0.177,ns;CFI=0.970;REMSA=0.061)。主な結果として,「カルテの記入にかかる時間」からは,「定時に終了できているか」に対して0.43,「平均退社時間」に対して0.39の有意なパス係数が得られた(p<0.05)。また,「昼休憩に十分休めているか」からは,「定時に終了できているか」に対して0.92,「平均退社時間」に対して0.41の有意なパス係数が得られた(p<0.05)。
【結論】
本研究の結果より,カルテの記入時間がかかるほど,定時終了ができなくなっていること,平均退社時間が遅れることが示された。また,昼休憩に休めていないほど,定時終了ができなくなっていること,平均退社時間が遅れることが示され,業務効率が低下していた。今後は,カルテの記入,昼休憩の確保について,指導方法や時間管理を検討することでpresenteeismを予防し,業務効率を向上させていく必要があると考える。
近年,生産性向上や産業衛生の分野で注目されているpresenteeismは,出勤していても心身の健康状態による業務生産性低下の状態を示し,欠勤や休職で業務に就けない状態であるabsenteeismよりも職場の生産性低下の影響が大きいとされている。先行研究では,presenteeismは「時間管理」,「身体活動」,「集中力・対人関係」,「仕事の結果」等と関連があるとされ,管理職は,労働者のメンタルヘルスを含む安全配慮義務としてpresenteeismの発生を防ぎ,業務効率を向上させる為に,管理運営を行う必要がある。ところが,リハビリテーション専門職(以下リハ専門職)は,昨今の診療報酬改定により,さらに質の向上が求められ,書類作成やカルテの記入,他職種との情報交換などの業務量が増加している。ゆえに,リハ専門職を取り巻く環境は,新たにpresenteeismが発生し,業務効率に影響することが予測されるが,実際に各職員の業務に取り組む際の意識が業務効率に繋がっているのかどうかは定かではない。そこで,本研究は,当院のリハ専門職の業務効率と業務に取り組む際の意識との関連について検証することを目的とした。
【方法】
H28年7月から8月に,当院に在職しているリハ専門職91名(男性39名,女性52名,平均経験年数7.5±5.1年)を対象とした。研究デザインは,調査研究とし,独自に作成した調査項目を用いた。項目は,「個人属性」,「カルテの記入」,「他職種との情報交換」,「昼休憩」,「治療時間」,「超過勤務」についての6要素を含めた全22項目であり,それぞれの項目に合わせた尺度水準により回答を求めた。その後,「超過勤務」を従属変数,他の項目を独立変数としたモデルを検討するため共分散構造分析を行った。統計解析にはR(version3.3.1)を用いた。
【結果】
アンケート回収率は100%で,有効回答数は91名であった。「超過勤務」を従属変数,「カルテの記入」,「昼休憩」を独立変数としたモデルの適合度は許容水準を満たす値を示した(χ2(17)=0.177,ns;CFI=0.970;REMSA=0.061)。主な結果として,「カルテの記入にかかる時間」からは,「定時に終了できているか」に対して0.43,「平均退社時間」に対して0.39の有意なパス係数が得られた(p<0.05)。また,「昼休憩に十分休めているか」からは,「定時に終了できているか」に対して0.92,「平均退社時間」に対して0.41の有意なパス係数が得られた(p<0.05)。
【結論】
本研究の結果より,カルテの記入時間がかかるほど,定時終了ができなくなっていること,平均退社時間が遅れることが示された。また,昼休憩に休めていないほど,定時終了ができなくなっていること,平均退社時間が遅れることが示され,業務効率が低下していた。今後は,カルテの記入,昼休憩の確保について,指導方法や時間管理を検討することでpresenteeismを予防し,業務効率を向上させていく必要があると考える。