[O-ED-03-6] がんのリハビリテーションに携わる理学療法士が抱える問題
半構造化面接を用いた一考察
Keywords:がんのリハビリテーション, 理学療法士へのインタビュー, 葛藤
【はじめに,目的】
がん罹患数の増加や診療報酬改定によるがんのリハビリテーション(以下リハビリ)の整備で,今後は大学病院や一般の急性期病院,地域医療においても様々な病期におけるがん患者に関わる機会が増加することが予想される。近年,理学療法士がバーンアウトやうつに陥る可能性もあることが報告されており,我々はがんのリハビリを行う上での特有の難しさ,それによっておこる理学療法士の問題に着目して調査を行った。
【方法】
現在がん患者に対してリハビリを行っている理学療法士を対象に理論的飽和に至るまで半構造化インタビューにて面接を行った。インタビューはICレコーダーにて録音した。解析はグラウンデッド・セオリー方法を用いて行った。
【結果】
理学療法士9名に対するインタビューにより,がん患者に対してリハビリを行っている理学療法士に葛藤が生じる状況と,それに対応するために必要な能力がわかった。
まず前提として,理学療法士は一人の患者をオーダーを受けてからリハビリ終了まで一人で担当する。そのため,例えば患者が病態を受け入れられていない場合には,患者の言葉は否定せずに,ただし嘘はつかずに受容へ導く手助けをする際に葛藤が生じやすい。また,患者自身が病態を理解していない場合には,Hopeを把握しゴール設定をする際に葛藤が生じるため,言葉選びに慎重にならなければいけない。がん患者に対するリハビリは化学療法や放射線療法などの治療に並行して行われることも多いため,有害事象の発生など突然のイベント発生への対応が必要であり,ある程度状態変化の予測に幅を持たせるようにしないと常に変化する患者の状態に適したリハビリが行えない。診断時から終末期まで長期間担当することで感情移入することが多くなり,患者が亡くなった際に自分の気持ちを整理することも必要となる。
以上のような状況に対応するために,「すべての疾患に対応できる能力」や「プログラムを修正する能力」,「コミュニケーション能力」,「気持ちを切り替える能力」等の必要性が明らかになった。特に新人の頃にはそれらの能力が不足しているため対応しきれないことが多く,リハビリ終了後の反省が自分自身を責めるような後悔へとつながることも多い。
【結論】
がん患者に対してリハビリを行っている理学療法士は様々な場面で葛藤を抱えていることがわかった。既に従事している理学療法士が上述のような状況で葛藤を抱えていることからも,今後がんのリハビリに従事する理学療法士は働き始める前やがん患者を実際に担当する際には相応の心構えが必要になる。このような状況で葛藤が生まれるのは当然であるという認識を事前に持つことで,自身が壁に当たった時に乗り越えるきっかけになると考える。
がん罹患数の増加や診療報酬改定によるがんのリハビリテーション(以下リハビリ)の整備で,今後は大学病院や一般の急性期病院,地域医療においても様々な病期におけるがん患者に関わる機会が増加することが予想される。近年,理学療法士がバーンアウトやうつに陥る可能性もあることが報告されており,我々はがんのリハビリを行う上での特有の難しさ,それによっておこる理学療法士の問題に着目して調査を行った。
【方法】
現在がん患者に対してリハビリを行っている理学療法士を対象に理論的飽和に至るまで半構造化インタビューにて面接を行った。インタビューはICレコーダーにて録音した。解析はグラウンデッド・セオリー方法を用いて行った。
【結果】
理学療法士9名に対するインタビューにより,がん患者に対してリハビリを行っている理学療法士に葛藤が生じる状況と,それに対応するために必要な能力がわかった。
まず前提として,理学療法士は一人の患者をオーダーを受けてからリハビリ終了まで一人で担当する。そのため,例えば患者が病態を受け入れられていない場合には,患者の言葉は否定せずに,ただし嘘はつかずに受容へ導く手助けをする際に葛藤が生じやすい。また,患者自身が病態を理解していない場合には,Hopeを把握しゴール設定をする際に葛藤が生じるため,言葉選びに慎重にならなければいけない。がん患者に対するリハビリは化学療法や放射線療法などの治療に並行して行われることも多いため,有害事象の発生など突然のイベント発生への対応が必要であり,ある程度状態変化の予測に幅を持たせるようにしないと常に変化する患者の状態に適したリハビリが行えない。診断時から終末期まで長期間担当することで感情移入することが多くなり,患者が亡くなった際に自分の気持ちを整理することも必要となる。
以上のような状況に対応するために,「すべての疾患に対応できる能力」や「プログラムを修正する能力」,「コミュニケーション能力」,「気持ちを切り替える能力」等の必要性が明らかになった。特に新人の頃にはそれらの能力が不足しているため対応しきれないことが多く,リハビリ終了後の反省が自分自身を責めるような後悔へとつながることも多い。
【結論】
がん患者に対してリハビリを行っている理学療法士は様々な場面で葛藤を抱えていることがわかった。既に従事している理学療法士が上述のような状況で葛藤を抱えていることからも,今後がんのリハビリに従事する理学療法士は働き始める前やがん患者を実際に担当する際には相応の心構えが必要になる。このような状況で葛藤が生まれるのは当然であるという認識を事前に持つことで,自身が壁に当たった時に乗り越えるきっかけになると考える。