The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本理学療法教育学会 » 口述発表

[O-ED-06] 口述演題(教育)06

臨床実習教育

Sun. May 14, 2017 1:00 PM - 2:00 PM A6会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室303)

座長:平野 孝行(名古屋学院大学リハビリテーション学部理学療法学科)

日本理学療法教育学会

[O-ED-06-5] 模擬患者試験における学内・外評価者の採点の差異に関する報告

細谷 志帆, 佐藤 洋一郎, 春名 弘一 (北海道科学大学保健医療学部理学療法学科)

Keywords:妥当性, 学内外評価者, 模擬患者試験

【はじめに,目的】

昨今,理学療法学教育では学生の臨床技能を高めることを目的に,客観的臨床能力評価試験が導入されてきている。この試験は,臨床技能として「コミュニケーション」,「介護技術」,「検査・測定技術」,「分析,治療技術」といった項目それぞれに具体的な課題内容で評価され,知識,態度,技術の習得を図るものである。

本学理学療法学科では,臨床技能を細分化せずに一連の流れの中で,主に検査・測定技術に重点を置いて評価するために「模擬患者試験」を実施している。模擬患者試験の採点方法は,臨床家の視点を取り入れるために,学科教員(以下,学内評価者)と臨床の理学療法士(以下,学外評価者)それぞれが採点する手法を採用している。本報告では,採点の妥当性を高めるための知見を得ることを目的に,学内・外評価者の採点の差異について分析した。



【方法】

対象は本学理学療法学科3年生に在籍し模擬患者試験を受けた48名とした。出題は運動器系疾患(以下,運動器)と中枢神経系疾患(以下,中枢)の2分野とし,模擬患者情報は,試験3週間前に書面にて学生に提示した。運動器,中枢は各2ブースずつ設営し,1つのブースに学内および学外評価者を1名ずつ配置した。評価項目は,運動器3項目(関節可動域測定(以下,ROM-t),徒手筋力測定,形態計測),中枢3項目(12段階片麻痺機能検査,深部腱反射,感覚検査)に,共通項目として,問診,リスク管理を追加した各分野5項目とした。採点は各評価項目につき,複数の採点項目を設け,それぞれ5段評価で採点した。各評価項目の得点率を算出し,学内・外評価者間でWilcoxonの符号付順位検定を行った。統計処理は,SPSSver.20を用いて行い,有意水準は5%未満とした。有意差を認めた要因について,学内評価者4名を対象に自由回答でアンケート調査を実施した。




【結果】

学内・外評価者間で有意差を認めた項目は,運動器では形態計測(p<0.05),問診(p<0.01),中枢では深部腱反射(p<0.05)であった。学内評価:学外評価の得点率は同様の順にそれぞれ,37.9%:34.2%,72.2%:81.4%,75.3%:79.7%であった。

アンケート調査の結果,形態計測では,設問の内容が正しく理解されない学生や,試験途中で時間切れになった学生など,検査・測定技術そのものの能力を判断できない場合に採点の差異が生じたという回答が得られた。問診では,学内評価者は学生の能力を把握している分,緊張状態でぎこちない様子を低く採点した可能性があるという回答が得られた。深部腱反射に関しては,模擬患者の病態への配慮,脱力させる工夫,評価道具の使用,など注意すべき点が多い上に,採点項目も4項目と多く,採点にばらつきがみられた可能性があるという回答が得られた。



【結論】

採点の妥当性を高めるためには,試験途中で時間切れになった場合などの評価基準の統一や,採点項目数の改良が必須である。