[O-ED-06-6] ルーブリック様式の実習成績報告書を活用した実習事前学習と事後学習の運用報告
~新しい評価表の使用感を学生のアンケート結果をもとにひもとく~
Keywords:ルーブリック, 臨床実習成績, 自己学習
【はじめに,目的】
本校では,様々な臨床実習における課題を,実習指導法ではなく教育評価法に視点をあて,実習成績評価にルーブリック様式の成績報告書を導入した。主観的評価になりがちな従来の実習成績評価を改善し,実習教育の質の向上をねらいとし,約2年の開発期間と1年間の運用を経た。ルーブリックは,教育目標や評価基準の可視化に優れたツールで,臨床実習教育において各種目標と基準を養成校・実習施設・学生の間で容易に共有する事ができ,成績評価の用途のみならず,事前学習や事後学習までと広汎に活用する事が出来る。今回は,ルーブリックを実習の事前・事後学習で学生に使用させ,その学生視点での感想をまとめた。
【方法】
対象は,検査測定体験実習を経験した3年生60名で,学生が臨床実習の事前・事後学習に使用したルーブリックの様式に関する感想を問う。調査は,事前・事後学習に関する6項目,ルーブリックの客観性に関する2項目,総合評価の1項目で構成されるアンケートを用いた。設問は,1.実習前に評価項目ごとの到達目標を確認しやすかったかどうか。2.評価尺度ごとの到達度を理解しやすかったかどうか。3.目標と到達度を確認しながら実習対策ができたかどうか。4.実習後の自己内省に活用し,課題解決の為の具体策を考えられたかどうか。5.他者評価結果と自己評価結果を対比しながら振り返りができたかどうか。6.次の実習へ向けた自らの課題が明確にできたかどうか。7.他者評価結果を受容しやすい評価様式かどうか。8.公平に他者評価されやすい評価様式かどうか。9.以前の成績評価様式と比較して良い様式だと感じるかどうか。の合計9項目で構成し,4段階の尺度で回答させた。調査は,実習の振り返り学習期間後に実施し,解析は総合評価の設問9の項目を基準として,その他1~8の項目同士との関連をSpearmanの順位相関係数(有意水準5%)を用いて実施した。
【結果】
アンケート全体の平均値は3.46となり,特に評価項目ごとの到達目標,評価尺度ごとの到達基準,自己課題の明確化,他者評価と自己評価の比較に関する結果が3.5以上と高い値となった。設問同士の比較では,特に設問9と1(r.702,P<.001),設問9と7(r.706,P<.001),に強い正の相関が,設問9と2(r.644,P<.001),設問9と8(r.683,P<.001)には正の相関がみられた。
【結論】
ルーブリックは,用途の広汎さや作成自由度の高さが故に成績評価としての信頼性や妥当性は未知数である。特に基準の客観性は重要で,ある程度の運用期間をかけて継続した検討が必要である。今回は,実際にルーブリックを実習の事前・事後学習で活用し,学生もその利点を①目標,評価基準が明確に記されている事,②客観的に他者評価される成績報告書様式となっている事,に感じていることがわかった。今後は,同様の調査を評価者となる実習指導者を対象としても実施したのち,各種基準や尺度の信頼性検証などを実施する。
本校では,様々な臨床実習における課題を,実習指導法ではなく教育評価法に視点をあて,実習成績評価にルーブリック様式の成績報告書を導入した。主観的評価になりがちな従来の実習成績評価を改善し,実習教育の質の向上をねらいとし,約2年の開発期間と1年間の運用を経た。ルーブリックは,教育目標や評価基準の可視化に優れたツールで,臨床実習教育において各種目標と基準を養成校・実習施設・学生の間で容易に共有する事ができ,成績評価の用途のみならず,事前学習や事後学習までと広汎に活用する事が出来る。今回は,ルーブリックを実習の事前・事後学習で学生に使用させ,その学生視点での感想をまとめた。
【方法】
対象は,検査測定体験実習を経験した3年生60名で,学生が臨床実習の事前・事後学習に使用したルーブリックの様式に関する感想を問う。調査は,事前・事後学習に関する6項目,ルーブリックの客観性に関する2項目,総合評価の1項目で構成されるアンケートを用いた。設問は,1.実習前に評価項目ごとの到達目標を確認しやすかったかどうか。2.評価尺度ごとの到達度を理解しやすかったかどうか。3.目標と到達度を確認しながら実習対策ができたかどうか。4.実習後の自己内省に活用し,課題解決の為の具体策を考えられたかどうか。5.他者評価結果と自己評価結果を対比しながら振り返りができたかどうか。6.次の実習へ向けた自らの課題が明確にできたかどうか。7.他者評価結果を受容しやすい評価様式かどうか。8.公平に他者評価されやすい評価様式かどうか。9.以前の成績評価様式と比較して良い様式だと感じるかどうか。の合計9項目で構成し,4段階の尺度で回答させた。調査は,実習の振り返り学習期間後に実施し,解析は総合評価の設問9の項目を基準として,その他1~8の項目同士との関連をSpearmanの順位相関係数(有意水準5%)を用いて実施した。
【結果】
アンケート全体の平均値は3.46となり,特に評価項目ごとの到達目標,評価尺度ごとの到達基準,自己課題の明確化,他者評価と自己評価の比較に関する結果が3.5以上と高い値となった。設問同士の比較では,特に設問9と1(r.702,P<.001),設問9と7(r.706,P<.001),に強い正の相関が,設問9と2(r.644,P<.001),設問9と8(r.683,P<.001)には正の相関がみられた。
【結論】
ルーブリックは,用途の広汎さや作成自由度の高さが故に成績評価としての信頼性や妥当性は未知数である。特に基準の客観性は重要で,ある程度の運用期間をかけて継続した検討が必要である。今回は,実際にルーブリックを実習の事前・事後学習で活用し,学生もその利点を①目標,評価基準が明確に記されている事,②客観的に他者評価される成績報告書様式となっている事,に感じていることがわかった。今後は,同様の調査を評価者となる実習指導者を対象としても実施したのち,各種基準や尺度の信頼性検証などを実施する。