第52回日本理学療法学術大会

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日本心血管理学療法学会 » 口述発表

[O-HT-02] 口述演題(心血管)02

2017年5月14日(日) 11:40 〜 12:40 A3会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室201)

座長:木村 雅彦(北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻), 座長:近藤 和夫(北光記念病院心臓リハビリテーション室)

日本心血管理学療法学会

[O-HT-02-2] 末梢動脈疾患(PAD)患者におけるサルコペニアの潜在性と身体機能

上泉 理, 江端 純治, 高橋 友哉, 山越 霞, 若杉 大, 田仲 愛, 荒谷 隆 (KKR札幌医療センターリハビリテーション科)

キーワード:PAD, サルコペニア, 膝伸展筋力

【はじめに,目的】

PAD患者は,加齢に加え,間歇性跛行(IC)による低活動に伴いサルコペニアの割合は高いと推察されるが,サルコペニアの実態調査は,一般高齢者が対象であることが多く,PAD患者を対象としたものはまだ見当たらない。

そこで本研究は治療前のPAD患者を対象にサルコペニアの潜在性と身体機能について調査・検討した。

【方法】

2015年4月から2016年8月に当院でリハビリ処方されたFontaine分類2度の血行再建術術前患者,または保存療法が適応となったPAD患者51名73肢(平均年齢70.4±9.4歳,男性36名,女性15名)を対象とした。

サルコペニアの評価は,Asian Working Group for Sarcopenia(AWGS)の基準に従い,握力と骨格筋量(SMI)の両方満たした者をサルコペニア,SMIのみ低下した者をプレサルコペニアとし,サルコペニア群(S群),プレサルコペニア群(PS群),正常群(N群)の3群に分類し,サルコペニアの有病率と3群間の身体機能を比較した。

SMIは,InBody S10を使用し,部位別直接生体電気インピーダンス法(BIA)にて測定した。

身体機能は,最大歩行距離(MWD),膝伸展筋力,握力,片脚立位,WIQ,ABIを測定し,MWDはトレッドミルを用い,速度2.4km/h,傾斜12%,最大10分間を基本として実施した。

測定した筋力について,握力はAWGSの基準,膝伸展筋力は5Metsの運動耐容能に必要といわれる0.46kgf/kg(神谷ら)を基準値として比較した。

統計処理にはIBM SPSS statistics 20を使用し,有意水準は5%とした。MWDと膝伸展筋力(全体・S群以外)やMWDと握力との相関にはspearmanの順位相関係数を用い,S群のMWDと膝伸展筋力との相関にはpersonの相関係数を用いた。

【結果】

S群は全体の17.6%,PS群は33.3%であり,半数以上の者は筋肉量が低下している状態であった。患側膝伸展筋力は,S群で0.30±0.15kgf/kg,PS群で0.42[0.31-0.54]kgf/kg,N群で0.45±0.15kgf/kgであり,3群の中でS群が最も低値であった。このような傾向は,MWDや握力,片脚立位,WIQの各身体機能も同様であった。

また,筋力が基準に満たなかった者は,膝伸展筋力で全体の52.9%,握力で21.6%であった。

MWDと膝伸展筋力の間には強い相関を認め,r=0.6,P<0.0001であり,S群単独ではr=0.8,p<0.014,S群以外ではr=0.5,p<0.002であった。MWDと握力の間にも相関を認めたが,膝伸展筋力の方が強い相関を認めた。

【結論】

本研究におけるサルコペニア有病率は17.6%と,幸らの8.6%よりも高く,PAD患者にはサルコペニアが一般高齢者よりも多いことが分かった。

PAD患者では,より下肢筋力が低下しやすく,それがMWDに強く影響していると思われた。さら筋力低下が著しいS群ではより強く影響していることが示唆された。

PAD患者におけるサルコペニアや身体機能を改善させていく為には,ガイドラインでは明記されていない筋力トレーニングを含めた運動療法を行っていく必要性があると思われた。