[O-HT-02-3] 糖尿病の合併は心拍数を用いた代謝当量の推定に影響を与えるのか?
キーワード:METs, 心拍数, 糖尿病
【はじめに,目的】
我々は第51回本学会にて,運動時の代謝当量(以下METs)を推定する簡便な方法として0.05×{運動時心拍数(HR)-安静時HR}+2の式から推定可能であること,また,この推定式には年齢やβ遮断薬の影響は少ないことを報告した。しかしながら,前回の報告では運動時の心拍応答に影響を与える糖尿病(DM)性自律神経障害の影響が考慮されていない問題があった。この推定式には運動時と安静時の心拍数が大きく影響しているため,自律神経障害の働きが強く影響する可能性が高い。
そこで,本研究ではDMの有無がMETsの推定式に影響するのかを調査することを目的とした。
【方法】
2012年4月から2016年8月までに心配運動負荷試験(CPX)を実施した患者のうち,虚血性心疾患,心筋症,弁膜症および心不全と診断された患者245例を対象とし,DMの有無により2群に分類した。測定項目は,患者背景因子として年齢,性別,診断名,DMの有無,HbA1c,左室駆出率(LVEF),脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)および服薬状況を診療録より調査した。また,DM診断の有無より2群に分類した。CPXデータより,安静時および運動負荷1分ごとのHRとMETsを調査した。解析は,HRからHR index(運動時HR/安静時HR)とHR net(運動時HR-安静時HR)を算出し,METsと各指標の相関はPearsonの積率相関係数を用いて算出した。また,従属変数をpeak METs,独立変数を運動時HR,HR indexおよびHR netとした重回帰分析をそれぞれ実施し,予測式の算出と寄与率を評価した。
【結果】
245例から得られた2089個のデータを解析対象とした。DM群(n=50,男性46名,平均年齢61.6±11.8歳)と非DM群(n=195,男性137名,平均年齢57.1±14.4歳)におけるLVEFは56.8±15.8%と57.3±15.7%,BNPの中央値は57.5(四分位範囲40.5-198.1)pg/mlと75.4(四分位範囲30.1-151.8)pg/ml,各内服率はβ遮断薬62%と67.1%,ACE阻害薬40%と52.3%,ARB30%と16.4%,利尿薬34%と35.3%であった。Pearsonの積率相関係数の結果,2群ともにMETsは運動時HR,HR indexおよびHR netと有意な正の相関を認めた(すべてP<0.001)。重回帰分析の結果,HR indexを独立変数としたMETs予測式は,DM群と非DM群でそれぞれ3.8×HR index-1.6(adjusted R2=0.715)と3.3×HR index-0.6(adjusted R2=0.450)が,HR netでは0.05×HR net+2(adjusted R2=0.742)と0.05×HR net+2.3(adjusted R2=0.588)が算出された(すべてP<0.001)。
【結論】
本研究の結果より,METsの推定にはHR netの方がHR indexよりも有用であり,さらに,DMの影響は極めて少なく0.05×HR net+2の式でMETsを推定可能であることが示された。
我々は第51回本学会にて,運動時の代謝当量(以下METs)を推定する簡便な方法として0.05×{運動時心拍数(HR)-安静時HR}+2の式から推定可能であること,また,この推定式には年齢やβ遮断薬の影響は少ないことを報告した。しかしながら,前回の報告では運動時の心拍応答に影響を与える糖尿病(DM)性自律神経障害の影響が考慮されていない問題があった。この推定式には運動時と安静時の心拍数が大きく影響しているため,自律神経障害の働きが強く影響する可能性が高い。
そこで,本研究ではDMの有無がMETsの推定式に影響するのかを調査することを目的とした。
【方法】
2012年4月から2016年8月までに心配運動負荷試験(CPX)を実施した患者のうち,虚血性心疾患,心筋症,弁膜症および心不全と診断された患者245例を対象とし,DMの有無により2群に分類した。測定項目は,患者背景因子として年齢,性別,診断名,DMの有無,HbA1c,左室駆出率(LVEF),脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)および服薬状況を診療録より調査した。また,DM診断の有無より2群に分類した。CPXデータより,安静時および運動負荷1分ごとのHRとMETsを調査した。解析は,HRからHR index(運動時HR/安静時HR)とHR net(運動時HR-安静時HR)を算出し,METsと各指標の相関はPearsonの積率相関係数を用いて算出した。また,従属変数をpeak METs,独立変数を運動時HR,HR indexおよびHR netとした重回帰分析をそれぞれ実施し,予測式の算出と寄与率を評価した。
【結果】
245例から得られた2089個のデータを解析対象とした。DM群(n=50,男性46名,平均年齢61.6±11.8歳)と非DM群(n=195,男性137名,平均年齢57.1±14.4歳)におけるLVEFは56.8±15.8%と57.3±15.7%,BNPの中央値は57.5(四分位範囲40.5-198.1)pg/mlと75.4(四分位範囲30.1-151.8)pg/ml,各内服率はβ遮断薬62%と67.1%,ACE阻害薬40%と52.3%,ARB30%と16.4%,利尿薬34%と35.3%であった。Pearsonの積率相関係数の結果,2群ともにMETsは運動時HR,HR indexおよびHR netと有意な正の相関を認めた(すべてP<0.001)。重回帰分析の結果,HR indexを独立変数としたMETs予測式は,DM群と非DM群でそれぞれ3.8×HR index-1.6(adjusted R2=0.715)と3.3×HR index-0.6(adjusted R2=0.450)が,HR netでは0.05×HR net+2(adjusted R2=0.742)と0.05×HR net+2.3(adjusted R2=0.588)が算出された(すべてP<0.001)。
【結論】
本研究の結果より,METsの推定にはHR netの方がHR indexよりも有用であり,さらに,DMの影響は極めて少なく0.05×HR net+2の式でMETsを推定可能であることが示された。