第52回日本理学療法学術大会

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日本心血管理学療法学会 » 口述発表

[O-HT-02] 口述演題(心血管)02

2017年5月14日(日) 11:40 〜 12:40 A3会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室201)

座長:木村 雅彦(北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻), 座長:近藤 和夫(北光記念病院心臓リハビリテーション室)

日本心血管理学療法学会

[O-HT-02-5] 心疾患患者における5回立ち座り検査から歩行自立度の予測

山本 周平1, 石田 昂彬1, 三澤 加代子1, 常田 亮介1, 大津 勇介1, 松森 圭司1, 保科 渡1, 中曽根 沙妃1, 荻無里 亜希1, 大平 雅美2, 市村 芙美1, 矢島 史恵3, 樋口 智子4, 山崎 佐枝子4, 吉村 康夫4 (1.信州大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.信州大学医学部保健学科, 3.信州大学医学部附属病院看護部, 4.信州大学医学部附属病院循環器内科)

キーワード:心疾患, 立ち座り検査, 歩行自立

【はじめに,目的】

心疾患患者における入院期心臓リハビリテーションの大きな目的は,運動耐容能の向上のみならず日常生活活動の向上に繋げることにある。この日常生活活動の基盤である歩行動作の獲得にあたり,入院期の早い段階から歩行自立の可否を判定することは,その後の患者指導を行うにあたり重要な評価となってくる。先行研究において,下肢の筋力とバランス機能から高い正診率で歩行自立度を判定可能であることが報告されているが,筋力の評価として特殊な機器を要するために全ての施設で評価が出来ない問題がある。そこで,我々は下肢筋力とバランス機能の複合的な動作である5回立ち座り検査(5STS)に着目し,5STSから歩行自立が判定出来るか否か調査することを目的とした。


【方法】

2015年11月から2016年10月までの間に信州大学医学部附属病院に入院し心臓リハビリテーションの処方があった18歳以上の心疾患患者72名を対象とした。疾患の内訳は虚血性心疾患,弁膜症および心不全であり,平均年齢は61.7±12.8歳であった。測定項目は,患者背景因子として年齢,性別,診断名,左室駆出率(LVEF)および脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を診療録より調査した。運動機能として,5回立ち座り検査(5STS),等尺性膝伸展筋力,片脚立位時間およびfunctional reachを評価した。また,歩行自立度の指標としてfunctional independence measure(FIM)を使用して判別を行った。解析は,各運動機能の相関はPearsonの積率相関係数を使用した。また,歩行自立を判別する上で有用な因子か否かについてROC曲線を求め曲線下面積(AUC)によって検討を行った。


【結果】

平均年齢は61.7±12.8歳,男性77.8%,LVEF54.8±15.6,BNPの中央値167.7(四分位範囲52.6-362.6)pg/mL,歩行非自立の割合は14%(10例)であった。Pearsonの積率相関係数の結果,5STSは等尺性膝伸展筋力,片脚立位時間およびfunctional reachと有意な負の相関を認めた(すべてP<0.01)。またROC曲線の結果,各運動機能指標のAUCは5STSが0.821,等尺性膝伸展筋力が0.761,片脚立位時間が0.529およびfunctional reachが0.752であった。なお,5STSで感度と特異度が最も良好なカットオフ値は9秒であった。


【結論】

本研究の結果から,5STSは下肢筋力やバランス機能と密接に関係しており,また歩行自立度判定においても下肢筋力やバランス機能の単独指標よりも優れており,そのカットオフ値は9秒であることが明らかとなった。