[O-KS-01-1] 起立動作における上肢位置の相違が姿勢制御戦略に及ぼす影響
Keywords:起立動作, 上肢位置, 姿勢制御戦略
【はじめに,目的】
これまでに,起立動作における上肢制約の相違は,下肢の運動学および運動力学的変化に影響を及ぼすこと(Etnyre 2007),静的姿勢におけるLight touch(102g以下,以下LT)は,直立姿勢を安定させることなどが報告されている(Kouzaki 2008)。しかしながら,起立動作における上肢(以下,右示指)およびLT位置の相違が動的姿勢制御戦略に及ぼす影響に関する報告は少ない。そこで,本研究は,右示指およびLT位置の相違が,起立動作における姿勢制御戦略に及ぼす影響について検討することを目的とした。
【方法】
一般健常男子大学生12名(年齢21.8±3.0歳)を対象とし,被験者に左右2台の地面反力計(AMTI社製,100Hz)上で,椅座位から起立動作を快適な速さで5回実施させた。その様子を光学式3次元自動動作解析装置(Motion Analysis社製,100Hz)のカメラ6台で計測した。椅子の高さは下腿長に合わせ,右示指の位置は立位時における大転子の高さに応じて定位させ,左上肢は体側とした。LT有は,大転子の高さの計量器に右示指で接触させ,LT無は計量器より3cm空間上で保持させた。なお,試技は1)LTの有無,2)右示指位置の側方(右5趾先端より15Cm外側)および前方(側方位置から15cm前方),3)開閉眼,を組み合わせた8試技を無作為に計測した。被験者間比較を行うため,地面反力の鉛直における値の最小値(起立開始)から上後腸骨棘が最初の高値を示した時点(終了)を起立動作とし,これを100%に規格化した。得られた身体分析点の3次元座標値を用いて,キネマティクス的変数を求めた。また,逆動力学演算を行うことで,キネティクス的変数を求めた。なお,本研究では関節角速度とトルクの乗算を関節トルクパワーとし,さらに関節トルクパワーを時間積分することで関節トルクによってなされた仕事を求めた。得られた83試技の評価量を,多元配置分散分析を用いて条件ごとに比較した。また,足関節の仕事量のピーク値と身体重心加速度の減速のピーク値の関係をSpearmanの相関関係を用いて比較した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
足関節の正仕事は,右示指位置前方の方が側方より有意に高値であった(p<0.01)。また,重心加速度の減速局面におけるピーク値と足関節トルクパワーのピーク値出現時点の間には負の相関がみられた(側方r=0.75,p<0.01,前方r=0.89,p<0.01)。LT有無および開閉眼で比較したものは有意な差はなかった。
【結論】
右示指位置が前方のとき,椅座位から立位における鉛直方向の重心加速度を減速させる局面において,足関節の正仕事は底屈筋群の求心性収縮によるエネルギー生成能を増加させることで,姿勢制御戦略を変化させていたことが示唆された。このことから,定位された右示指位置の相違が起立動作における足関節筋群の活動に影響を及ぼし,動的な姿勢制御戦略を変化させることが示唆された。
これまでに,起立動作における上肢制約の相違は,下肢の運動学および運動力学的変化に影響を及ぼすこと(Etnyre 2007),静的姿勢におけるLight touch(102g以下,以下LT)は,直立姿勢を安定させることなどが報告されている(Kouzaki 2008)。しかしながら,起立動作における上肢(以下,右示指)およびLT位置の相違が動的姿勢制御戦略に及ぼす影響に関する報告は少ない。そこで,本研究は,右示指およびLT位置の相違が,起立動作における姿勢制御戦略に及ぼす影響について検討することを目的とした。
【方法】
一般健常男子大学生12名(年齢21.8±3.0歳)を対象とし,被験者に左右2台の地面反力計(AMTI社製,100Hz)上で,椅座位から起立動作を快適な速さで5回実施させた。その様子を光学式3次元自動動作解析装置(Motion Analysis社製,100Hz)のカメラ6台で計測した。椅子の高さは下腿長に合わせ,右示指の位置は立位時における大転子の高さに応じて定位させ,左上肢は体側とした。LT有は,大転子の高さの計量器に右示指で接触させ,LT無は計量器より3cm空間上で保持させた。なお,試技は1)LTの有無,2)右示指位置の側方(右5趾先端より15Cm外側)および前方(側方位置から15cm前方),3)開閉眼,を組み合わせた8試技を無作為に計測した。被験者間比較を行うため,地面反力の鉛直における値の最小値(起立開始)から上後腸骨棘が最初の高値を示した時点(終了)を起立動作とし,これを100%に規格化した。得られた身体分析点の3次元座標値を用いて,キネマティクス的変数を求めた。また,逆動力学演算を行うことで,キネティクス的変数を求めた。なお,本研究では関節角速度とトルクの乗算を関節トルクパワーとし,さらに関節トルクパワーを時間積分することで関節トルクによってなされた仕事を求めた。得られた83試技の評価量を,多元配置分散分析を用いて条件ごとに比較した。また,足関節の仕事量のピーク値と身体重心加速度の減速のピーク値の関係をSpearmanの相関関係を用いて比較した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
足関節の正仕事は,右示指位置前方の方が側方より有意に高値であった(p<0.01)。また,重心加速度の減速局面におけるピーク値と足関節トルクパワーのピーク値出現時点の間には負の相関がみられた(側方r=0.75,p<0.01,前方r=0.89,p<0.01)。LT有無および開閉眼で比較したものは有意な差はなかった。
【結論】
右示指位置が前方のとき,椅座位から立位における鉛直方向の重心加速度を減速させる局面において,足関節の正仕事は底屈筋群の求心性収縮によるエネルギー生成能を増加させることで,姿勢制御戦略を変化させていたことが示唆された。このことから,定位された右示指位置の相違が起立動作における足関節筋群の活動に影響を及ぼし,動的な姿勢制御戦略を変化させることが示唆された。