[O-KS-01-3] 高齢者の片脚立位中の姿勢動揺および足関節周囲筋同時収縮にlight-touchが及ぼす影響
Keywords:light-touch, 同時収縮, 姿勢制御
【はじめに,目的】
固定点に指先で軽く触れる事(light touch;以下,LT)による姿勢動揺の減少が報告されており,力学的な支持によるものではなく,求心性の感覚情報入力によるものであることが知られている。本研究では,片脚立位中の高齢者におけるLTの効果を足圧中心(以下,COP)のみではなく,足関節周囲筋同時収縮の観点からも考察し,高齢者の姿勢制御にLTが及ぼす影響をより深く検討することを目的として行った。
【方法】
対象は健常高齢者10人(年齢74.6±3.2[歳],身長1.57±0.09[m],体重58.1±6.8[kg]),課題は15秒間の片脚立位保持とした。LTを行うLT条件,行わないNT条件それぞれ2試行ずつを計測した。利き脚を計測肢とし全例右側であった。LTは下肢挙上側上肢で行い,圧センサ(日本電気三栄社製)を使用して接触圧が1[N]未満になるように十分練習を行い,計測中も検者が確認した。
課題中の床反力データは床反力計(テック技販社製),筋電データは前脛骨筋(以下,TA),ヒラメ筋(以下,SOL)より表面筋電計(日本光電社製)によって取得し,Nexus 2.1.1(Vicon Motion Systems社製)を用いて同期させた。床反力データより,COP座標を算出し,総軌跡長,前後および左右方向標準偏差,矩形面積,集中面積,実行値を姿勢動揺の評価に用いた。TAとSOLの同時収縮の評価には同時収縮指数(CI)を用い,Falconerら(1985)の方法を参考に算出した。解析区間は動作終了6秒前より3秒間とした。
統計学的解析にはSPSS ver.22(日本アイ・ビー・エム社製)を用い,正規性の検定後,差の検定を行い,有意差を認めたLT条件のCOPパラメータとCIに関して相関分析を行った。
【結果】
COPパラメータに関して,NT条件と比較してLT条件で左右方向成分標準偏差および集中面積が低値を示した(p<0.05,p<0.01)。前後方向の標準偏差を含む,その他のCOPパラメータには条件間で有意差を認めなかった。CIはNT条件と比較して,LT条件において低値を示した(p<0.05)。CIとCOPパラメータ(左右方向成分標準偏差および集中面積)に対して相関分析を行い,有意な相関を認めなかった。
【結論】
総軌跡長には条件間で有意差を認めなかったが,左右方向標準偏差およびその影響を受けると考えられる集中面積がLT条件で減じ,高齢者の片脚立位時の姿勢動揺の減少はCOP左右方向におけるばらつきの減少により達成されることが示唆される。加えて,LT条件ではTAとSOLの同時収縮が減じた。これらは筋の走行から主に倒立振子モデルにおける矢状面の動揺に対して影響を及ぼすことが考えられるが,LTによる変化を認めたCOPパラメータは左右方向であり,LTによって同時収縮が減じたのではなく,LTにより姿勢動揺が減少した結果,同時収縮が減じた可能性が考えられる。加えてLTにより変化を認めたCOPパラメータとCIの間には有意な相関を認めず,LT条件でのCI減少に関しては,さらなる研究が必要である。
固定点に指先で軽く触れる事(light touch;以下,LT)による姿勢動揺の減少が報告されており,力学的な支持によるものではなく,求心性の感覚情報入力によるものであることが知られている。本研究では,片脚立位中の高齢者におけるLTの効果を足圧中心(以下,COP)のみではなく,足関節周囲筋同時収縮の観点からも考察し,高齢者の姿勢制御にLTが及ぼす影響をより深く検討することを目的として行った。
【方法】
対象は健常高齢者10人(年齢74.6±3.2[歳],身長1.57±0.09[m],体重58.1±6.8[kg]),課題は15秒間の片脚立位保持とした。LTを行うLT条件,行わないNT条件それぞれ2試行ずつを計測した。利き脚を計測肢とし全例右側であった。LTは下肢挙上側上肢で行い,圧センサ(日本電気三栄社製)を使用して接触圧が1[N]未満になるように十分練習を行い,計測中も検者が確認した。
課題中の床反力データは床反力計(テック技販社製),筋電データは前脛骨筋(以下,TA),ヒラメ筋(以下,SOL)より表面筋電計(日本光電社製)によって取得し,Nexus 2.1.1(Vicon Motion Systems社製)を用いて同期させた。床反力データより,COP座標を算出し,総軌跡長,前後および左右方向標準偏差,矩形面積,集中面積,実行値を姿勢動揺の評価に用いた。TAとSOLの同時収縮の評価には同時収縮指数(CI)を用い,Falconerら(1985)の方法を参考に算出した。解析区間は動作終了6秒前より3秒間とした。
統計学的解析にはSPSS ver.22(日本アイ・ビー・エム社製)を用い,正規性の検定後,差の検定を行い,有意差を認めたLT条件のCOPパラメータとCIに関して相関分析を行った。
【結果】
COPパラメータに関して,NT条件と比較してLT条件で左右方向成分標準偏差および集中面積が低値を示した(p<0.05,p<0.01)。前後方向の標準偏差を含む,その他のCOPパラメータには条件間で有意差を認めなかった。CIはNT条件と比較して,LT条件において低値を示した(p<0.05)。CIとCOPパラメータ(左右方向成分標準偏差および集中面積)に対して相関分析を行い,有意な相関を認めなかった。
【結論】
総軌跡長には条件間で有意差を認めなかったが,左右方向標準偏差およびその影響を受けると考えられる集中面積がLT条件で減じ,高齢者の片脚立位時の姿勢動揺の減少はCOP左右方向におけるばらつきの減少により達成されることが示唆される。加えて,LT条件ではTAとSOLの同時収縮が減じた。これらは筋の走行から主に倒立振子モデルにおける矢状面の動揺に対して影響を及ぼすことが考えられるが,LTによる変化を認めたCOPパラメータは左右方向であり,LTによって同時収縮が減じたのではなく,LTにより姿勢動揺が減少した結果,同時収縮が減じた可能性が考えられる。加えてLTにより変化を認めたCOPパラメータとCIの間には有意な相関を認めず,LT条件でのCI減少に関しては,さらなる研究が必要である。