[O-KS-01-4] ステップ動作の運動開始メカニズムに関する運動学的解析
Keywords:ステップ動作, 予測的姿勢制御, 筋活動
【目的】
日常生活における歩行や跨ぎ動作,障害物回避動作にはステップ動作を伴う。ステップ動作は認知過程→体重移動→一歩踏み出しと時系列に調整され,動作開始時の姿勢制御として予測的姿勢制御(anticipatory postural adjustments:以下APAs)が重要とされている。APAsとは意図的運動に先行する姿勢調整として定義されており,動作開始時に重要な役割を果たしている。ステップ動作に関する運動学的解析では動作開始時に両側の前脛骨筋の活動が前方への重心移動と関連するとするAPAsの視点から報告が散見される。しかしながら,先行研究は足部の筋のみの研究や,足圧中心(以下COP)のみを分析したものが多く,ステップ動作における足部・股関節を含む下肢全体の筋活動とCOP軌跡を検討した報告は検索の範囲では見当たらない。健常成人のステップ動作開始時のCOP軌跡と筋活動変化に焦点をあて,APAsの観点から動作開始メカニズムについて検証することとした。
【方法】
対象は健常成人男性5名(平均年齢27.4歳)とした。実験装置は重心動揺計(ユニメックス社製,UJK-200C),表面筋電図計(NORAXON,MYOMUSCLE),簡易光刺激装置(イリスコ社)を使用した。表面筋電図は左右ヒラメ筋,前脛骨筋,中殿筋の6筋を導出筋とした。健常成人のステップ動作開始時のCOP軌跡と筋活動を同期記録し,時系列および筋活動の活動と抑制の開始潜時を計測した。運動開始姿勢は簡易光刺激装置を正面に,重心動揺計上の立位とした。課題は,簡易光刺激装置の視覚合図に従いステップ動作を行う。ステップ脚の左右判断は予告無しの条件指示下でアットランダムに実施した。左右条件で5回ずつ合計10回の計測を行った。光刺激の合図開始で時間軸を正規化し各筋の筋活動の潜時を安静時±3SDにて計測した。COP軌跡により課題動作の開始と身体重心移動を確認した。統計処理は一元配置分散分析を用い有意水準5%未満とした。
【結果】
各筋の安静時筋活動量と比較し,両側前脛骨筋とステップ側中殿筋のステップ動作に先行する活動と両側ヒラメ筋・支持脚側中殿筋の筋活動の抑制をみとめた(P<0.01)。左右共にステップ側の前脛骨筋がCOP動き始めに約15msec先行した。健常成人のステップ開始に見られる筋の活動と抑制の順序はステップ側は前脛骨筋活動,中殿筋活動,ヒラメ筋抑制の順に,支持側はヒラメ筋抑制,前脛骨筋活動,中殿筋抑制の順であり,各筋潜時に有意な差を認めた(P<0.01)。
【結論】
健常成人のステップ動作開始時には,ステップ側の前脛骨筋活動,中殿筋活動,ヒラメ筋抑制の順に,支持側のヒラメ筋抑制,前脛骨筋活動,中殿筋抑制が早期に作用し,ステップ動作に先行する筋の活動と抑制がみられた。ステップ動作開始時における身体重心を移動させるための各筋の活動と抑制が拮抗して作用し,前後方向へは足部筋,左右方向へは中殿筋の活動と抑制がAPAsとして作用していることが明らかとなった。
日常生活における歩行や跨ぎ動作,障害物回避動作にはステップ動作を伴う。ステップ動作は認知過程→体重移動→一歩踏み出しと時系列に調整され,動作開始時の姿勢制御として予測的姿勢制御(anticipatory postural adjustments:以下APAs)が重要とされている。APAsとは意図的運動に先行する姿勢調整として定義されており,動作開始時に重要な役割を果たしている。ステップ動作に関する運動学的解析では動作開始時に両側の前脛骨筋の活動が前方への重心移動と関連するとするAPAsの視点から報告が散見される。しかしながら,先行研究は足部の筋のみの研究や,足圧中心(以下COP)のみを分析したものが多く,ステップ動作における足部・股関節を含む下肢全体の筋活動とCOP軌跡を検討した報告は検索の範囲では見当たらない。健常成人のステップ動作開始時のCOP軌跡と筋活動変化に焦点をあて,APAsの観点から動作開始メカニズムについて検証することとした。
【方法】
対象は健常成人男性5名(平均年齢27.4歳)とした。実験装置は重心動揺計(ユニメックス社製,UJK-200C),表面筋電図計(NORAXON,MYOMUSCLE),簡易光刺激装置(イリスコ社)を使用した。表面筋電図は左右ヒラメ筋,前脛骨筋,中殿筋の6筋を導出筋とした。健常成人のステップ動作開始時のCOP軌跡と筋活動を同期記録し,時系列および筋活動の活動と抑制の開始潜時を計測した。運動開始姿勢は簡易光刺激装置を正面に,重心動揺計上の立位とした。課題は,簡易光刺激装置の視覚合図に従いステップ動作を行う。ステップ脚の左右判断は予告無しの条件指示下でアットランダムに実施した。左右条件で5回ずつ合計10回の計測を行った。光刺激の合図開始で時間軸を正規化し各筋の筋活動の潜時を安静時±3SDにて計測した。COP軌跡により課題動作の開始と身体重心移動を確認した。統計処理は一元配置分散分析を用い有意水準5%未満とした。
【結果】
各筋の安静時筋活動量と比較し,両側前脛骨筋とステップ側中殿筋のステップ動作に先行する活動と両側ヒラメ筋・支持脚側中殿筋の筋活動の抑制をみとめた(P<0.01)。左右共にステップ側の前脛骨筋がCOP動き始めに約15msec先行した。健常成人のステップ開始に見られる筋の活動と抑制の順序はステップ側は前脛骨筋活動,中殿筋活動,ヒラメ筋抑制の順に,支持側はヒラメ筋抑制,前脛骨筋活動,中殿筋抑制の順であり,各筋潜時に有意な差を認めた(P<0.01)。
【結論】
健常成人のステップ動作開始時には,ステップ側の前脛骨筋活動,中殿筋活動,ヒラメ筋抑制の順に,支持側のヒラメ筋抑制,前脛骨筋活動,中殿筋抑制が早期に作用し,ステップ動作に先行する筋の活動と抑制がみられた。ステップ動作開始時における身体重心を移動させるための各筋の活動と抑制が拮抗して作用し,前後方向へは足部筋,左右方向へは中殿筋の活動と抑制がAPAsとして作用していることが明らかとなった。