[O-KS-01-5] 健常人における下肢の左右機能差がステップ動作時の予測的姿勢調整に及ぼす影響
Keywords:ステップ動作, 予測的姿勢調整, Limb dominance
【はじめに,目的】
歩行開始動作やステップ動作では踏み出す足により姿勢の非対称性を呈することが報告され,Yiou, E.らは利き足(運動脚)から踏み出す際には身体質量中心(Center of Mass:COM)が支持脚側に移動し相対的に姿勢が安定すると報告している。しかし,非対称性を説明するための根拠は十分でなく,転倒との関連も明らかではない。本研究では,動作開始時の予測的姿勢調整(Anticipatory Postural Adjustment:APA)に潜在的な姿勢調整エラー(APA error)が生じる選択的ステップ課題を用いて姿勢安定性に関わる左右対称性について検討した。
【方法】
対象は健常若年者20名(平均25.1±4.4歳)とし,課題は前方のモニターに表示される視覚刺激(矢印)の示す足をできるだけ早くかつ正確に踏み出す選択的ステップ課題を用いた。解析指標はステップ動作時間,及び前後・左右方向のCOM偏倚量とした。計測には3次元動作解析装置(VICON社製)と床反力計(AMTI社製)を使用し,データは5msの周期で抽出した。COMは両側の肩峰・股関節・膝関節・外果・第5中足骨頭に貼付した赤外線反射マーカより算出し,データはAPA,Foot-off,Foot-contactの時点で抽出した。この選択的ステップ課題は左右各16試行実施し,床反力垂直成分(%体重)からAPA errorの有無を検知した。なお,APA errorは開始時に通常とは反対側に体重が5%以上移動した場合と定義し,APA errorの発生率およびAPA error時の体重移動量(%体重)も分析した。そして,利き足は「ボールを蹴る足」と定義した。ステップ動作時間とCOM偏倚量は「遊脚側」と「APA errorの有無」の主効果および交互作用を二元配置分散分析で解析し,APA errorの発生率とAPA error時の体重移動量は対応のあるt検定により「遊脚側」の影響を比較した。
【結果】
非利き足(軸足)が遊脚側となる試行ではAPA errorの発生率が高く(利き足:19%,非利き足:37%,P<0.01),APA error時の体重移動量も増加した(利き足:8.9%,非利き足:12.6%,p<0.01)。ステップ動作時間には遊脚側の影響を示さなかった(p>0.05)。
非利き足(軸足)が遊脚側となる試行では,APA errorを伴うとAPAの時点でCOMが遊脚側に偏倚する相乗作用を認め(遊脚側:F1,74=6.03,p=0.01,APA error:F1,74=96.27,p<0.01,遊脚側*APA error:F1,74=5.52,p=0.02),Foot-contact時には支持脚側に偏倚していた(遊脚側:F1,74=7.17,p<0.01,APA error:F1,74=9.75,p<0.01,遊脚側*APA error:F1,74=0.02,p=0.86)。
【結論】
選択的ステップ動作では,利き足と非利き足でAPAに少なからず影響を及ぼすことが示された。非対称性は足関節底屈の筋活動の大きさ(利き足>非利き足)に関連するとの先行研究があり,APA相でAPA errorに伴う体重移動量および姿勢安定性に非対称性を呈したことは矛盾しない。選択的課題を用いることで,より鋭敏に非対称性を検知できる可能性が示唆された。
歩行開始動作やステップ動作では踏み出す足により姿勢の非対称性を呈することが報告され,Yiou, E.らは利き足(運動脚)から踏み出す際には身体質量中心(Center of Mass:COM)が支持脚側に移動し相対的に姿勢が安定すると報告している。しかし,非対称性を説明するための根拠は十分でなく,転倒との関連も明らかではない。本研究では,動作開始時の予測的姿勢調整(Anticipatory Postural Adjustment:APA)に潜在的な姿勢調整エラー(APA error)が生じる選択的ステップ課題を用いて姿勢安定性に関わる左右対称性について検討した。
【方法】
対象は健常若年者20名(平均25.1±4.4歳)とし,課題は前方のモニターに表示される視覚刺激(矢印)の示す足をできるだけ早くかつ正確に踏み出す選択的ステップ課題を用いた。解析指標はステップ動作時間,及び前後・左右方向のCOM偏倚量とした。計測には3次元動作解析装置(VICON社製)と床反力計(AMTI社製)を使用し,データは5msの周期で抽出した。COMは両側の肩峰・股関節・膝関節・外果・第5中足骨頭に貼付した赤外線反射マーカより算出し,データはAPA,Foot-off,Foot-contactの時点で抽出した。この選択的ステップ課題は左右各16試行実施し,床反力垂直成分(%体重)からAPA errorの有無を検知した。なお,APA errorは開始時に通常とは反対側に体重が5%以上移動した場合と定義し,APA errorの発生率およびAPA error時の体重移動量(%体重)も分析した。そして,利き足は「ボールを蹴る足」と定義した。ステップ動作時間とCOM偏倚量は「遊脚側」と「APA errorの有無」の主効果および交互作用を二元配置分散分析で解析し,APA errorの発生率とAPA error時の体重移動量は対応のあるt検定により「遊脚側」の影響を比較した。
【結果】
非利き足(軸足)が遊脚側となる試行ではAPA errorの発生率が高く(利き足:19%,非利き足:37%,P<0.01),APA error時の体重移動量も増加した(利き足:8.9%,非利き足:12.6%,p<0.01)。ステップ動作時間には遊脚側の影響を示さなかった(p>0.05)。
非利き足(軸足)が遊脚側となる試行では,APA errorを伴うとAPAの時点でCOMが遊脚側に偏倚する相乗作用を認め(遊脚側:F1,74=6.03,p=0.01,APA error:F1,74=96.27,p<0.01,遊脚側*APA error:F1,74=5.52,p=0.02),Foot-contact時には支持脚側に偏倚していた(遊脚側:F1,74=7.17,p<0.01,APA error:F1,74=9.75,p<0.01,遊脚側*APA error:F1,74=0.02,p=0.86)。
【結論】
選択的ステップ動作では,利き足と非利き足でAPAに少なからず影響を及ぼすことが示された。非対称性は足関節底屈の筋活動の大きさ(利き足>非利き足)に関連するとの先行研究があり,APA相でAPA errorに伴う体重移動量および姿勢安定性に非対称性を呈したことは矛盾しない。選択的課題を用いることで,より鋭敏に非対称性を検知できる可能性が示唆された。