The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » 口述発表

[O-KS-04] 口述演題(基礎)04

Fri. May 12, 2017 4:50 PM - 5:50 PM A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:中山 恭秀(東京慈恵会医科大学附属病院)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[O-KS-04-2] 漸増起立負荷による地域高齢女性の簡易的運動耐容能測定法の併存妥当性

中村 慶佑1,2, 長澤 祐哉1, 澤木 章二1, 横川 吉晴3, 大平 雅美3 (1.松本市立病院, 2.信州大学大学院医学系研究科保健学専攻博士後期課程, 3.信州大学医学部保健学科理学療法学専攻)

Keywords:高齢者, 最高酸素摂取量, 起立動作

【はじめに,目的】日常動作である起立動作は起立頻度を変えることで比較的簡単に運動負荷強度を調整できる。我々は,先行研究において起立頻度の増加に伴い酸素摂取量が直線的に増加することを確認し,漸増起立運動負荷試験(以下,ISTS)のプロトコールを作成した。さらに,ISTSは健康中高年者の運動耐容能測定に応用できる可能性が高いことを確認した。そこで本研究では,代謝疾患などの有疾病者への将来的な応用を視野に入れ,地域在住の健康高齢女性を対象に,ISTSの運動耐容能測定法としての併存妥当性を検証することを目的とした。

【方法】65歳以上の地域在住の健康高齢女性16名を対象とした(平均年齢70.1±3.2歳)。ISTSと自転車エルゴメーター(CE)の施行順は無作為化し,別日に実施した。反復起立運動は,座面を立位における床から腓骨頭上縁までの距離の1.2倍の高さとし,上肢でストックを使用しながら実施した。ISTSは,6回/分の起立頻度から始まり,45秒毎に2回/分ずつ漸増し,最大12分で終了するプロトコールとし,起立頻度はメトロノームの発信音で調整した。CEのプロトコールは10-15W/分のramp負荷を用いて最大12分で終了とした(最大負荷量は120-180W)。酸素摂取量(breath by breath法;ml/min/kg),心拍数,心電図は連続的に記録し,血圧,自覚的運動強度と下肢疲労感のボルグスケールは運動負荷直後に測定した。一般的な運動負荷試験の中止基準に該当した場合,90%予測最大心拍数に到達した場合,あるいは起立動作がメトロノームの発信音から3動作遅れた場合はその時点で運動負荷を終了し,そこまで要した時間をISTSの運動実施時間とした。最高酸素摂取量(以下,peak VO2)は運動負荷終了前30秒間の平均値とした。両方法のpeak VO2,運動実施時間の関係はPearson積率相関係数,平均値の差は対応のあるt検定を用いて確認した。

【結果】ISTSは1名が12分間完遂し,11名が途中で起立動作の発信音に追従できなくなり終了し,4名が90%予測最大心拍数に到達し終了した。ISTSとCEのpeak VO2(ml/min/kg),ISTSの運動実施時間(秒)の平均値±標準偏差は各々19.5±2.5,20.0±2.9,608.0±82.9であった。Peak VO2はISTSとCEで有意な差はみられなかった(p=0.20)。ISTSとCEのpeak VO2,ISTSの運動実施時間とpeak VO2の相関係数は各々r=0.80,0.73で有意な相関がみられた。また,ISTSの運動実施時間(x)とpeak VO2(Y)からY=0.02x+6.2という一次回帰直線式が求められた。

【結論】ISTSとCEのpeak VO2と強い相関が認められ,ISTSは健康高齢女性を対象としたpeak VO2測定の運動負荷方法として併存妥当性が高いと考えられる。また,健康高齢女性ではISTSの運動実施時間からpeak VO2を推定できる可能性が示唆された。今後,ISTSを用いた運動負荷方法の検討の対象を有疾病者へと広げ,今回と同様の結果が得られれば,より多くの人に対する運動耐容能評価に応用できるようになると考えられる。