[O-KS-04-4] 筋電図周波数パワースペクトル解析を用いた若年成人男性における内側広筋疲労評価法の検討
Keywords:内側広筋(vastus medialis), 表面筋電図(Electromyography), 筋疲労(muscle fatigue)
【はじめに,目的】
骨格筋の筋線維は持久力に優れたTypeI線維と瞬発力に優れたTypeII線維に大別される。筋線維組成の評価方法は,病理組織学的検査が一般的であり,この手法は侵襲を伴う。非侵襲的に筋線維組成を評価する方法として,脊柱起立筋疲労評価法であるTrunk holding testと筋電図周波数パワースペクトル解析を用いた方法がある。これらにより算出される中間周波数(MF)は疲労に伴い減衰し,その程度は筋疲労の指標となる。MFの減衰率であるMF slopeは,MFの初期値であるIMFと相関を示すことで筋線維組成と関連があると報告されている。一方で,内側広筋の疲労性と膝関節疾患の関連性が報告されているが,信頼性の高い内側広筋疲労評価法は確立されていない。本研究の目的は筋電図周波数パワースペクトル解析を用いた内側広筋疲労評価の方法と,その信頼性を検討することである。
【方法】
対象は若年健常男性13名とした。年齢25.7±2.7歳,身長174.7±5.7cm,体重68.7±7.2kg,BMI22.5±2.4であった(mean±SD)。除外基準は膝関節痛及び骨関節疾患のある者とした。Preliminary studyでは,被験者をレッグプレスに座らせ,右股関節屈曲90度,右膝関節屈曲90度,右足関節中間位の状態で保持する方法が有意な減衰率を示した。この方法で,4kgずつ負荷を上げ5秒間保持させた。保持が困難となった1段階の下の負荷量を等尺性最大随意収縮力(MVC)とした。次に,十分な安静後,被験者はMVC測定と同肢位で60%MVCの負荷量を可能な限り保持した。内側広筋斜走線維(VMO)と縦走線維(VML)の筋活動は表面筋電計を用いて計測し,高速フーリエ変換による周波数パワースペクトル解析を行い,MFを算出した。信頼性の検証は,初回測定の90分後に2回目の測定を行い,その1週間後に3回目の測定を行った。日内変化は初回と2回目,日間変化は初回と3回目で評価した。測定項目は持続時間,IMF,MF slopeとした。統計解析は,信頼性評価として級内相関係数を用いた。初回に測定した各筋におけるMF slopeとIMFの相関性は,正規性の有無によってPearsonの相関係数,Spearmanの順位相関係数を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
持続時間は日内,日間で高い信頼係数を示し,IMFは各筋ともに日内,日間で中等度から高い信頼係数を示した。MF slopeは各筋において日内,日間で高い信頼係数を示した。また,今回算出された各筋のMF slopeはIMFと有意な負の相関を認めた(VMO:r=-0.74,VML:r=-0.58)。
【結論】
筋電図周波数パワースペクトル解析を用いた方法は,信頼性の高いVMOとVMLの筋疲労評価法であった。MF slopeとIMFの相関が認められたことで,今回算出されたMF slopeは筋線維組成と関連している可能性がある。よって,本研究の測定方法は,非侵襲的に行う筋疲労評価として実用的に使用できる。
骨格筋の筋線維は持久力に優れたTypeI線維と瞬発力に優れたTypeII線維に大別される。筋線維組成の評価方法は,病理組織学的検査が一般的であり,この手法は侵襲を伴う。非侵襲的に筋線維組成を評価する方法として,脊柱起立筋疲労評価法であるTrunk holding testと筋電図周波数パワースペクトル解析を用いた方法がある。これらにより算出される中間周波数(MF)は疲労に伴い減衰し,その程度は筋疲労の指標となる。MFの減衰率であるMF slopeは,MFの初期値であるIMFと相関を示すことで筋線維組成と関連があると報告されている。一方で,内側広筋の疲労性と膝関節疾患の関連性が報告されているが,信頼性の高い内側広筋疲労評価法は確立されていない。本研究の目的は筋電図周波数パワースペクトル解析を用いた内側広筋疲労評価の方法と,その信頼性を検討することである。
【方法】
対象は若年健常男性13名とした。年齢25.7±2.7歳,身長174.7±5.7cm,体重68.7±7.2kg,BMI22.5±2.4であった(mean±SD)。除外基準は膝関節痛及び骨関節疾患のある者とした。Preliminary studyでは,被験者をレッグプレスに座らせ,右股関節屈曲90度,右膝関節屈曲90度,右足関節中間位の状態で保持する方法が有意な減衰率を示した。この方法で,4kgずつ負荷を上げ5秒間保持させた。保持が困難となった1段階の下の負荷量を等尺性最大随意収縮力(MVC)とした。次に,十分な安静後,被験者はMVC測定と同肢位で60%MVCの負荷量を可能な限り保持した。内側広筋斜走線維(VMO)と縦走線維(VML)の筋活動は表面筋電計を用いて計測し,高速フーリエ変換による周波数パワースペクトル解析を行い,MFを算出した。信頼性の検証は,初回測定の90分後に2回目の測定を行い,その1週間後に3回目の測定を行った。日内変化は初回と2回目,日間変化は初回と3回目で評価した。測定項目は持続時間,IMF,MF slopeとした。統計解析は,信頼性評価として級内相関係数を用いた。初回に測定した各筋におけるMF slopeとIMFの相関性は,正規性の有無によってPearsonの相関係数,Spearmanの順位相関係数を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
持続時間は日内,日間で高い信頼係数を示し,IMFは各筋ともに日内,日間で中等度から高い信頼係数を示した。MF slopeは各筋において日内,日間で高い信頼係数を示した。また,今回算出された各筋のMF slopeはIMFと有意な負の相関を認めた(VMO:r=-0.74,VML:r=-0.58)。
【結論】
筋電図周波数パワースペクトル解析を用いた方法は,信頼性の高いVMOとVMLの筋疲労評価法であった。MF slopeとIMFの相関が認められたことで,今回算出されたMF slopeは筋線維組成と関連している可能性がある。よって,本研究の測定方法は,非侵襲的に行う筋疲労評価として実用的に使用できる。