[O-KS-05-1] ティッシュー・エキスパンダーによる乳房一次二期再建術後の早期リハビリテーションに対する検討
Keywords:乳癌, ティッシュー・エキスパンダー, 早期リハビリテーション
【はじめに】乳癌で乳房切除術後の人工物再建が保険適用され,ティッシュー・エキスパンダー(以下TE)法を用いた乳房再建患者数は増加している。しかし,乳房再建術における患側上肢の術後安静期間の指示は,施設・術者により様々であり,術後リハビリテーション(以下リハ)は先行文献も少なくエビデンスも乏しい。当院では,2016年4月まで,TEを用いた乳房再建患者は従来の乳房切除術のリスクに加え,TEのずれや血腫予防を目的に術後より胸部と患側上肢の固定による安静が指示され,入院中のリハは実施していなかった。患者の中には過度な安静や,大胸筋の伸張痛などにより肩関節可動域(以下肩ROM)制限を来すこともあった。そこで,大胸筋の筋電図的検討を行い,TEを用いた乳房再建患者のリハプログラムを新たに作成し,同年5月より術前指導と術後1日目からROM運動を含むリハ介入を開始した。早期リハプログラムの有効性について検討した。
【方法】早期リハプログラムを介入前後で比較した。(a)2010年4月から2016年4月に当院で行われた乳房切除術と腋窩リンパ郭清術もしくはセンチネルリンパ節生検を施行後,TEによる一次再建患者95例を診療録にて後方視的に調査。(b)2016年5月から10月に(a)と同様の手術を施行した患者11例。リハ介入は術前日から退院まで,退院後は術後1ヶ月目まで外来リハを実施した。両群の年齢,術後在院日数,ドレナージ排液量(以下排液量)及びドレーン留置期間(以下留置期間)について比較検討した。肩ROM(屈曲/外転)は,(a)は退院後に外来リハを実施した患者の術後1ヶ月を調査した。統計解析はMann-Whitney U検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】各項目の中央値と四分位範囲は(a)年齢50.0(43.0-57.0)歳,術後在院日数8.0(7.0-9.0)日,排液量350.0(264.0-521.0)cc,留置期間7.0(6.0-8.0)日。(b)年齢51.0(42.5-52.5)歳,術後在院日数8.0(7.0-9.0)日,排液量275.0(226.0-427.5)cc,留置期間6.0(6.0-7.5)日。全項目において有意差はなかった。(a)退院後37/95例に外来リハを実施し,術後1ヶ月のROMは肩関節屈曲135.0(120.0-155.0)°/外転130.0(110.0-150.0)°であった。そのうち31例が1ヶ月後もリハを継続した。(b)術後1週のROMは肩関節屈曲140.0(132.5-150.0)°/外転120.0(110.0-145.0)°,術後1ヶ月は肩関節屈曲180.0(172.5-180.0)°/外転180(170.0-180.0)°であった。リハ介入日数は10.0(8.0-11.5)日で,術後1ヶ月を超えてリハ継続した患者は0例であった。
【結論】乳癌術後のリハは,術後数日の超急性期では出血等の合併症を予防するため見送られる傾向にある。特にTE法は大胸筋下に人工物であるTEを留置するため,より慎重にリハを進める必要がある。しかし,術後管理を十分に行い,術後日数に応じたリハプログラムを用いれば早期リハは有効で,合併症を起こさずに肩ROM制限を予防できる可能性がある。
【方法】早期リハプログラムを介入前後で比較した。(a)2010年4月から2016年4月に当院で行われた乳房切除術と腋窩リンパ郭清術もしくはセンチネルリンパ節生検を施行後,TEによる一次再建患者95例を診療録にて後方視的に調査。(b)2016年5月から10月に(a)と同様の手術を施行した患者11例。リハ介入は術前日から退院まで,退院後は術後1ヶ月目まで外来リハを実施した。両群の年齢,術後在院日数,ドレナージ排液量(以下排液量)及びドレーン留置期間(以下留置期間)について比較検討した。肩ROM(屈曲/外転)は,(a)は退院後に外来リハを実施した患者の術後1ヶ月を調査した。統計解析はMann-Whitney U検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】各項目の中央値と四分位範囲は(a)年齢50.0(43.0-57.0)歳,術後在院日数8.0(7.0-9.0)日,排液量350.0(264.0-521.0)cc,留置期間7.0(6.0-8.0)日。(b)年齢51.0(42.5-52.5)歳,術後在院日数8.0(7.0-9.0)日,排液量275.0(226.0-427.5)cc,留置期間6.0(6.0-7.5)日。全項目において有意差はなかった。(a)退院後37/95例に外来リハを実施し,術後1ヶ月のROMは肩関節屈曲135.0(120.0-155.0)°/外転130.0(110.0-150.0)°であった。そのうち31例が1ヶ月後もリハを継続した。(b)術後1週のROMは肩関節屈曲140.0(132.5-150.0)°/外転120.0(110.0-145.0)°,術後1ヶ月は肩関節屈曲180.0(172.5-180.0)°/外転180(170.0-180.0)°であった。リハ介入日数は10.0(8.0-11.5)日で,術後1ヶ月を超えてリハ継続した患者は0例であった。
【結論】乳癌術後のリハは,術後数日の超急性期では出血等の合併症を予防するため見送られる傾向にある。特にTE法は大胸筋下に人工物であるTEを留置するため,より慎重にリハを進める必要がある。しかし,術後管理を十分に行い,術後日数に応じたリハプログラムを用いれば早期リハは有効で,合併症を起こさずに肩ROM制限を予防できる可能性がある。