第52回日本理学療法学術大会

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » 口述発表

[O-KS-05] 口述演題(基礎)05

2017年5月12日(金) 16:50 〜 17:50 A5会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室302)

座長:武田 要(関西福祉科学大学保健医療学部リハビリテーション学科理学療法学専攻)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[O-KS-05-2] MRIを用いた上肢挙上における胸椎椎間関節の関節運動学的解析

須永 遼司1, 宇佐 英幸2, 竹井 仁2 (1.首都大学東京人間健康科学研究科理学療法科学域博士前期課程, 2.首都大学東京人間健康科学研究科理学療法科学域)

キーワード:MRI, 挙上動作, 胸椎

【はじめに,目的】

上肢挙上動作では,胸椎伸展が伴うと報告されている。しかし,それらは,スパイナルマウスやマーカーの軌跡による方法で実施されているため,胸椎全体あるいは胸椎を上下部に分けてしか計測が行われていない。

そこで本研究の目的は,MRI(Magnetic Resonance Imaging)を用いて,健常者における背臥位,両上肢挙上位での胸椎椎間関節の各分節における矢状面の可動域変化を明らかにすることとした。


【方法】

対象は,脊椎と上肢に既往のない健常成人男女9名(男性4名,女性5名)で,平均年齢26.8(22-32)歳,身長と体重の平均値(標準偏差)は166.0(8.4)cm,59.2(8.0)kgであった。また,先行研究より,背臥位における胸椎後弯角の平均値(標準偏差)は,19-24歳で21.4(5.1)°,26-38歳で26.4(5.8)°であるため,胸椎後弯角が19-24歳では11.2°以下あるいは31.6°以上,26-38歳では14.8°以下あるいは38.0°以上の者は除外した。測定条件は,背臥位での両側肩関節屈曲運動として,測定角度は,0°,60°,120°,150°,最大屈曲の5条件とした。各条件について,MR装置(PHILIPS社製Achieva3.0T)を用いて,矢状断像を撮像した。得られた画像から,第1-12胸椎椎間角度(上位椎体の上面と下位椎体の上面がなす角度)を画像解析ソフトOsiriX(ニュートングラフィックス社製)を用いて測定した。結果の分析は,肩関節屈曲角度と胸椎椎体番号を2要因とした反復測定の二元配置分散分析を行い,主効果が見られた場合にBonferroniの多重比較法を実施し,交互作用が見られた場合は単純主効果の検定を行った。有意水準は5%とした。


【結果】

胸椎椎体番号毎に各条件間で比較した結果,胸椎椎間角度[°]の平均値(標準偏差)は,Th4/5では肩関節屈曲角度0°:5.9(0.6)より60°:4.3(0.7),120°:3.7(0.6),150°:3.3(0.5),最大屈曲:3.3(0.5)が有意に小さかった。Th11/12では,0°:2.6(0.7),60°:2.1(0.6)より150°:0.6(0.6)が有意に小さく,0°,60°,120°:1.2(0.6),150°より最大屈曲:-0.6(0.5)が有意に小さかった。Th12/L1では,0°:2.7(0.9),60°:2.3(1.0)より150°:0.1(0.6)が有意に小さく,0°,60°,120°:0.8(0.5),150°より最大屈曲:-1.0(0.6)が有意に小さかった。その他の部位には有意差はなかった。


【結論】

上肢挙上に付随する胸椎伸展についての先行研究では,上肢挙上120°を超えると胸椎伸展運動が関与(甲斐ら2010)し,主に下位胸椎が貢献する(西村ら2007)と報告されている。本研究でも,下位胸椎に関しては,先行研究と同様に挙上120°を超えてから関与し始めて,中でもTh11/12,Th12/L1が伸展することがわかった。また,Th4/5でも有意差が認められたが,これはTh11/12,Th12/L1とは異なり,0°の条件とその他の条件の間にのみ有意差があるため,挙上角度に伴う角度変化ではなく,背臥位で挙上することで脊椎に上肢の重みがかかることにより生じた角度変化であると考えた。