[O-KS-05-3] 高齢者の最大呼気流速と腹部筋群の筋厚との関係
複数の筋厚を組み合わせての検討
Keywords:超音波, 呼気筋, 筋厚
【はじめに,目的】腹部筋群(腹直筋:RA,外腹斜筋:EO,内腹斜筋:IO,腹横筋:TrA)によって産出される速い呼気は痰の喀出などに必要である。Ishidaら(2016)は,呼気流速と各腹部筋群の筋厚との関係を検討し,高齢者ではIOが厚いほど速い呼気の産出が可能であったとしている。しかし,複数の筋厚を組み合わせて,呼気流速との関係を検討している研究は検索した範囲では認められない。そこで,本研究の目的は,複数の腹部筋群の筋厚を組み合わせて,最大呼気流速との関係を明らかにすることとした。
【方法】対象は某診療所の通所リハビリテーションを利用し,杖あるいは補助具なしで歩行が自立している女性31名(平均年齢81.7±5.8歳,身長149.5±6.4cm,体重50.5±7.5kg)とした。最大呼気流速はフィリップス・レスピロニクス社製のアセスピークフローメータで測定した。測定は端座位で,最大吸気位から最大限の力で急速に息を呼出させた。3回の計測を行って最大値を代表値とし(L/min),月岡ら(1996)の予測式から算出した値で正規化した(%)。腹部筋群の筋厚はメディケアー社製の白黒ロコモ計測・観察装置(JA6)の12MHzのリニア型プローブを使用し,Bモードで計測した。測定は背臥位で,RAは臍の右側4cm,側腹部(EO,IO,TrA)の筋厚は右肋骨弓下端と腸骨稜上端の中間で中腋窩線の2.5cm前方で画像化を行った。撮影は各2回行い,画像処理ソフトImageJ 1.45を用いて計測した各筋の筋厚(mm)の平均値を体重で除した値(mm/kg)を解析に用いた。統計にはIBM SPSS Statistics 23を使い,予測値で正規化した最大呼気流速と個別の筋厚及び複数の筋厚の組み合わせの相関をPearsonの相関係数で検討した(p<0.05)。
【結果】最大呼気流速と予測値で正規化した値はそれぞれ285.2±52.6L/minと99.1±23.0%であった。以下,正規化した最大呼気流速との関係を筋(相関係数,p値)で示す。個別の筋ではRA(r=0.364,p=0.044),EO(r=0.323,p=0.076),IO(r=0.513,p=0.003),TrA(r=0.108,p=0.563)であった。複数の筋厚で相関係数の高かった上位は,EO+IO(r=0.563,p=0.001),RA+EO+IO(r=0.555,p=0.001),RA+IO(r=0.550,p=0.001)などであった。
【結論】Ishidaら(2016)と同様に,個別の筋では,IOが厚いほど速い呼気の産出が可能であった。複数の筋厚では,特にRA,EO,IOを組み合わせることで,IOだけよりも高い相関係数となった。Otaら(2012)は,表層の腹部筋群(RA,EO,IO)は加齢による萎縮が生じやすく,深層のTrAでは少なかったとしている。本研究では,表層の腹部筋群の加齢変化が著しい高齢者ほど,速い呼気の産出能力が低下している可能性が示唆された。つまり,速い呼気の産出能力低下を予防するためには,IOだけではなく表層の腹部筋群の加齢変化が生じないような対策が有用と考えられる。
【方法】対象は某診療所の通所リハビリテーションを利用し,杖あるいは補助具なしで歩行が自立している女性31名(平均年齢81.7±5.8歳,身長149.5±6.4cm,体重50.5±7.5kg)とした。最大呼気流速はフィリップス・レスピロニクス社製のアセスピークフローメータで測定した。測定は端座位で,最大吸気位から最大限の力で急速に息を呼出させた。3回の計測を行って最大値を代表値とし(L/min),月岡ら(1996)の予測式から算出した値で正規化した(%)。腹部筋群の筋厚はメディケアー社製の白黒ロコモ計測・観察装置(JA6)の12MHzのリニア型プローブを使用し,Bモードで計測した。測定は背臥位で,RAは臍の右側4cm,側腹部(EO,IO,TrA)の筋厚は右肋骨弓下端と腸骨稜上端の中間で中腋窩線の2.5cm前方で画像化を行った。撮影は各2回行い,画像処理ソフトImageJ 1.45を用いて計測した各筋の筋厚(mm)の平均値を体重で除した値(mm/kg)を解析に用いた。統計にはIBM SPSS Statistics 23を使い,予測値で正規化した最大呼気流速と個別の筋厚及び複数の筋厚の組み合わせの相関をPearsonの相関係数で検討した(p<0.05)。
【結果】最大呼気流速と予測値で正規化した値はそれぞれ285.2±52.6L/minと99.1±23.0%であった。以下,正規化した最大呼気流速との関係を筋(相関係数,p値)で示す。個別の筋ではRA(r=0.364,p=0.044),EO(r=0.323,p=0.076),IO(r=0.513,p=0.003),TrA(r=0.108,p=0.563)であった。複数の筋厚で相関係数の高かった上位は,EO+IO(r=0.563,p=0.001),RA+EO+IO(r=0.555,p=0.001),RA+IO(r=0.550,p=0.001)などであった。
【結論】Ishidaら(2016)と同様に,個別の筋では,IOが厚いほど速い呼気の産出が可能であった。複数の筋厚では,特にRA,EO,IOを組み合わせることで,IOだけよりも高い相関係数となった。Otaら(2012)は,表層の腹部筋群(RA,EO,IO)は加齢による萎縮が生じやすく,深層のTrAでは少なかったとしている。本研究では,表層の腹部筋群の加齢変化が著しい高齢者ほど,速い呼気の産出能力が低下している可能性が示唆された。つまり,速い呼気の産出能力低下を予防するためには,IOだけではなく表層の腹部筋群の加齢変化が生じないような対策が有用と考えられる。