第52回日本理学療法学術大会

講演情報

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » 口述発表

[O-KS-05] 口述演題(基礎)05

2017年5月12日(金) 16:50 〜 17:50 A5会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室302)

座長:武田 要(関西福祉科学大学保健医療学部リハビリテーション学科理学療法学専攻)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[O-KS-05-6] インナーユニット機能を用いた尿失禁体操の効果

生方 瞳 (高崎健康福祉大学保健医療学部理学療法学科)

キーワード:腹圧性尿失禁, 女性, 超音波画像診断装置

【はじめに,目的】

腹圧性尿失禁に対しKegelによって提唱された腹圧性尿失禁体操は,副作用がなく,安全性が高いことからコクランレビューにおいても腹圧性尿失禁の第一選択肢として推奨されている。しかし,この体操はトレーニングを継続できないことが問題となっている。これは,骨盤底筋は体幹の深部筋であり関節運動を伴わないため筋収縮することが難しく,十分な筋収縮が得られないためと考えられる。著者らは,先行研究においてインナーユニットを構成する筋を単独で収縮させるより同時収縮させるもしくは抵抗運動をくわえ協調的に収縮させることでより強い筋収縮が得られることを報告している。本研究では,インナーユニット機能を用いた新たなトレーニングの介入効果について従来の尿失禁トレーニングと比較し,尿失禁に対する有効なトレーニング方法について検討することを目的とした。

【方法】

対象は,腹圧性尿失禁(SUI)を有する中高年女性92名とした。従来の尿失禁トレーニングを実施する群(PFM群)とインナーユニット機能を用いたトレーニングを実施する群(IU群)にランダムに振り分け,それぞれの運動を12週間実施した。アウトカムは,運動課題中の腹横筋厚,多裂筋横断面積,骨盤底挙上量および尿失禁回数,国際尿失禁会議質問票(ICIQ-SF)とした。統計解析は,群間の差の検討には対応のないt検定,属性の比較にはχ2検定を行った。トレーニング期間における群間および群内の比較には二元配置分散分析,被検者群と介入期間と運動課題を要因とした三元配置分散分析を行い,有意水準は5%とした。

【結果】

ICIQ-SFは,どちらの群も有意に低下し,群間を比較するとPFM群に比べIU群で有意に低下した。尿失禁回数は,両群共に介入前と比較すると4週目より有意な回数の減少がみられた。群間比較では,PFM群と比較してIU群は4週目と8週目で有意な減少がみられた。両群ともに介入前と比較し介入後で,腹横筋厚,多裂筋横断面積,骨盤底拳上量の有意な増加がみられた。

【結論】

骨盤底筋トレーニングをはじめて効果が出るまで3ヶ月は必要とされており,その治癒率は17%から69%と報告されている。本研究においては,両群共に4週目より尿失禁回数が減少し,12週経過後の治癒率はPFM群44.4%,IU群78.7%であり,先行研究と比較すると高い改善率が示され,両トレーニング共にSUIに対し有効であることが示唆された。PFM群とIU群を比較すると,尿失禁回数,ICIQ-SFの点数の改善および各筋の筋活動量の有意な増大がみられ,IU群の8週目の尿失禁治癒率は46.8%であり,PFM群の12週目の治癒率を上回る結果となった。これは,インナーユニットの協同運動により筋収縮を促通したためと考える。これらのことから,従来の骨盤底筋トレーニングより,インナーユニットを収縮させさらに抵抗を加えることで負荷量が増し骨盤底筋群の筋力がより効率よく強化できるのではないかと考える。