[O-KS-06-1] 筋力増強における筋力変化要因の組織硬度計を用いた分析
―筋力変化時の筋硬度変化および筋電図周波数と筋厚の変化―
キーワード:最大筋出力, 組織硬度計, 表面筋電図周波数解析
【目的】
筋力が増強されるメカニズムとして,運動単位の動員や発射頻度の変化による神経性要因と筋肥大性要因が考えられている。本報告では6週間の筋力増強運動の過程における筋硬度と,神経性要因である表面筋電図の瞬時周波数スペクトルの中央値と積分値,および筋肥大性要因である筋厚について,継時的変化と関連性を解析することにより,組織硬度計で測定した筋硬度から筋力変化要因を把握する方法について知見を得ることを目的とした。
【方法】
健常成人男子12名を対象とした。測定項目は右上腕二頭筋等尺性最大筋力(以後MVC BioDexで測定)とMVC筋出力時表面筋電図(電極はランドマークとの距離関係で決定),安静時筋厚(超音波画像診断装置MyLabFiveで測定),安静時筋硬度(組織硬度計OE-220で測定)とした。測定回数は,運動開始時から毎週月曜日と終了後の合計7回。筋力強化は週4日間実施した。毎週月曜日に測定したMVCの70%を筋力強化の負荷量とし,1セット10回,1日3セットを実施した。筋電図解析には離散ウェーブレット変換(Daubechies N=10のウェーブレット関数を使用)を用い,1ms毎の瞬時周波数スペクトルの中央値とそのスペクトルの積分値を算出し加算平均した。統計処理(SPSS for Windows)は,各指標の変化について有意水準5%未満で一元配置分散分析と多重比較(Tukey法)を行った。
【結果】
1.上腕二頭筋のMVCを多重比較した結果は,開始時に対して2週以後の全てにおいて有意(p<0.01)に増加した。
2.瞬時周波数スペクトルの中央値は2週目に周波数が低下,3-4週にかけて上昇,5-6週で安定した。多重比較の結果は,2週に対して4-6週で有意差(p<0.01)が認められた。
3.瞬時周波数スペクトルの積分値は2週目に増加し,3-4週にかけて低下,5-6週で安定した。多重比較の結果は,2週に対して4-6週で有意差(p<0.01)が認められた。
4.筋厚における多重比較の結果は,初回測定に対して5-6週において有意(p<0.05)に筋厚が増加した。
5.筋硬度を多重比較した結果は,初回測定に対して3週以後の全てにおいて有意(p<0.05)に増加した。
【結論】
1.瞬時周波数スペクトルの中央値は2週目に低下し,同じ時期に積分値は増加した。この時期の筋力増加は神経性要因が考えられる。周波数スペクトル中央値の低下は疲労の影響も否定できない。
2.上腕二頭筋硬度は2-3週に一度上昇した。これは,筋疲労による筋緊張上昇によるものと考えられる。5-6週ではさらに硬度が上昇した。これは筋肥大時の筋粘弾性上昇の結果と考えられる。
3.本研究の結果から,筋力増強時の筋硬度変化と神経性要因および筋肥大性要因との関連性が明らかになった。
4.組織硬度計を用いることによって,筋力増強における筋力変化要因を把握できる可能性が示唆された。
筋力が増強されるメカニズムとして,運動単位の動員や発射頻度の変化による神経性要因と筋肥大性要因が考えられている。本報告では6週間の筋力増強運動の過程における筋硬度と,神経性要因である表面筋電図の瞬時周波数スペクトルの中央値と積分値,および筋肥大性要因である筋厚について,継時的変化と関連性を解析することにより,組織硬度計で測定した筋硬度から筋力変化要因を把握する方法について知見を得ることを目的とした。
【方法】
健常成人男子12名を対象とした。測定項目は右上腕二頭筋等尺性最大筋力(以後MVC BioDexで測定)とMVC筋出力時表面筋電図(電極はランドマークとの距離関係で決定),安静時筋厚(超音波画像診断装置MyLabFiveで測定),安静時筋硬度(組織硬度計OE-220で測定)とした。測定回数は,運動開始時から毎週月曜日と終了後の合計7回。筋力強化は週4日間実施した。毎週月曜日に測定したMVCの70%を筋力強化の負荷量とし,1セット10回,1日3セットを実施した。筋電図解析には離散ウェーブレット変換(Daubechies N=10のウェーブレット関数を使用)を用い,1ms毎の瞬時周波数スペクトルの中央値とそのスペクトルの積分値を算出し加算平均した。統計処理(SPSS for Windows)は,各指標の変化について有意水準5%未満で一元配置分散分析と多重比較(Tukey法)を行った。
【結果】
1.上腕二頭筋のMVCを多重比較した結果は,開始時に対して2週以後の全てにおいて有意(p<0.01)に増加した。
2.瞬時周波数スペクトルの中央値は2週目に周波数が低下,3-4週にかけて上昇,5-6週で安定した。多重比較の結果は,2週に対して4-6週で有意差(p<0.01)が認められた。
3.瞬時周波数スペクトルの積分値は2週目に増加し,3-4週にかけて低下,5-6週で安定した。多重比較の結果は,2週に対して4-6週で有意差(p<0.01)が認められた。
4.筋厚における多重比較の結果は,初回測定に対して5-6週において有意(p<0.05)に筋厚が増加した。
5.筋硬度を多重比較した結果は,初回測定に対して3週以後の全てにおいて有意(p<0.05)に増加した。
【結論】
1.瞬時周波数スペクトルの中央値は2週目に低下し,同じ時期に積分値は増加した。この時期の筋力増加は神経性要因が考えられる。周波数スペクトル中央値の低下は疲労の影響も否定できない。
2.上腕二頭筋硬度は2-3週に一度上昇した。これは,筋疲労による筋緊張上昇によるものと考えられる。5-6週ではさらに硬度が上昇した。これは筋肥大時の筋粘弾性上昇の結果と考えられる。
3.本研究の結果から,筋力増強時の筋硬度変化と神経性要因および筋肥大性要因との関連性が明らかになった。
4.組織硬度計を用いることによって,筋力増強における筋力変化要因を把握できる可能性が示唆された。