[O-KS-06-2] 注意の方向性の違いが荷重動作に与える影響
Keywords:荷重動作, 内部焦点, 外部焦点
【はじめに,目的】
荷重練習は患者の動作拡大につながる理学療法プログラムである。患側下肢への荷重において,大腿骨近位部骨折術後患者の歩行能力に最も関連する要因は患側荷重率である,片麻痺者の立位バランスに麻痺側の体重負荷能力が重要であるとする報告がある。荷重練習時の口頭指示に関して,注意の方向性を2つに分けることができる。自分の身体運動そのものに注意を向ける「内部焦点(internal focus;IF)」と,道具や環境に注意を向ける「外部焦点(external focus;EF)」である。スポーツ種目の運動学習過程におけるIFとEFの教示効果を検討した先行研究では,EFの方がより学習効果が高く,理学療法プログラムの大腿四頭筋セッティングにおいてもEFの有効性が示されている。本研究では荷重練習時,IFとEFのどちらがより適切に荷重をかけられるのかを比較することを目的とした。
【方法】
対象者は健常男性20名(年齢25.6±3.2歳)。IFの荷重として,「脚にできるだけ体重をかけて下さい」と指示し,EFの荷重として,対象者の荷重側の側方に壁に模したものを立て,「身体を壁に近づけてください」と指示した。①IFで利き足へ荷重,②IFで非利き足へ荷重,③EFで利き足へ荷重,④EFで非利き足へ荷重の4条件の荷重課題を実施し,重心動揺計(アニマ,平衡機能計ツイングラビコーダG-6100)で荷重量(kg),荷重率(%),総軌跡長(cm),外周面積(cm2)を測定した。荷重課題中の4秒間のうち,中央3秒間の値を求め,10試行の平均値を測定値とした。また,ビデオカメラで記録した静止立位時と荷重課題中の静止画から,画像処理ソフト(Image J1.49,NIH)を使用して体幹側屈角度の変化量(°)を求めた。測定後,どちらが荷重を行いやすかったか,アンケート調査を行った。測定値のそれぞれについて,IFとEFを対応のあるt検定で比較した。検定は利き足,非利き足のそれぞれで行い,すべての検定の有意水準は5%とした。
【結果】
荷重率は,利き足IF88.1±5.3%,EF88.5±6.3%,非利き足IF89.3±4.4%,EF89.9±5.8%であり,利き足と非利き足どちらにおいてもIFとEFの間に有意差は認められなかった。外周面積は,利き足IF0.30±0.18cm2,EF0.38±0.19cm2,非利き足IF0.29±0.20cm2,EF0.46±0.39cm2であり,IFに比べEFが利き足,非利き足ともに有意に大きかった(p<0.05)。体幹側屈変化量は,利き足IF5.28±3.97°,EF6.29±4.23°,非利き足IF4.95±4.28°,EF7.01±3.38°であり,非利き足では,IFと比べEFは有意に体幹側屈が大きかった(p<0.05)。アンケート結果は,IFと答えた者9名,EFと答えた者11名,どちらでもないと答えた者0名であった。
【結論】
健常者の場合,IFとEFの荷重率に統計学的な違いはなかった。体幹側屈変化量および外周面積の結果からは,IFのほうがEFよりも体幹の不要な側屈を促すことなく,重心の安定した荷重ができる,より適切な荷重方法であった。
荷重練習は患者の動作拡大につながる理学療法プログラムである。患側下肢への荷重において,大腿骨近位部骨折術後患者の歩行能力に最も関連する要因は患側荷重率である,片麻痺者の立位バランスに麻痺側の体重負荷能力が重要であるとする報告がある。荷重練習時の口頭指示に関して,注意の方向性を2つに分けることができる。自分の身体運動そのものに注意を向ける「内部焦点(internal focus;IF)」と,道具や環境に注意を向ける「外部焦点(external focus;EF)」である。スポーツ種目の運動学習過程におけるIFとEFの教示効果を検討した先行研究では,EFの方がより学習効果が高く,理学療法プログラムの大腿四頭筋セッティングにおいてもEFの有効性が示されている。本研究では荷重練習時,IFとEFのどちらがより適切に荷重をかけられるのかを比較することを目的とした。
【方法】
対象者は健常男性20名(年齢25.6±3.2歳)。IFの荷重として,「脚にできるだけ体重をかけて下さい」と指示し,EFの荷重として,対象者の荷重側の側方に壁に模したものを立て,「身体を壁に近づけてください」と指示した。①IFで利き足へ荷重,②IFで非利き足へ荷重,③EFで利き足へ荷重,④EFで非利き足へ荷重の4条件の荷重課題を実施し,重心動揺計(アニマ,平衡機能計ツイングラビコーダG-6100)で荷重量(kg),荷重率(%),総軌跡長(cm),外周面積(cm2)を測定した。荷重課題中の4秒間のうち,中央3秒間の値を求め,10試行の平均値を測定値とした。また,ビデオカメラで記録した静止立位時と荷重課題中の静止画から,画像処理ソフト(Image J1.49,NIH)を使用して体幹側屈角度の変化量(°)を求めた。測定後,どちらが荷重を行いやすかったか,アンケート調査を行った。測定値のそれぞれについて,IFとEFを対応のあるt検定で比較した。検定は利き足,非利き足のそれぞれで行い,すべての検定の有意水準は5%とした。
【結果】
荷重率は,利き足IF88.1±5.3%,EF88.5±6.3%,非利き足IF89.3±4.4%,EF89.9±5.8%であり,利き足と非利き足どちらにおいてもIFとEFの間に有意差は認められなかった。外周面積は,利き足IF0.30±0.18cm2,EF0.38±0.19cm2,非利き足IF0.29±0.20cm2,EF0.46±0.39cm2であり,IFに比べEFが利き足,非利き足ともに有意に大きかった(p<0.05)。体幹側屈変化量は,利き足IF5.28±3.97°,EF6.29±4.23°,非利き足IF4.95±4.28°,EF7.01±3.38°であり,非利き足では,IFと比べEFは有意に体幹側屈が大きかった(p<0.05)。アンケート結果は,IFと答えた者9名,EFと答えた者11名,どちらでもないと答えた者0名であった。
【結論】
健常者の場合,IFとEFの荷重率に統計学的な違いはなかった。体幹側屈変化量および外周面積の結果からは,IFのほうがEFよりも体幹の不要な側屈を促すことなく,重心の安定した荷重ができる,より適切な荷重方法であった。