[O-KS-06-4] 片脚立位保持検査と実用歩行速度(最大歩行速度:1.0m/sec以上)との関連性について
~高齢入院患者における検討~
キーワード:片脚立位時間, 実用歩行, 最大歩行速度
【はじめに,目的】
片脚立位保持検査(One-leg standing test:以下,OLST)は簡便に実施可能なため,臨床で広く用いられている立位バランス評価法である。我々は過去に,OLSTが歩行自立度を良好に判別する指標であることを報告した(津田ら,2016)。しかし,OLSTが実用性のある歩行速度の可否を判別可能か否かについては明らかでなく,検討の余地がある。そこで本研究では,OLSTと実用歩行速度との関連性について検討した。
【方法】
対象は,高齢入院患者232名である。中枢神経疾患や疼痛を伴う荷重関節疾患,認知症を有する者は対象から除外した。OLSTは,開眼にて実施した。歩行速度は,10m最大歩行試験にて測定した。本研究において実用歩行速度は,日本の道路横断に必要な速度(最大歩行速度:1.0m/sec以上)とし,歩行速度が1.0m/sec以上の者をfast群,1.0m/sec未満の者をslow群に選別した。基本属性は,年齢,身長および体重を調査した。統計学的解析には,対応のないt検定,χ2検定を用いた。次に,logistic回帰分析を用いて,1.0m/sec以上の歩行の可否に影響を及ぼす因子を抽出した。その後,抽出された因子のROC曲線を用いて,実用歩行速度に必要なカットオフ値を決定した。また,OLSTの結果より対象者を2秒未満群,2~5秒未満群,5~10秒未満群,10~15秒未満群,15秒以上群の5群に区分し,各群のfast例の割合を算出した。いずれも危険率5%を有意水準とした。
【結果】
fast群は141例,slow群は91例であった。2群間で有意差を認めた項目のうち,logistic回帰分析によりOLSTのみが抽出された(p<0.01)。OLSTのカットオフ値,曲線下面積,感度および特異度は,それぞれ,3.1秒,0.88,81%,83%であった。次に,OLSTの区分別にみたfast例の割合は,2秒未満群,2~5秒未満群,5~10秒未満群,10~15秒未満群,15秒以上群の順に,21%,56%,63%,89%,95%であり,片脚立位時間の減少とともにfast例は有意に減少した(p<0.01)。また,fast例において片脚立位保持が不能であった者を7例認めた。
【結論】
OLSTは実用歩行速度の可否を判別可能であった。しかし,OLSTが困難であっても1.0m/sec以上の歩行速度を有する者を認めた。我々は過去に,OLSTが困難な者に独歩自立例を認めたことを報告した(津田ら,2016)。これらのことは,高齢入院患者の中には,歩行能力の評価にOLSTが適さない者がいることを示唆している。
以上のことより,OLSTは実用歩行速度の可否を判別する上で有用な指標となり得るものの,高齢入院患者の中には,歩行能力の低下に片脚立位保持能力が影響しない者がいることに注意する必要がある。
片脚立位保持検査(One-leg standing test:以下,OLST)は簡便に実施可能なため,臨床で広く用いられている立位バランス評価法である。我々は過去に,OLSTが歩行自立度を良好に判別する指標であることを報告した(津田ら,2016)。しかし,OLSTが実用性のある歩行速度の可否を判別可能か否かについては明らかでなく,検討の余地がある。そこで本研究では,OLSTと実用歩行速度との関連性について検討した。
【方法】
対象は,高齢入院患者232名である。中枢神経疾患や疼痛を伴う荷重関節疾患,認知症を有する者は対象から除外した。OLSTは,開眼にて実施した。歩行速度は,10m最大歩行試験にて測定した。本研究において実用歩行速度は,日本の道路横断に必要な速度(最大歩行速度:1.0m/sec以上)とし,歩行速度が1.0m/sec以上の者をfast群,1.0m/sec未満の者をslow群に選別した。基本属性は,年齢,身長および体重を調査した。統計学的解析には,対応のないt検定,χ2検定を用いた。次に,logistic回帰分析を用いて,1.0m/sec以上の歩行の可否に影響を及ぼす因子を抽出した。その後,抽出された因子のROC曲線を用いて,実用歩行速度に必要なカットオフ値を決定した。また,OLSTの結果より対象者を2秒未満群,2~5秒未満群,5~10秒未満群,10~15秒未満群,15秒以上群の5群に区分し,各群のfast例の割合を算出した。いずれも危険率5%を有意水準とした。
【結果】
fast群は141例,slow群は91例であった。2群間で有意差を認めた項目のうち,logistic回帰分析によりOLSTのみが抽出された(p<0.01)。OLSTのカットオフ値,曲線下面積,感度および特異度は,それぞれ,3.1秒,0.88,81%,83%であった。次に,OLSTの区分別にみたfast例の割合は,2秒未満群,2~5秒未満群,5~10秒未満群,10~15秒未満群,15秒以上群の順に,21%,56%,63%,89%,95%であり,片脚立位時間の減少とともにfast例は有意に減少した(p<0.01)。また,fast例において片脚立位保持が不能であった者を7例認めた。
【結論】
OLSTは実用歩行速度の可否を判別可能であった。しかし,OLSTが困難であっても1.0m/sec以上の歩行速度を有する者を認めた。我々は過去に,OLSTが困難な者に独歩自立例を認めたことを報告した(津田ら,2016)。これらのことは,高齢入院患者の中には,歩行能力の評価にOLSTが適さない者がいることを示唆している。
以上のことより,OLSTは実用歩行速度の可否を判別する上で有用な指標となり得るものの,高齢入院患者の中には,歩行能力の低下に片脚立位保持能力が影響しない者がいることに注意する必要がある。