The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » 口述発表

[O-KS-06] 口述演題(基礎)06

Fri. May 12, 2017 6:10 PM - 7:10 PM A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:福元 喜啓(神戸学院大学総合リハビリテーション学部)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[O-KS-06-5] 施設入所虚弱高齢者の歩行速度,5回椅子立ち上がりテストと下肢運動速度との関連について

山本 沙紀1, 坂本 郁子2, 古川 啓介1, 栗田 貴子3, 近藤 郁美4, 井上 純爾1, 佐野 佑樹5, 岩田 晃1 (1.大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科, 2.豊中市立介護老人保健施設かがやき, 3.大阪府済生会吹田病院, 4.医療法人マックシール巽病院, 5.大阪府立急性期・総合医療センター)

Keywords:下肢運動速度, 歩行速度, 5回椅子立ち上がりテスト

【はじめに,目的】

高齢者にとって,筋パワーは筋力以上に,歩行速度や5回椅子立ち上がりテストなどの動作と関連が強いことが報告されている。また,この筋パワーに関して,低負荷条件での筋パワー(40%1RM)と高負荷条件での筋パワー(70%1RM)を比較した場合,立ち上がりなど負荷量の大きい動作に対しては高負荷条件での筋パワーが,歩行などの負荷量の小さな動作では低負荷条件での筋パワーがより関連が強いことが明らかにされている。

また,近年,筋パワーの一要因である運動速度も着目されており,地域在住高齢者を対象とした先行研究で,下肢運動速度は膝伸展筋力以上に歩行速度にとって重要な要因であることが示されている。運動速度の測定は無負荷条件で出来るだけ速い動きを行っているため,運動速度においても,負荷量の大きい立ち上がりと比較し,負荷量の小さい歩行との関連が強い可能性がある。本研究は,その仮説を検証することを目的とした。

【方法】

介護老人保健施設に入所しており,8m以上の歩行が可能である高齢男女36名(年齢85.3±7.0歳)を対象とした。測定項目は,最速歩行速度,5回椅子立ち上がりテスト,下肢運動速度,膝伸展筋力とした。最速歩行速度は,8m歩行路の中央5mに要した時間を測定し,速度を算出した。5回椅子立ち上がりテストは,腕を胸の前で組んだ状態で出来るだけ速く5回立ち座りを繰り返し,それに要した時間を測定した。下肢運動速度は,先行研究に従い,ジャイロセンサーを用いて出来るだけ速く膝伸展を行い,その時の角速度を測定した。膝伸展筋力は90°屈曲位で,等尺性筋力を測定した。統計は,最速歩行速度,5回椅子立ち上がりテストと下肢運動速度,膝伸展筋力との関連を,ピアソンの相関係数を用いて解析した。有意水準はすべて5%未満とした。

【結果】

各項目の平均は,最速歩行速度0.79±0.29m/sec,5回椅子立ち上がり17.6±7.3秒,下肢運動速度272.4±79.1deg/sec,膝伸展筋力10.7±4.0kgであった。最速歩行速度は,下肢運動速度(r=0.41)と有意な相関が認められ,筋力とは認められなかった。一方,5回椅子立ち上がりテストは,膝伸展筋力(r=0.62)と有意な相関が認められ,下肢運動速度とは認められなかった。

【結論】

施設に入所している虚弱高齢者であっても,下肢運動速度と歩行速度との関連性が認められ,また,負荷量の大きい椅子立ち上がりテストと運動速度との間に有意な相関は認められなかった。本研究の結果,動作の負荷量によって,求められる能力が異なることが明らかとなった。このことから,立ち上がりなどの負荷量の大きい動作に対しては,高負荷条件での筋パワートレーニング,歩行などの負荷量の小さい動作には,無負荷での運動速度トレーニングが有効となる可能性がある。