第52回日本理学療法学術大会

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » 口述発表

[O-KS-06] 口述演題(基礎)06

2017年5月12日(金) 18:10 〜 19:10 A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:福元 喜啓(神戸学院大学総合リハビリテーション学部)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[O-KS-06-6] Functional reach test with eyes closed(EC-FRT)による転倒の判別
―要介護高齢者を対象とした1年間の追跡調査―

大田尾 浩1, 八谷 瑞紀1, 井原 雄彦2, 陣内 健太2, 溝田 勝彦1 (1.西九州大学, 2.ひらまつ病院)

キーワード:転倒, 要介護高齢者, EC-FRT

【はじめに,目的】閉眼で実施するFRT(Functional reach test with eyes closed:EC-FRT)は,従来のFRTよりもバランス能力をより反映することが知られている(大田尾,2013)。EC-FRTは,その信頼性と妥当性が確認されており,下肢筋力やバランス能力を反映する指標であることが報告されている(大田尾2014a,井原2016)。また,地域在住高齢者を対象にEC-FRTの有用性を検証した結果,EC-FRTが25.5cm以下であると転倒リスクが高いことが報告された(大田尾,2014b)。しかし,これは横断研究であった。そこで本研究は,EC-FRTの臨床応用の可能性を検討するために,要介護高齢者を1年間追跡し,EC-FRTによる転倒の判別能力を検証した。【方法】対象は,通所リハビリテーションを利用する要介護高齢者33名(平均年齢80±8歳,男性10名,女性23名)とした。ベースライン評価でEC-FRTを測定し,その後1年間の追跡調査を実施した。転倒の有無別に転倒あり群と転倒なし群に分類し,群別にEC-FRTをt検定により比較した。また,転倒の有無を状態変数としたEC-FRTのROC曲線を描出し,Youden indexによりカットオフ値を算出した。統計解析にはSPSS23(IBM)を用いた。【結果】調査期間に転倒した者は12名(平均年齢82±4歳,女性11名),転倒しなかった者は21名(平均年齢79±9歳,女性13名)であった。1年間の転倒発生率は36.4%であり,転倒により骨折した者はいなかった。転倒の有無別にEC-FRTを比較した結果,転倒なし群(26.8±6.4cm)よりも転倒あり群(18.5±9.9cm)の方が有意に低値であった。ROC曲線から,AUC=0.728(95%CI:0.545~0.911)と有意であり,カットオフ値はEC-FRT:20.5cm(感度85.7%,特異度41.7%)であった。なお,EC-FRTが15.0cm以下の者すべてが転倒し,EC-FRTが32.5cm以上の者すべてが転倒しなかった。【結論】要介護高齢者を1年間追跡し,EC-FRTによる転倒の判別能を検証した。その結果,EC-FRTが20.5cm以下の者は,その後1年間の転倒リスクが高いことが明らかとなった。一方,EC-FRTが32.5cm以上の者のすべてが,その後1年間転倒しなかった。以上の結果から,まずEC-FRT20.5cm以上の獲得を目標に,次に32.5cm以上の獲得を目標に立位バランスをトレーニングすることで,転倒リスクを軽減できる可能性がある。これらより,EC-FRTは要介護高齢者の転倒を判別できるという新しい臨床応用の可能性が示された。