The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » 口述発表

[O-KS-07] 口述演題(基礎)07

Fri. May 12, 2017 6:10 PM - 7:10 PM A5会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室302)

座長:上西 啓裕(和歌山県立医科大学附属病院リハビリテーション部)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[O-KS-07-3] 虚血性心疾患発症に伴う循環器の機能低下は心拍-運動リズム間における同調現象の発生を強める

竹内 真太, 西田 裕介 (国際医療福祉大学成田保健医療学部理学療法学科)

Keywords:虚血性心疾患, 心拍数, 歩行率

【はじめに,目的】

歩行や走行などの周期的な運動中に観測される心拍-運動リズム間における同調現象(Cardiolocomotor coupling:以下CLC)は,運動中の末梢循環を最適化するための生体の戦略的反応として捉えられている。これまで我々はCLCの発生に関連する対象者の生理学的特性の解明に取り組んできた。その結果,若年健常者においては,運動耐容能および運動時心臓ポンプ機能が低い者ほどCLCが発生しやすいことが明らかとなった。このことからCLCは運動中の末梢循環を維持するための生体の代償反応であると考えられ,循環器の機能が低下した対象者が日常生活へ適応していく過程を評価する方法として理学療法分野に応用できると考えられた。本研究では,これまで若年健常者を対象として実施してきた研究を発展させ,実際に循環器の機能低下が起こっている虚血性心疾患患者のCLCの発生特性を調査し,CLCが疾病を契機とした循環器の機能低下に対しても反映する現象であるかを検証した。

【方法】

対象は虚血性心疾患の既往をもった男性患者9名(心疾患群)と年齢・性別をマッチングさせた健常男性8名(健常群)とした。CLCの発生度合いの解析は先行研究の方法に準じ,速度が通常歩行速度まで漸増するトレッドミル歩行時の心拍リズムと歩行リズムの関連性(R2)から算出した。R2は0から1の範囲で示され値が大きいほどCLCの発生度合いが高いことを示している。また,エルゴメータを用いた心肺運動負荷試験を行い,対象者の運動耐容能と運動時心臓ポンプ機能の指標として最高酸素摂取量と最高酸素脈をそれぞれ算出した。群間の比較には対応のないt検定を用いた。

【結果】

群間の基本属性を比較した結果,年齢,身長,体重には有意差を認めなかった。最高酸素摂取量と最高酸素脈は,健常群で有意に高い値を示した(最高酸素摂取量:21.9±3.95 vs 16.7±2.33 ml/kg/min,p<0.05,最高酸素脈:11.0±2.16 vs 8.76±2.17 ml/beats,p<0.05,健常群vs心疾患群)。R2の値は心疾患群で有意に高い値を示した(0.33±0.26 vs 0.62±0.21,健常群vs心疾患群)。

【結論】

虚血性心疾患により循環器の機能が低下し,運動耐容能や運動時心臓ポンプ機能が低下している患者では,同年代の健常者と比較して,CLCが発生しやすいことが示された。このことから,CLCは正常から逸脱した疾病に伴う循環器の機能低下も反映する現象であることが示唆された。今後は,同一対象者における縦断研究を計画し,疾病の罹患に適応していく過程とそれに伴うCLCの発生の変化を確認し,評価指標としての妥当性を検証していく。