[O-KS-08-6] 走行運動による中枢神経活性化因子の発現動態
Keywords:走行運動, 脊髄, 中枢神経活性化因子
【はじめに,目的】
加齢に伴い,神経機能の低下を引き起こす。走行運動における神経栄養因子に着目した先行研究では,脊髄内において神経栄養因子の活性化が報告されているが,対象が成体ラットであり,週齢の違いによる運動の影響は明らかではない。本研究では,神経生存や維持に関わる神経栄養因子と神経可塑性に関する他の因子との関連性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
Wistar系雄性ラット10週齢(走行群5匹,非走行群3匹),6ヶ月週齢(走行群5匹,非走行群3匹),1年齢(走行群5匹,非走行群3匹),2年齢(走行群5匹,非走行群3匹)を対象とした。走行群は,小動物用トレッドミルにて,走行速度5.8m/min,走行時間1時間の条件で運動を課した。走行群,非走行群とランダムに分けた。実験終了後,脊髄(L3-5)を摘出し,total RNAを抽出した。逆転写反応により作成したcDNAを鋳型とし,神経栄養因子発現と他の神経形成関連因子,神経ペプチド,アポトーシス関連因子,神経突起伸長関連分子発現動態について,PCR array法(84遺伝子)により検出した。各週齢の非走行運動に対する走行群において2倍以上の発現を認めた遺伝子を抽出した。
【結果】
非走行群に対して2倍以上の遺伝子発現が検出された項目について結果は,10週齢では,高発現遺伝子は,検出されなかったが,低発現遺伝子は,3遺伝子(細胞分化関連遺伝子)であった。6ヶ月齢では,高発現遺伝子は,検出されなかったが低発現遺伝子は,23遺伝子(神経栄養因子一受容体,神経新生,成長因子,アポトーシス関連因子)であった。1年齢では,高発現遺伝子は6遺伝子(神経栄養因子一受容体,神経ペプチド),低発現遺伝子は,1遺伝子(アポトーシス)であった。2年齢は,高発現遺伝子は26遺伝子(神経栄養因子一受容体,神経ペプチド,神経新生),低発現遺伝子は,1遺伝子(アポトーシス)であった。
【結論】
長期の運動を行うことにより,神経栄養因子,神経形成成長因子等が選択的に増加し,アポトーシス因子が低発現となった。神経栄養因子が運動によって脊髄神経自体での発現が増加したことや,末梢器官で発現したその因子が脊髄内の血管や神経の逆行性輸送によって脊髄へ到達し,脊髄内のmRNA発現量が上昇し,脊髄神経が活性化されている事が示唆された。運動による機能改善は,神経単独ではなく,神経活動を活性化させる関連因子について多面的な機能連関での分析が必要となる。また週齢による遺伝子発現活性化の違いも明らかとなった。神経生存に作用する因子の影響を多面的に解析する事により,神経可塑性に対する運動の効果を明らかにできる可能性がある。
加齢に伴い,神経機能の低下を引き起こす。走行運動における神経栄養因子に着目した先行研究では,脊髄内において神経栄養因子の活性化が報告されているが,対象が成体ラットであり,週齢の違いによる運動の影響は明らかではない。本研究では,神経生存や維持に関わる神経栄養因子と神経可塑性に関する他の因子との関連性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
Wistar系雄性ラット10週齢(走行群5匹,非走行群3匹),6ヶ月週齢(走行群5匹,非走行群3匹),1年齢(走行群5匹,非走行群3匹),2年齢(走行群5匹,非走行群3匹)を対象とした。走行群は,小動物用トレッドミルにて,走行速度5.8m/min,走行時間1時間の条件で運動を課した。走行群,非走行群とランダムに分けた。実験終了後,脊髄(L3-5)を摘出し,total RNAを抽出した。逆転写反応により作成したcDNAを鋳型とし,神経栄養因子発現と他の神経形成関連因子,神経ペプチド,アポトーシス関連因子,神経突起伸長関連分子発現動態について,PCR array法(84遺伝子)により検出した。各週齢の非走行運動に対する走行群において2倍以上の発現を認めた遺伝子を抽出した。
【結果】
非走行群に対して2倍以上の遺伝子発現が検出された項目について結果は,10週齢では,高発現遺伝子は,検出されなかったが,低発現遺伝子は,3遺伝子(細胞分化関連遺伝子)であった。6ヶ月齢では,高発現遺伝子は,検出されなかったが低発現遺伝子は,23遺伝子(神経栄養因子一受容体,神経新生,成長因子,アポトーシス関連因子)であった。1年齢では,高発現遺伝子は6遺伝子(神経栄養因子一受容体,神経ペプチド),低発現遺伝子は,1遺伝子(アポトーシス)であった。2年齢は,高発現遺伝子は26遺伝子(神経栄養因子一受容体,神経ペプチド,神経新生),低発現遺伝子は,1遺伝子(アポトーシス)であった。
【結論】
長期の運動を行うことにより,神経栄養因子,神経形成成長因子等が選択的に増加し,アポトーシス因子が低発現となった。神経栄養因子が運動によって脊髄神経自体での発現が増加したことや,末梢器官で発現したその因子が脊髄内の血管や神経の逆行性輸送によって脊髄へ到達し,脊髄内のmRNA発現量が上昇し,脊髄神経が活性化されている事が示唆された。運動による機能改善は,神経単独ではなく,神経活動を活性化させる関連因子について多面的な機能連関での分析が必要となる。また週齢による遺伝子発現活性化の違いも明らかとなった。神経生存に作用する因子の影響を多面的に解析する事により,神経可塑性に対する運動の効果を明らかにできる可能性がある。