[O-KS-10-2] 安静時および膝関節伸展運動時の大腿四頭筋厚および筋輝度変化と膝伸展筋力との関連性
Keywords:膝関節伸展運動, 大腿四頭筋厚, 筋輝度
【はじめに,目的】
超音波画像診断装置(Ultrasonography:以下US)を用いた筋骨格系組織の評価は,理学療法士が行える筋量評価の一つであり,先行研究においても膝伸展筋力増強は,大腿直筋筋厚増加や筋質を示す筋輝度低下と相関を認めると報告されている。USはリアルタイムに評価できる利点があるが,運動時の収縮動態と筋力を比較したものはなく,また大腿四頭筋全てを検討した研究はない。そこで本研究の目的は,若年健常者を対象に大腿四頭筋の筋収縮時の超音波画像を測定し,運動前後での筋厚,筋輝度の変化を検討する事,また膝伸展筋力との関連性を検討する事とした。
【方法】
対象は右膝の手術歴がなく,測定時点で右膝に疼痛がない61名(男性36名,女性25名,年齢21.0±1.9歳)とした。超音波画像診断装置(ACUSON X300)を使用し,大腿の3箇所の測定点でマーカーを貼付し,長軸方向にリニアプローブを当てた。測定課題は右膝90°屈曲位での大腿四頭筋の求心性収縮課題とした。課題は各測定点で2回ずつ行い,USを用いた動画撮影は30fpsにて4秒間の動画を保存した。後に安静時,膝完全伸展時の画像を抽出し,ImageJを用いて測定点における大腿直筋,中間広筋,外側広筋,内側広筋の4筋の筋厚,8 bit gray scaleによる筋輝度を解析し,2回の平均を算出した。膝伸展筋力としてHand Held Dynamometer(IsoforceGT310)を用い,最大努力下の等尺性収縮を3回行い,3回分の平均値と測定点までの距離を乗じた値を用いた。統計解析はR2.8.1を用いて有意水準5%とし,運動前後の検討として正規性の検定の後に2群間の比較を,膝伸展筋力との関連性の検討として,変数増減法によるステップワイズ法重回帰分析を用いて,従属変数として膝伸展筋力を,独立変数として各筋の解析した筋厚,筋輝度を選択し検討を行った。
【結果】
筋厚について,安静時に比べて膝完全伸展時は大腿直筋のみ有意な増加を,他の3筋は有意な減少を認めた(p<0.05)。筋輝度について,安静時に比べ,膝完全伸展時は全ての筋で有意な減少を認めた(p<0.05)。重回帰分析の結果,安静時の内側広筋筋厚,膝完全伸展時の外側広筋筋輝度,安静時の中間広筋筋輝度が選択された(p<0.001,R=0.54)。
【結論】
結果より求心性収縮課題においては筋の短縮によって筋の形状が変化し,筋厚や筋輝度が有意に変化したが,紡錘筋や羽状筋といった筋形態の違いが筋厚変化の違いに影響したと考える。膝伸展筋力と相関を認めたのは大腿広筋群の3筋であり,大腿直筋と比べると形態的に生理的横断面積が大きくなることに加えて,筋質の点でも筋力に影響しやすい特性がある可能性が示唆された。本研究では運動時の超音波動態も筋力に影響することが示唆され,測定課題としてもリスクが少ないことから,今後は高齢者を対象とした研究や,運動器疾患における手術前後を対象とした超音波動態を検討していきたいと考える。
超音波画像診断装置(Ultrasonography:以下US)を用いた筋骨格系組織の評価は,理学療法士が行える筋量評価の一つであり,先行研究においても膝伸展筋力増強は,大腿直筋筋厚増加や筋質を示す筋輝度低下と相関を認めると報告されている。USはリアルタイムに評価できる利点があるが,運動時の収縮動態と筋力を比較したものはなく,また大腿四頭筋全てを検討した研究はない。そこで本研究の目的は,若年健常者を対象に大腿四頭筋の筋収縮時の超音波画像を測定し,運動前後での筋厚,筋輝度の変化を検討する事,また膝伸展筋力との関連性を検討する事とした。
【方法】
対象は右膝の手術歴がなく,測定時点で右膝に疼痛がない61名(男性36名,女性25名,年齢21.0±1.9歳)とした。超音波画像診断装置(ACUSON X300)を使用し,大腿の3箇所の測定点でマーカーを貼付し,長軸方向にリニアプローブを当てた。測定課題は右膝90°屈曲位での大腿四頭筋の求心性収縮課題とした。課題は各測定点で2回ずつ行い,USを用いた動画撮影は30fpsにて4秒間の動画を保存した。後に安静時,膝完全伸展時の画像を抽出し,ImageJを用いて測定点における大腿直筋,中間広筋,外側広筋,内側広筋の4筋の筋厚,8 bit gray scaleによる筋輝度を解析し,2回の平均を算出した。膝伸展筋力としてHand Held Dynamometer(IsoforceGT310)を用い,最大努力下の等尺性収縮を3回行い,3回分の平均値と測定点までの距離を乗じた値を用いた。統計解析はR2.8.1を用いて有意水準5%とし,運動前後の検討として正規性の検定の後に2群間の比較を,膝伸展筋力との関連性の検討として,変数増減法によるステップワイズ法重回帰分析を用いて,従属変数として膝伸展筋力を,独立変数として各筋の解析した筋厚,筋輝度を選択し検討を行った。
【結果】
筋厚について,安静時に比べて膝完全伸展時は大腿直筋のみ有意な増加を,他の3筋は有意な減少を認めた(p<0.05)。筋輝度について,安静時に比べ,膝完全伸展時は全ての筋で有意な減少を認めた(p<0.05)。重回帰分析の結果,安静時の内側広筋筋厚,膝完全伸展時の外側広筋筋輝度,安静時の中間広筋筋輝度が選択された(p<0.001,R=0.54)。
【結論】
結果より求心性収縮課題においては筋の短縮によって筋の形状が変化し,筋厚や筋輝度が有意に変化したが,紡錘筋や羽状筋といった筋形態の違いが筋厚変化の違いに影響したと考える。膝伸展筋力と相関を認めたのは大腿広筋群の3筋であり,大腿直筋と比べると形態的に生理的横断面積が大きくなることに加えて,筋質の点でも筋力に影響しやすい特性がある可能性が示唆された。本研究では運動時の超音波動態も筋力に影響することが示唆され,測定課題としてもリスクが少ないことから,今後は高齢者を対象とした研究や,運動器疾患における手術前後を対象とした超音波動態を検討していきたいと考える。