[O-KS-12-6] 経皮的筋膜吸引により筋膜の滑走が生じ筋膜リリースと同等な効果が得られる
Keywords:筋膜リリース, 超音波画像診断装置, 吸引療法
【はじめに,目的】近年,筋膜リリースと呼ばれる徒手療法が再び注目されているが,これは筋膜を伸張したり捻じれを解きほぐしたりすることで筋と筋の間や他の組織との可動性や伸展性を改善することを目的に行われる手技であり,軟部組織に起因する多くの関節可動域制限に適応する治療手技と考えられている。しかしながら筋膜リリースを行っている時の筋膜・その他の構造物がどのような変化をしているかを直接示した先行研究はみられない。我々は経皮的な吸引により関節運動や筋収縮の無い状態でも筋群や深筋膜の滑走が起こることを利用し,徒手の筋膜リリースと同様に筋と筋の間や他の組織との可動性や伸展性を改善できることを経験している。この吸引を利用した治療アプローチ(吸引療法)による関節可動域の改善等については既に症例報告等をしている(Tsujita J, et al., 2015他)が,治療中に筋膜・その他の構造物がどのような変化をしているかを直接示したものはなく,また治療前後の深筋膜の滑走性や筋硬度の変化を評価したものはない。本研究の目的は,①大腿外側部の経皮的吸引(吸引療法)により皮下の外側広筋・筋膜の滑走が生じるかを示し,②吸引療法により外側広筋・筋膜の滑走が改善するかどうかを超音波画像を用いて検討することである。【方法】大腿四頭筋の疾患を患ったことのない健常成人7名(31±15.4歳)の両脚を対象とし,先行研究に準じて膝関節0度(伸展)から45度(屈曲)に他動的に関節運動を行った時の大腿外側面超音波画像を1分間の吸引療法前後で観察記録し比較した。吸引療法は,大腿外側部遠位2分の1を特殊なノズルを用いて吸引しながら,そのノズルを長軸方向に沿って約1Hzのリズムで往復させて行った。また7名の内4名(左右8脚)においては吸引療法中も大腿外側面超音波画像を記録した。超音波画像はImageJソフトウエアーを用いて外側広筋の外側部の筋膜および外側広筋と中間広筋との共同中間腱の移動距離を計測した。吸引療法中の筋膜の移動の有無を示すとともに前後の膝関節45度屈曲における移動距離を分散分析を用いて比較し,また先行研究における移動距離とも比較・検討した。【結果】膝関節屈曲45度における中間腱の移動距離(mm)は吸引療法前が吸引中の移動距離(mm)は26.8±7.57,吸引療法後32.2±7.39であり,吸引療法により有意に改善され先行研究の筋膜リリースと同等な効果が確認できた。また吸引療法中,筋膜で5.4±2.56,中間腱で6.0±2.33の移動が認められた。【結論】吸引療法中の筋膜の変化を示すことができ,また吸引療法による筋膜の滑走性も徒手の筋膜リリースと同等な改善が認められ,吸引を利用した治療アプローチ(吸引療法)は徒手療法の筋膜リリースと同様な効果が期待できるといえる。今回の吸引療法は1分間の処置であり先行研究の4分間より短時間で同等な効果を示したことになるが,より効果的であるかどうかはさらに検討したい。