第52回日本理学療法学術大会

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » 口述発表

[O-KS-13] 口述演題(基礎)13

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 A5会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室302)

座長:谷埜 予士次(関西医療大学保健医療学部臨床理学療法学教室)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[O-KS-13-1] 踵腓靭帯の走行や形状の違いが足関節機能に及ぼす影響
~遺体を用いたシミュレーションによる検討~

江玉 睦明1,2, 影山 幾男2, 中村 雅俊1, 菊元 孝則1, 伊藤 渉1, 中村 絵美1, 高林 知也1, 稲井 卓真3, 大西 秀明1 (1.新潟医療福祉大学運動機能医科学研究所, 2.日本歯科大学新潟生命歯学部解剖学第一講座, 3.おぐま整形外科クリニック)

キーワード:踵腓靭帯, 足関節内反制動, シミュレーション

【はじめに,目的】踵腓靭帯(以下,CFL)は,Ruthら(1946)により様々な走行や形状が報告されている。機能的には,足関節の底背屈運動をスムーズにする役割や足関節背屈位での内反制動の役割が報告されている。しかし,CFLの走行や形状の違いによる機能への影響については検討されていない。そこで本研究では,遺体を用いてCFLの走行や形状からタイプ分類を行い,CFLを3次元的に再構築し,シミュレーションを用いることで,CFLの走行や形体の違いが足関節の内反制動に及ぼす影響を検討することを目的とした。


【方法】対象は,日本人遺体11体20足(年齢:73.7±14.8歳,男性:12足,女性:8足)を用いた。CFLの分類方法は,先行研究を参考に,腓骨に対するCFLの走行角度と線維数で分類した。CFL0°(CFLの走行角度が0°から9°),CFL10°(10°から19°),CFL20°(20°から29°),CFL30°(30°から39°),CFL40°(40°から49°),CFL50°(50°から59°),CFL2(CFLが2線維存在し,交叉している)の7タイプに分類した。次に,各タイプから1足ずつを対象に,3DデジタイザMicroScribe装置(G2X-SYS,Revware)を使用して,CFLを起始部と停止部の2点でデジタイズし,3次元的に再構築した。3次元構築にはRhinoceros 3D software(McNeel,Seattle)を使用した。関節軸は,距腿関節(内果と外果の最突出部を結んだ線),距骨下関節(踵骨隆起の外側端と距骨頭の中点を結んだ線)とした。その後,距腿関節軸上で背屈(30°)・底屈(30°),距骨下関節軸上で内反(20°)・外反(20°)の方向に動かした際のCFLの伸張度(%)をシミュレーションを用いて算出した。


【結果】各タイプの割合は,CFL0°が1足(5%),CFL10°が2足(10%),CFL20°が4足(20%),CFL30°が4足(20%),CFL40°が5足(25%),CFL50°が3足(15%),CFL2が1足(5%)であった。CFL10°~CFL50°(CFLの走行角度が10°から59°)では,足関節背屈に内反を加えることでCFLが最も伸張された。しかし,CFL0°とCFL2では,足関節背屈に内反を加えた時だけでなく,足関節底屈に内反を加えた時にもCFLが強く伸張された。


【結語】本研究結果から,CFL10°~CFL50°(CFLの走行角度が10°から59°)は全体の90%を占めていた。更に,先行研究と同様に足関節背屈に内反を加えた際に最も伸張されたことから,これらのタイプは足関節背屈時の内反制動にはたらく可能性が示唆された。一方,CFL0°やCFL2では,足関節背屈位だけでなく底屈位においても内反制動に働く可能性が示唆された。従って,CFLは機能的には,CFL0°,CFL10°~CFL50°,CFL2の3つに分類できることが考えられた。