[O-KS-13-5] ランニングにおける中足部の運動学的な性差
Keywords:性差, 中足部, ランニング
【はじめに,目的】
現在,幅広い年齢層でランニング人口が増加しているが,ランニング障害の発生率も増加している。障害発生率には性差があり,女性アスリートにおける足関節・足部の障害は男性と比較して2倍発生しやすいことが報告されている。足関節・足部の障害発生機序を解明するために内側縦アーチや後足部の動きに焦点をあてた報告が多いが,近年中足部の過剰な動きも障害発生に関与することが報告されている。実際に,われわれはランニング中に中足部は後足部と同等の可動性を有することを報告し,中足部を評価する重要性を示した。しかし,中足部の運動学的な性差については報告されていない。そこで,本研究はランニングにおける中足部の運動学的な性差について検証することを目的とした。
【方法】
対象は健常成人男性11名(年齢20.6±1.4歳,身長172.8±4.9cm),女性11名(年齢20.6±1.4歳,身長172.8±4.9cm)とし,Arch height indexにて正常足と認められた者を対象とした。Leardini foot modelに基づき,右下腿,足部に15個の反射マーカーを貼付した。課題はトレッドミル上でのランニングとし,3次元動作解析装置により計測された。先行研究に準じ,ランニング速度を歩行からランニングに切り替わる速度に設定した。後足部に対する中足部(舟状骨,立方骨,楔状骨から成るセグメント)の角度を立脚期で算出した。男女での下肢長の影響を除くため,ランニングパラメーター(速度,ケイデンス,ステップ長)はHofらに方法に基づき無次元化された。対応のないt検定を用いて,無次元化されたランニングパラメーター,接地時の中足部角度,中足部角度ピーク値,角変位(接地時からピーク値までの角度)を男女間で比較した。有意水準は5%とした。さらに効果量を算出し,基準値を0.8以上でlarge,0.8未満~0.5でmoderate,0.5未満でsmallとした。
【結果】
無次元化されたランニングパラメーターは男女間で有意差を示さなかった。つまり,これらのパラメーターは中足部運動に影響を与えないことを示している。女性の中足部背屈ピーク値(6.1±1.5°)と角変位(4.8±1.5°)は,男性の中足部背屈ピーク値(4.0±1.0°)と角変位(3.2±1.0°)比較して有意に高値を示した(p < 0.05)。男女間の中足部背屈ピーク値の平均差は2.1°,角変位の平均差は1.6°であり,どちらも効果量はlargeであった(1.69,1.25)。接地時の中足部背屈角度,前額面,水平面上における中足部運動は男女間で有意差を示さなかった。
【結論】
関節の過剰な可動性は骨や軟部組織に過負荷を与えることが知られている。先行研究より,女性は男性と比較してランニング中に後足部回内や内側縦アーチ角度が増加し,これらの過剰な動きが障害発生に関与することが示唆されている。本研究より,女性が男性より中足部の動きが増加したという結果も,女性に足部障害が多く発生する一因になり得ることが示唆された。
現在,幅広い年齢層でランニング人口が増加しているが,ランニング障害の発生率も増加している。障害発生率には性差があり,女性アスリートにおける足関節・足部の障害は男性と比較して2倍発生しやすいことが報告されている。足関節・足部の障害発生機序を解明するために内側縦アーチや後足部の動きに焦点をあてた報告が多いが,近年中足部の過剰な動きも障害発生に関与することが報告されている。実際に,われわれはランニング中に中足部は後足部と同等の可動性を有することを報告し,中足部を評価する重要性を示した。しかし,中足部の運動学的な性差については報告されていない。そこで,本研究はランニングにおける中足部の運動学的な性差について検証することを目的とした。
【方法】
対象は健常成人男性11名(年齢20.6±1.4歳,身長172.8±4.9cm),女性11名(年齢20.6±1.4歳,身長172.8±4.9cm)とし,Arch height indexにて正常足と認められた者を対象とした。Leardini foot modelに基づき,右下腿,足部に15個の反射マーカーを貼付した。課題はトレッドミル上でのランニングとし,3次元動作解析装置により計測された。先行研究に準じ,ランニング速度を歩行からランニングに切り替わる速度に設定した。後足部に対する中足部(舟状骨,立方骨,楔状骨から成るセグメント)の角度を立脚期で算出した。男女での下肢長の影響を除くため,ランニングパラメーター(速度,ケイデンス,ステップ長)はHofらに方法に基づき無次元化された。対応のないt検定を用いて,無次元化されたランニングパラメーター,接地時の中足部角度,中足部角度ピーク値,角変位(接地時からピーク値までの角度)を男女間で比較した。有意水準は5%とした。さらに効果量を算出し,基準値を0.8以上でlarge,0.8未満~0.5でmoderate,0.5未満でsmallとした。
【結果】
無次元化されたランニングパラメーターは男女間で有意差を示さなかった。つまり,これらのパラメーターは中足部運動に影響を与えないことを示している。女性の中足部背屈ピーク値(6.1±1.5°)と角変位(4.8±1.5°)は,男性の中足部背屈ピーク値(4.0±1.0°)と角変位(3.2±1.0°)比較して有意に高値を示した(p < 0.05)。男女間の中足部背屈ピーク値の平均差は2.1°,角変位の平均差は1.6°であり,どちらも効果量はlargeであった(1.69,1.25)。接地時の中足部背屈角度,前額面,水平面上における中足部運動は男女間で有意差を示さなかった。
【結論】
関節の過剰な可動性は骨や軟部組織に過負荷を与えることが知られている。先行研究より,女性は男性と比較してランニング中に後足部回内や内側縦アーチ角度が増加し,これらの過剰な動きが障害発生に関与することが示唆されている。本研究より,女性が男性より中足部の動きが増加したという結果も,女性に足部障害が多く発生する一因になり得ることが示唆された。