[O-KS-13-6] 足部内側縦アーチの衝撃吸収機能の低下と歩行動作における下肢関節運動との関連性
キーワード:足部内側縦アーチ, 衝撃吸収, 歩行
【はじめに,目的】
歩行は,下肢への荷重と非荷重を繰り返しながら身体を前方へ運ぶ動作である。この荷重の受け継ぎの際には,足底から受ける衝撃を円滑に吸収することが不可欠となる。衝撃吸収に寄与する要素の1つに足部内側縦アーチ(Medial longitudinal arch:以下,MLA)があるが,同時に衝撃吸収には足関節,膝関節,股関節の各下肢関節の運動も関与するとされている。しかしながら,歩行中の下肢関節運動とMLAとの関連性は,衝撃吸収を視点として検討はされてこなかった。報告者らは,MLAによる歩行中の衝撃吸収機能を臨床で簡便に予測する手法として,Navicular drop test(以下,NDT)が適切であり,NDTの測定値が高値を示すほど,荷重時に受ける衝撃が大きいことを昨年の当学術大会で報告をした。本研究ではNDTを用いたMLAの衝撃吸収機能の推察値を基に,NDTと歩行中の下肢関節運動との関連性を,運動学・運動力学的観点から明らかにすることを目的として行った。
【方法】
被験者は健常若年成人女性25人(年齢:21.7±1.6歳,身長:157.5±4.4cm,体重:50.6±5.8kg)であった。NDTの結果は座位時の舟状骨高から立位時の舟状骨高を引いた値で示した。歩行は,被験者の感じる快適スピードにて行った。運動学データは,赤外線カメラ6台と赤外線反射マーカを用いた3次元動作解析システムVicon MX(Vicon Motion Systems社製),運動力学データは8基の床反力計(テック技販社製)により取得した。解析は,歩行の荷重応答期に該当する初期接地から膝関節屈曲の第1ピークに達した瞬間までを対象とした。NDTは,各下肢関節の内部関節モーメント積分値,大腿および下腿セグメント角度,歩行スピード,歩幅,床反力鉛直成分,前後方向における身体重心座標との関連性を検討した。統計学的解析にはSPSS Ver.22.0J(日本アイ・ビー・エム社製)を使用した。NDTとパラメータの相関分析では,得られたデータをShapiro-Wilk検定にて正規性を確認し,正規性を認めたときはPearsonの積率相関係数を,正規性を認めないときはSpearmanの順位相関係数を用いた。なお,有意水準は5%未満とした。
【結果】
NDTは,内部膝関節伸展モーメント積分値(r=0.474,p<0.05)と下腿最大前傾角度(r=0.473,p<0.05)との間に有意な正の相関を認めた。一方,他のパラメータは,NDTとの間に有意な相関を認めなかった。
【結論】
歩行の荷重応答期においてNDTが高値を示すほど内部膝関節伸展モーメント積分値が高値を示したことから,MLAの衝撃吸収機能の低下により膝関節への力学的負荷が大きくなることが明らかとなった。また,内部膝関節伸展モーメント積分値に影響を与える要素として下腿前傾が挙げられた。したがって,MLAまたはMLAの機能低下に対する理学療法介入では,下腿前傾角度の観察や膝関節の障害予防を考慮に入れたプログラムの立案が不可欠であると考えられる。
歩行は,下肢への荷重と非荷重を繰り返しながら身体を前方へ運ぶ動作である。この荷重の受け継ぎの際には,足底から受ける衝撃を円滑に吸収することが不可欠となる。衝撃吸収に寄与する要素の1つに足部内側縦アーチ(Medial longitudinal arch:以下,MLA)があるが,同時に衝撃吸収には足関節,膝関節,股関節の各下肢関節の運動も関与するとされている。しかしながら,歩行中の下肢関節運動とMLAとの関連性は,衝撃吸収を視点として検討はされてこなかった。報告者らは,MLAによる歩行中の衝撃吸収機能を臨床で簡便に予測する手法として,Navicular drop test(以下,NDT)が適切であり,NDTの測定値が高値を示すほど,荷重時に受ける衝撃が大きいことを昨年の当学術大会で報告をした。本研究ではNDTを用いたMLAの衝撃吸収機能の推察値を基に,NDTと歩行中の下肢関節運動との関連性を,運動学・運動力学的観点から明らかにすることを目的として行った。
【方法】
被験者は健常若年成人女性25人(年齢:21.7±1.6歳,身長:157.5±4.4cm,体重:50.6±5.8kg)であった。NDTの結果は座位時の舟状骨高から立位時の舟状骨高を引いた値で示した。歩行は,被験者の感じる快適スピードにて行った。運動学データは,赤外線カメラ6台と赤外線反射マーカを用いた3次元動作解析システムVicon MX(Vicon Motion Systems社製),運動力学データは8基の床反力計(テック技販社製)により取得した。解析は,歩行の荷重応答期に該当する初期接地から膝関節屈曲の第1ピークに達した瞬間までを対象とした。NDTは,各下肢関節の内部関節モーメント積分値,大腿および下腿セグメント角度,歩行スピード,歩幅,床反力鉛直成分,前後方向における身体重心座標との関連性を検討した。統計学的解析にはSPSS Ver.22.0J(日本アイ・ビー・エム社製)を使用した。NDTとパラメータの相関分析では,得られたデータをShapiro-Wilk検定にて正規性を確認し,正規性を認めたときはPearsonの積率相関係数を,正規性を認めないときはSpearmanの順位相関係数を用いた。なお,有意水準は5%未満とした。
【結果】
NDTは,内部膝関節伸展モーメント積分値(r=0.474,p<0.05)と下腿最大前傾角度(r=0.473,p<0.05)との間に有意な正の相関を認めた。一方,他のパラメータは,NDTとの間に有意な相関を認めなかった。
【結論】
歩行の荷重応答期においてNDTが高値を示すほど内部膝関節伸展モーメント積分値が高値を示したことから,MLAの衝撃吸収機能の低下により膝関節への力学的負荷が大きくなることが明らかとなった。また,内部膝関節伸展モーメント積分値に影響を与える要素として下腿前傾が挙げられた。したがって,MLAまたはMLAの機能低下に対する理学療法介入では,下腿前傾角度の観察や膝関節の障害予防を考慮に入れたプログラムの立案が不可欠であると考えられる。