[O-KS-15-4] 悪液質に伴う筋萎縮に対するパルス超音波が炎症性サイトカイン発現及びMAPキナーゼに与える効果
Keywords:悪液質, 筋萎縮, パルス超音波
【はじめに,目的】
悪液質は骨格筋量の減少を特徴とする複合的代謝異常症候群である。特に敗血症に伴う悪液質では,リポ多糖類(LPS)によりIL-1受容体結合キナーゼ-4(IRAK4)を介したMAPKキナーゼ(p38 MAPK)のリン酸化が亢進する。さらにIRAK4は炎症性サイトカインの一つであるTNF-αの発現を増加させる。これらのp38 MAPKの活性化やTNF-αの発現増加は骨格筋タンパク質分解経路を活性化し,筋萎縮を助長させる。一方,パルス超音波は抗炎症作用を有することから炎症により誘導される悪液質性筋萎縮を予防できると考えられる。そこで,本研究ではマウス骨格筋由来の培養筋管細胞を用いたLPS誘導性の悪液質性筋萎縮に対するパルス超音波照射の予防効果を検証した。
【方法】
マウス骨格筋由来のC2C12筋芽細胞を分化させた筋管細胞を用いた。群分けは対照群,パルス超音波照射群,LPS添加群,LPS添加にパルス超音波照射した群の4群とした。パルス超音波照射には超音波治療器(US-750,伊藤超短波)を用い,LPS添加直前にパルス超音波照射を実施した。照射条件は,パルス超音波の強度依存性を検討する予備実験を行った結果,照射強度0.5 W/cm2,周波数3 MHz,照射時間率20%,照射時間30秒間とした。また,パルス超音波照射がTNF-α mRNA発現量,IRAK4及びp38 MAPKのリン酸化,筋管細胞径,筋原線維タンパク質量に及ぼす影響を検証した。得られた結果の統計処理には二元配置分散分析とTukeyの多重比較検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
C2C12筋管細胞にLPS添加することで筋管細胞径と筋原線維タンパク質が減少した。また,筋管細胞におけるTNF-α mRNA発現量,IRAK4及びp38 MAPKのリン酸化が亢進した。一方,パルス超音波照射により,C2C12筋管細胞の細胞径,筋原線維タンパク質量の減少が抑制された。さらにLPS添加で上昇したTNF-α mRNA発現量,p38 MAPKのリン酸化はパルス超音波照射により抑制された。
【結論】
これらの結果からパルス超音波照射の抗炎症作用はLPS添加によるIRAK4リン酸化には影響を及ぼさず,その下流のシグナルであるTNF-α mRNA発現及びp38 MAPKリン酸化の亢進を抑制することで,LPS誘導性の筋萎縮を予防できることが明らかとなった。本研究での成果からパルス超音波照射は悪液質に伴う筋萎縮を予防する治療手段の一つとなり得ることが示唆された。
悪液質は骨格筋量の減少を特徴とする複合的代謝異常症候群である。特に敗血症に伴う悪液質では,リポ多糖類(LPS)によりIL-1受容体結合キナーゼ-4(IRAK4)を介したMAPKキナーゼ(p38 MAPK)のリン酸化が亢進する。さらにIRAK4は炎症性サイトカインの一つであるTNF-αの発現を増加させる。これらのp38 MAPKの活性化やTNF-αの発現増加は骨格筋タンパク質分解経路を活性化し,筋萎縮を助長させる。一方,パルス超音波は抗炎症作用を有することから炎症により誘導される悪液質性筋萎縮を予防できると考えられる。そこで,本研究ではマウス骨格筋由来の培養筋管細胞を用いたLPS誘導性の悪液質性筋萎縮に対するパルス超音波照射の予防効果を検証した。
【方法】
マウス骨格筋由来のC2C12筋芽細胞を分化させた筋管細胞を用いた。群分けは対照群,パルス超音波照射群,LPS添加群,LPS添加にパルス超音波照射した群の4群とした。パルス超音波照射には超音波治療器(US-750,伊藤超短波)を用い,LPS添加直前にパルス超音波照射を実施した。照射条件は,パルス超音波の強度依存性を検討する予備実験を行った結果,照射強度0.5 W/cm2,周波数3 MHz,照射時間率20%,照射時間30秒間とした。また,パルス超音波照射がTNF-α mRNA発現量,IRAK4及びp38 MAPKのリン酸化,筋管細胞径,筋原線維タンパク質量に及ぼす影響を検証した。得られた結果の統計処理には二元配置分散分析とTukeyの多重比較検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
C2C12筋管細胞にLPS添加することで筋管細胞径と筋原線維タンパク質が減少した。また,筋管細胞におけるTNF-α mRNA発現量,IRAK4及びp38 MAPKのリン酸化が亢進した。一方,パルス超音波照射により,C2C12筋管細胞の細胞径,筋原線維タンパク質量の減少が抑制された。さらにLPS添加で上昇したTNF-α mRNA発現量,p38 MAPKのリン酸化はパルス超音波照射により抑制された。
【結論】
これらの結果からパルス超音波照射の抗炎症作用はLPS添加によるIRAK4リン酸化には影響を及ぼさず,その下流のシグナルであるTNF-α mRNA発現及びp38 MAPKリン酸化の亢進を抑制することで,LPS誘導性の筋萎縮を予防できることが明らかとなった。本研究での成果からパルス超音波照射は悪液質に伴う筋萎縮を予防する治療手段の一つとなり得ることが示唆された。