The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » 口述発表

[O-KS-16] 口述演題(基礎)16

Sat. May 13, 2017 4:50 PM - 5:50 PM A5会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室302)

座長:沖田 実(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科運動障害リハビリテーション学分野)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[O-KS-16-1] 加齢による骨格筋組織内蓄積脂肪の増加
マウスヒラメ筋を用いた検討

横山 真吾1, 大野 善隆1, 池谷 直美2, 中村 文音2, 比嘉 正輝2, 青島 恵2, 後藤 勝正1,2 (1.豊橋創造大学保健医療学部理学療法学科, 2.豊橋創造大学大学院健康科学研究科)

Keywords:加齢, 骨格筋組織内脂肪, アンジオポエチン様因子

【はじめに,目的】

近年,加齢性筋肉減少症(サルコペニア)に脂肪の蓄積を合併したサルコペニア肥満が社会問題化している。サルコペニア肥満は加齢性の骨格筋量減少に加え,糖尿病などの代謝性病変を合併するリスクを有することから,サルコペニア単独よりも高齢者のQOLを阻害することが報告されている。また,サルコペニア肥満では骨格筋組織内の蓄積脂肪量が増加し,相対的な骨格筋細胞量の減少を伴うことから,運動機能の維持の観点からも骨格筋内の脂肪量をコントロールする意義は大きい。しかし,骨格筋内脂肪蓄積量増加の機序は未解明であり,有効な対抗策は未だ確立していない。

アンジオポエチン様因子(angiopoietin-like protein;Angptl)ファミリーは肝臓や脂肪組織でその発現が確認されているタンパク質で,糖・脂質代謝やエネルギー代謝に深く関与している。したがって,骨格筋内脂肪蓄積の制御因子として機能している可能性が示唆されるが,骨格筋におけるAngptlファミリーの働きには不明な点が多く,サルコペニア肥満との関係性も明らかではない。よって,本研究の目的は加齢による骨格筋内脂肪蓄積メカニズムをAngptlファミリー発現動態から検討することである。

【方法】

実験には若齢(10週齢;n=6)および加齢(100週齢;n=7)のC57BL/6J雄性マウスを用いた。マウスの両後肢よりヒラメ筋を摘出し,即座に結合組織を除去して筋湿重量を測定後,右側は組織学的検索に,左側は分子生物学的検索に供した。組織学的検索では凍結横断切片作成後に蛍光色素LipiDyeにより染色し,骨格筋内脂肪滴の分布を評価した。分子生物学的検索では定量real time RT-PCR法にてAngptl2,Angptl 4およびAngptl6発現量を評価した。

【結果】

加齢マウスヒラメ筋重量は若齢マウスヒラメ筋と比較して有意に低値を示した(p<0.05)。一方,加齢マウスヒラメ筋では,LipiDyeで染色される領域が若齢マウスヒラメ筋と比較して増大した。また,Angptl2およびAngptl4 mRNA発現量は加齢マウスヒラメ筋で有意に低値を示したが(p<0.05),Angptl6 mRNA発現量は加齢マウスヒラメ筋で低値を示す傾向を認めたが統計的有意差は認めなかった。

【結論】

加齢によりヒラメ筋重量は低下し,骨格筋内脂肪滴の著明な蓄積を認めた。また,Angptl2およびAngptl4 mRNA発現量は加齢により低下した。したがって,加齢に伴うAngptl2およびAngptl 4発現の低下が骨格筋組織内脂肪蓄積の増加に関与していることが示唆された。