[O-KS-16-3] 加齢ラットに対するトレッドミル走行運動が脊髄前角エリアにおけるGDNFの発現に与える影響
Keywords:走行運動, 脊髄前角エリア, グリア細胞株由来神経栄養因子
【はじめに,目的】
神経栄養因子の一つであるGDNFは運動ニューロンを栄養する有力な分泌タンパク質である。神経細胞の生存,遺伝子発現制御,発生過程のシナプス除去などに重要な役割を担っており,特に脊髄の運動ニューロンの発生と分化,生存に深く関与していると報告されている。神経栄養因子は運動により効果を発揮するが,脊髄レベルでのGDNFの影響について詳しい見解が得られていない。
本研究は,加齢ラットに対しトレッドミル走行運動を実施することで,脊髄前角エリアにおけるGDNFの発現量を比較し,神経可塑性に与える影響を検討することで,運動療法の効果検証をすることを目的とした。
【方法】
Wistar系雄性ラット1年齢10匹を対象とし走行群,非走行群の2群に振り分けた。走行群は小動物用トレッドミルを使用し,傾斜0度で走行実験初日および2日目は走行速度3.6m/minにて30分,3日目は走行速度3.6m/min(10分)→5.8m/min(20分)計30分,4日目は走行速度3.6m/min(10分)→5.8m/min(30分)計40分,5日目は走行速度3.6m/min(10分)→5.8m/min(40分)の計50分,5日目以降は走行速度3.6m/min(10分)→5.8m/min(50分)の計60分を1日1回,週5回,4週間行った。
実験終了後,組織学的評価として蛍光免疫組織化学染色法にて,抗GDNF抗体,抗Hu/D抗体を用い,2重染色を行った。KEYENCE蛍光顕微鏡(BZ-X700)でL4-L5脊髄のLAMINAIXエリアに対し陽性ニューロンの輝度,総計を算出し,対応のないT検定を用いて比較した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
LAMINAIXエリアの運動ニューロンの輝度平均は,走行群(68.4)は非走行群(37.0)に比べて有意に増加した。また総計においても走行群(21951,0μm2)は非走行群(8208,0μm2)に比べ有意に増加した。
【結論】
本研究結果より,運動によるLAMINAIXエリアの運動ニューロン活性化が認められた。脊髄の運動神経は脳からの指令を骨格筋へ伝える遠心性の情報伝達路である。先行研究からGDNFは骨格筋細胞と同様に脊髄内の運動ニューロン,オリゴデンドロサイトで産出され,運動により発現が増加することが示されている。また,骨格筋で生成されたGDNFは運動することで脊髄に逆行性輸送されると報告されている。これらから本研究では運動により骨格筋で生成されたGDNFが脊髄の運動ニューロンに逆行性輸送されたため,脊髄前角のLAMINAIXエリアにおける輝度平均および総計の値が増加したと考えられた。また中等度の運動(トレッドミルを用い,10m/minで,1日2時間)を短期間(2週間)行わせた場合,脊髄レベルの神経栄養因子の発現を高め,それ以上の強度の運動では発現を減少させることが先行研究より示されている。本研究では低強度でも長期間の運動を継続させることで脊髄における運動ニューロンの活性化が認められた。これらより低負荷でも長期間の運動を継続することで神経機能が活性化され,運動療法の効果が示唆された。
神経栄養因子の一つであるGDNFは運動ニューロンを栄養する有力な分泌タンパク質である。神経細胞の生存,遺伝子発現制御,発生過程のシナプス除去などに重要な役割を担っており,特に脊髄の運動ニューロンの発生と分化,生存に深く関与していると報告されている。神経栄養因子は運動により効果を発揮するが,脊髄レベルでのGDNFの影響について詳しい見解が得られていない。
本研究は,加齢ラットに対しトレッドミル走行運動を実施することで,脊髄前角エリアにおけるGDNFの発現量を比較し,神経可塑性に与える影響を検討することで,運動療法の効果検証をすることを目的とした。
【方法】
Wistar系雄性ラット1年齢10匹を対象とし走行群,非走行群の2群に振り分けた。走行群は小動物用トレッドミルを使用し,傾斜0度で走行実験初日および2日目は走行速度3.6m/minにて30分,3日目は走行速度3.6m/min(10分)→5.8m/min(20分)計30分,4日目は走行速度3.6m/min(10分)→5.8m/min(30分)計40分,5日目は走行速度3.6m/min(10分)→5.8m/min(40分)の計50分,5日目以降は走行速度3.6m/min(10分)→5.8m/min(50分)の計60分を1日1回,週5回,4週間行った。
実験終了後,組織学的評価として蛍光免疫組織化学染色法にて,抗GDNF抗体,抗Hu/D抗体を用い,2重染色を行った。KEYENCE蛍光顕微鏡(BZ-X700)でL4-L5脊髄のLAMINAIXエリアに対し陽性ニューロンの輝度,総計を算出し,対応のないT検定を用いて比較した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
LAMINAIXエリアの運動ニューロンの輝度平均は,走行群(68.4)は非走行群(37.0)に比べて有意に増加した。また総計においても走行群(21951,0μm2)は非走行群(8208,0μm2)に比べ有意に増加した。
【結論】
本研究結果より,運動によるLAMINAIXエリアの運動ニューロン活性化が認められた。脊髄の運動神経は脳からの指令を骨格筋へ伝える遠心性の情報伝達路である。先行研究からGDNFは骨格筋細胞と同様に脊髄内の運動ニューロン,オリゴデンドロサイトで産出され,運動により発現が増加することが示されている。また,骨格筋で生成されたGDNFは運動することで脊髄に逆行性輸送されると報告されている。これらから本研究では運動により骨格筋で生成されたGDNFが脊髄の運動ニューロンに逆行性輸送されたため,脊髄前角のLAMINAIXエリアにおける輝度平均および総計の値が増加したと考えられた。また中等度の運動(トレッドミルを用い,10m/minで,1日2時間)を短期間(2週間)行わせた場合,脊髄レベルの神経栄養因子の発現を高め,それ以上の強度の運動では発現を減少させることが先行研究より示されている。本研究では低強度でも長期間の運動を継続させることで脊髄における運動ニューロンの活性化が認められた。これらより低負荷でも長期間の運動を継続することで神経機能が活性化され,運動療法の効果が示唆された。