[O-KS-19-6] キセノン光の星状神経節近傍照射を用いた下肢骨格筋血流量増加の可能性に関する検討
Keywords:キセノン光, 星状神経節, 下肢骨格筋血流
【はじめに・目的】
生体深達性の高い近赤外線に富むキセノン(Xe)光の星状神経節近傍照射では,上肢領域の交感神経支配にかかわる星状神経節機能が抑制されることで上肢骨格筋血流量が増加すると報告されている(前田,2014,2015)。一方,Xe光の星状神経節近傍照射が下肢骨格筋血流量に及ぼす影響については十分な検討が行われていないのが現状である。星状神経節は交感神経機能の中枢である視床下部と線維連絡を有しており(Westerhaus,2001),Xe光の星状神経節近傍照射の影響は下肢骨格筋を含む全身に波及する可能性がある(Lipov,2008)。以上から本研究の目的は,Xe光の星状神経節近傍照射が下肢骨格筋血流動態に影響を及ぼし得るか否か明らかにすることとした。
【方法】
健常者17名を対象とし,近赤外分光法を用いた血流量の測定対象筋は左右の大腿直筋,外側広筋,内側広筋,前脛骨筋,長腓骨筋,腓腹筋の6筋とした。対象者に対しては,安静仰臥位を15分間保った(馴化)後に,同一肢位にて両側の星状神経節へのXe光照射を10分間受ける条件(Xe光条件)と,馴化後にXe光照射を受けることなく安静仰臥位を10分間保ち続ける条件(コントロール条件)の2条件を無作為順序で1日以上の間隔を空けて実施した。Xe光の照射条件は,先行研究と同様に,発光間隔は最初の1分間は1秒に1回,それ以降は3.5秒に1回とし,1回の発光時間及び発光エネルギーはそれぞれ5msec,18Wとした。各条件の実施中,交感神経活動指標である心拍変動周波数成分(低周波数成分と高周波数成分の比:LF/HF)と前述の下肢骨格筋の筋血流量の指標である酸素化ヘモグロビン量(HbO2)を連続測定した。その上で,各条件実施前後でのLF/HFをWilcoxonの符号付順位和検定,各条件実施中の6筋のHbO2の経時的変化をDunnett法にて検討した。
【結果】
LF/HFについては,コントロール条件の実施に伴う明らかな変化を認めなかったが,Xe光条件の実施に伴う有意な低下を認めた。HbO2については,コントロール条件の実施に伴う明らかな変化を認めなかったが,Xe光条件の実施に伴う増加傾向を全ての筋で認め,外側広筋,大腿直筋,長腓骨筋では有意な増加を認めた。
【考察】
本結果は,Xe光の星状神経節近傍照射が交感神経活動の抑制に基づく下肢骨格筋血流量の増加を引き起こす可能性を示しているものの,実際に筋血流量の有意な増加を認めた下肢骨格筋は測定された6筋中3筋に止まった。この理由として,下肢骨格筋は星状神経節の直接的な支配を受けていないため,下肢骨格筋への視床下部を介したXe光の星状神経節近傍照射の影響は相対的に弱いことが推察される。今後の更なる検証は必要だが,下肢骨格筋血流の増加が求められる症例へのXe光の星状神経節近傍照射の適応が期待される。
生体深達性の高い近赤外線に富むキセノン(Xe)光の星状神経節近傍照射では,上肢領域の交感神経支配にかかわる星状神経節機能が抑制されることで上肢骨格筋血流量が増加すると報告されている(前田,2014,2015)。一方,Xe光の星状神経節近傍照射が下肢骨格筋血流量に及ぼす影響については十分な検討が行われていないのが現状である。星状神経節は交感神経機能の中枢である視床下部と線維連絡を有しており(Westerhaus,2001),Xe光の星状神経節近傍照射の影響は下肢骨格筋を含む全身に波及する可能性がある(Lipov,2008)。以上から本研究の目的は,Xe光の星状神経節近傍照射が下肢骨格筋血流動態に影響を及ぼし得るか否か明らかにすることとした。
【方法】
健常者17名を対象とし,近赤外分光法を用いた血流量の測定対象筋は左右の大腿直筋,外側広筋,内側広筋,前脛骨筋,長腓骨筋,腓腹筋の6筋とした。対象者に対しては,安静仰臥位を15分間保った(馴化)後に,同一肢位にて両側の星状神経節へのXe光照射を10分間受ける条件(Xe光条件)と,馴化後にXe光照射を受けることなく安静仰臥位を10分間保ち続ける条件(コントロール条件)の2条件を無作為順序で1日以上の間隔を空けて実施した。Xe光の照射条件は,先行研究と同様に,発光間隔は最初の1分間は1秒に1回,それ以降は3.5秒に1回とし,1回の発光時間及び発光エネルギーはそれぞれ5msec,18Wとした。各条件の実施中,交感神経活動指標である心拍変動周波数成分(低周波数成分と高周波数成分の比:LF/HF)と前述の下肢骨格筋の筋血流量の指標である酸素化ヘモグロビン量(HbO2)を連続測定した。その上で,各条件実施前後でのLF/HFをWilcoxonの符号付順位和検定,各条件実施中の6筋のHbO2の経時的変化をDunnett法にて検討した。
【結果】
LF/HFについては,コントロール条件の実施に伴う明らかな変化を認めなかったが,Xe光条件の実施に伴う有意な低下を認めた。HbO2については,コントロール条件の実施に伴う明らかな変化を認めなかったが,Xe光条件の実施に伴う増加傾向を全ての筋で認め,外側広筋,大腿直筋,長腓骨筋では有意な増加を認めた。
【考察】
本結果は,Xe光の星状神経節近傍照射が交感神経活動の抑制に基づく下肢骨格筋血流量の増加を引き起こす可能性を示しているものの,実際に筋血流量の有意な増加を認めた下肢骨格筋は測定された6筋中3筋に止まった。この理由として,下肢骨格筋は星状神経節の直接的な支配を受けていないため,下肢骨格筋への視床下部を介したXe光の星状神経節近傍照射の影響は相対的に弱いことが推察される。今後の更なる検証は必要だが,下肢骨格筋血流の増加が求められる症例へのXe光の星状神経節近傍照射の適応が期待される。