[O-KS-20-4] 異なる感覚モダリティを用いる運動指導の方法が対象者の短期的な運動技能保持に及ぼす影響
足底圧中心制御課題における検討
Keywords:教示, 足底圧軌跡, 踏み返し動作
【はじめに,目的】
理学療法士は様々な方法を用いて対象者へ運動指導を行うが,対象者がその理解に難渋するケースに遭遇する。我々は先行研究にて体性感覚情報を利用した教示が,対象者に正確な課題内容の理解を促すとともに治療者側が理想とする動作をより正確に再現できることを明らかにした。しかし,先行研究では教示直後の効果のみに焦点を当てており,運動技能の保持効果に関する検討は行われていない。そこで本研究では異なる感覚モダリティを用いた運動指導が運動技能の保持効果に与える影響について検討することを目的とした。
【方法】
対象は健常男性12名(平均±標準偏差:年齢20.8±1.0歳,身長172.9±4.8cm,体重64.3±3.5kg),および健常女性12名(年齢20.0±0.8歳,身長155.9±5.5cm,体重50.3±4.4kg)とした。課題内容は踏み返し動作における足底圧軌跡の制御課題とし,静止立位から左下肢を振り出し,左下肢を接地し,離地するまでを1試行とした。実験条件は,口頭指示による言語条件(以下,言語条件),対象者の実寸大の足型に足底圧軌跡を描画した図を提示する視覚条件(以下,視覚条件),踵内側,小趾球,母趾球に直径5mmのプラスチック製の半球シールを貼付し,順番に踏むように指示した感覚条件(以下,感覚条件)の3条件とし,それぞれ同一の足底圧軌跡を教示した。群分けは各群8名ずつ,男女比が同程度となるよう無作為に振り分けた。足底圧軌跡の計測には,足底圧分布測定システムF-SCANIIを使用し,計測は教示前,教示直後,教示30分後,教示60分後にそれぞれ10試行ずつ行った。計測後,F-SCANIIの領域分割機能を用いて,各試行において今回教示した踵内側,第五中足骨頭,第一中足骨頭の3領域全てを通過した足底圧軌跡の成功試技回数(以下,3点通過回数)を記録した。その後,3点通過回数を従属変数とし,教示条件と計測時間を要因とした二元配置分散分析にて解析を行った。なお,交互作用が認められた場合,教示条件要因の比較にはKruskal-Wallis検定,計測時間要因に対してはFriedman検定を行った後,それぞれ多重比較を行った。統計解析はSPSS ver.23を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
教示条件要因および計測時間要因における主効果と交互作用に有意差が認められた(p<0.01)。多重比較の結果,教示条件要因では,教示直後,教示30分後の3点通過回数において言語条件,視覚条件と比較し感覚条件において有意に高い値を示した(p<0.01)。計測時間要因においては教示前と比較し教示直後,教示30分後,教示60分後においてそれぞれ有意に高い値を示した(p<0.01)。
【結論】
体性感覚を利用した運動指導を行うことで,対象者は介入早期の段階から高い運動技能を獲得することが可能であるとともに,短時間ではあるが,言語や視覚を利用する教示方法と比較して運動技能の保持効果が期待できる。
理学療法士は様々な方法を用いて対象者へ運動指導を行うが,対象者がその理解に難渋するケースに遭遇する。我々は先行研究にて体性感覚情報を利用した教示が,対象者に正確な課題内容の理解を促すとともに治療者側が理想とする動作をより正確に再現できることを明らかにした。しかし,先行研究では教示直後の効果のみに焦点を当てており,運動技能の保持効果に関する検討は行われていない。そこで本研究では異なる感覚モダリティを用いた運動指導が運動技能の保持効果に与える影響について検討することを目的とした。
【方法】
対象は健常男性12名(平均±標準偏差:年齢20.8±1.0歳,身長172.9±4.8cm,体重64.3±3.5kg),および健常女性12名(年齢20.0±0.8歳,身長155.9±5.5cm,体重50.3±4.4kg)とした。課題内容は踏み返し動作における足底圧軌跡の制御課題とし,静止立位から左下肢を振り出し,左下肢を接地し,離地するまでを1試行とした。実験条件は,口頭指示による言語条件(以下,言語条件),対象者の実寸大の足型に足底圧軌跡を描画した図を提示する視覚条件(以下,視覚条件),踵内側,小趾球,母趾球に直径5mmのプラスチック製の半球シールを貼付し,順番に踏むように指示した感覚条件(以下,感覚条件)の3条件とし,それぞれ同一の足底圧軌跡を教示した。群分けは各群8名ずつ,男女比が同程度となるよう無作為に振り分けた。足底圧軌跡の計測には,足底圧分布測定システムF-SCANIIを使用し,計測は教示前,教示直後,教示30分後,教示60分後にそれぞれ10試行ずつ行った。計測後,F-SCANIIの領域分割機能を用いて,各試行において今回教示した踵内側,第五中足骨頭,第一中足骨頭の3領域全てを通過した足底圧軌跡の成功試技回数(以下,3点通過回数)を記録した。その後,3点通過回数を従属変数とし,教示条件と計測時間を要因とした二元配置分散分析にて解析を行った。なお,交互作用が認められた場合,教示条件要因の比較にはKruskal-Wallis検定,計測時間要因に対してはFriedman検定を行った後,それぞれ多重比較を行った。統計解析はSPSS ver.23を使用し,有意水準は5%とした。
【結果】
教示条件要因および計測時間要因における主効果と交互作用に有意差が認められた(p<0.01)。多重比較の結果,教示条件要因では,教示直後,教示30分後の3点通過回数において言語条件,視覚条件と比較し感覚条件において有意に高い値を示した(p<0.01)。計測時間要因においては教示前と比較し教示直後,教示30分後,教示60分後においてそれぞれ有意に高い値を示した(p<0.01)。
【結論】
体性感覚を利用した運動指導を行うことで,対象者は介入早期の段階から高い運動技能を獲得することが可能であるとともに,短時間ではあるが,言語や視覚を利用する教示方法と比較して運動技能の保持効果が期待できる。