[O-KS-20-6] 味覚刺激により惹起された情動が持続性注意に与える影響
Keywords:注意機能, 定量的評価, 視覚的アナログスケール(VAS)
【はじめに,目的】
持続性注意は,ある一定時間刺激に反応し続けるための注意のことである。近年,この機能を要する課題の成功率が,幼い動物などが撮影された可愛い写真を見ることにより向上することが報告され,快感情が持続性注意に影響を与えることが示唆された。しかし,このような影響が視覚とは異なる他の感覚モダリティーによって惹起された情動においても生じるのかについては未だ不明な点が多い。味覚は甘味・うま味・塩味・酸味・苦味で構成されており,前二者は快感情を,後三者は不快感情を基本的に引き起こすことが知られている。本研究では,Continuous Performance Task(CPT)を用いて,甘味・苦味・酸味が持続性注意に与える影響を定量的に評価した。
【方法】
被験者は健常成人28名(男性:13名,女性:15名,平均年齢:20.5歳)。味覚刺激として0.1molスクロース(甘味),0.025mmol安息香酸デナトニウム(苦味),0.05mol酢酸(酸味)を,コントロールとして水(無味)を用いた。刺激前後にCPT(反応時間課題)を行い,これを1日に2試行ずつ4日間実施した。1日目の2試行および2-4日目の1試行目には無味,2-4日目の2試行目には甘味・苦味・酸味の条件をそれぞれ計測した。被験者には味覚刺激溶液1mlを口に5秒間含み,その溶液をCPT開始と同時に飲み込むよう指示した。CPT終了後,各味覚刺激に対する快・不快の程度をVisual Analogue Scale(以下VAS)を用いて評価した。VASでは,長さ10cmの線分を用いて,左端(-5cm)を「不快」,右端(+5cm)を「快」,中間点(0cm)を「快とも不快ともいえない状態」と定義した。統計解析では,Friedman検定および多重比較検定(Dunn法)を用い,有意水準を5%とした。
【結果】
持続性注意に関する日差変動の有無を評価するために,コントロール条件におけるCPT反応時間を比較したところ,各日の間に有意差はみられなかった。味覚刺激による影響を検証するために,各日の2試行目に実施した結果を比較したところ,反応時間は甘味が有意に短く,次いで,無味,酸味,苦味の順に速かった。各試行における時系列変化を確認するために,1試行(80回)を10回ずつに区分して反応時間を解析した結果,41-50回の区間において,甘味条件の平均反応時間が有意に短かった。VASの結果,最も快と感じた味覚が甘味(16人)であった被験者が最多であり,次いで,無味(9人),酸味(3人),苦味(2人)の順に多かった。また,75%の被験者においてVASの値と反応時間との間には負の相関が認められた。
【結論】
本研究結果は,快感情を惹起する味覚(特に甘味)刺激により持続性注意は一過性に向上すること,また,視覚のみならず味覚刺激により惹起された情動においても持続性注意は影響を受けることを示唆するものである。
持続性注意は,ある一定時間刺激に反応し続けるための注意のことである。近年,この機能を要する課題の成功率が,幼い動物などが撮影された可愛い写真を見ることにより向上することが報告され,快感情が持続性注意に影響を与えることが示唆された。しかし,このような影響が視覚とは異なる他の感覚モダリティーによって惹起された情動においても生じるのかについては未だ不明な点が多い。味覚は甘味・うま味・塩味・酸味・苦味で構成されており,前二者は快感情を,後三者は不快感情を基本的に引き起こすことが知られている。本研究では,Continuous Performance Task(CPT)を用いて,甘味・苦味・酸味が持続性注意に与える影響を定量的に評価した。
【方法】
被験者は健常成人28名(男性:13名,女性:15名,平均年齢:20.5歳)。味覚刺激として0.1molスクロース(甘味),0.025mmol安息香酸デナトニウム(苦味),0.05mol酢酸(酸味)を,コントロールとして水(無味)を用いた。刺激前後にCPT(反応時間課題)を行い,これを1日に2試行ずつ4日間実施した。1日目の2試行および2-4日目の1試行目には無味,2-4日目の2試行目には甘味・苦味・酸味の条件をそれぞれ計測した。被験者には味覚刺激溶液1mlを口に5秒間含み,その溶液をCPT開始と同時に飲み込むよう指示した。CPT終了後,各味覚刺激に対する快・不快の程度をVisual Analogue Scale(以下VAS)を用いて評価した。VASでは,長さ10cmの線分を用いて,左端(-5cm)を「不快」,右端(+5cm)を「快」,中間点(0cm)を「快とも不快ともいえない状態」と定義した。統計解析では,Friedman検定および多重比較検定(Dunn法)を用い,有意水準を5%とした。
【結果】
持続性注意に関する日差変動の有無を評価するために,コントロール条件におけるCPT反応時間を比較したところ,各日の間に有意差はみられなかった。味覚刺激による影響を検証するために,各日の2試行目に実施した結果を比較したところ,反応時間は甘味が有意に短く,次いで,無味,酸味,苦味の順に速かった。各試行における時系列変化を確認するために,1試行(80回)を10回ずつに区分して反応時間を解析した結果,41-50回の区間において,甘味条件の平均反応時間が有意に短かった。VASの結果,最も快と感じた味覚が甘味(16人)であった被験者が最多であり,次いで,無味(9人),酸味(3人),苦味(2人)の順に多かった。また,75%の被験者においてVASの値と反応時間との間には負の相関が認められた。
【結論】
本研究結果は,快感情を惹起する味覚(特に甘味)刺激により持続性注意は一過性に向上すること,また,視覚のみならず味覚刺激により惹起された情動においても持続性注意は影響を受けることを示唆するものである。