[O-MT-01-1] 人工膝関節全置換術後患者の退院時運動機能に影響する術前生活・運動機能の検討
Keywords:人工膝関節全置換術, 術前活動性, 術後運動機能
【はじめに,目的】
リハビリテーションにおいて,術後機能回復の予後予測は早期退院へと繋げるために重要と言われている。しかし,TKA後の予後予測に関しては術前の身体機能に着目した報告(市橋ら2003)が多く,術前の生活機能に着目した検討は見当たらなかった。そこで,我々は先行研究においてLife space assessment(以下,LSA)を用いて術前活動性を評価し,退院時の歩行能力に相関を認めることを報告した(演者ら2016)。しかし,術前運動機能・活動性を含めて術後の運動機能への影響を検討している報告は,我々が渉猟し得た範囲には見つからなかった。そこで,本研究は術前LSAと演者らの先行研究において術後歩行能力と相関を認めた術前評価項目より,片脚立位,Timed up and go test(以下TUG),10m歩行時間において退院時の運動機能に影響する因子を比較検討することを目的とした。
【方法】
対象は,平成27年7月~28年7月に当院でTKAを施行した79人のうち本研究への同意を得られ,下記の除外基準に当てはまらない51人(男性:11人,女性:40人,年齢:72.4歳±7.8歳,BMI:25.5±2.6kg/m2)とした。除外基準は,退院時にT字杖を使用しての自宅退院が不可能であった者,認知症又は脳血管疾患を有する者とした。術前活動性の評価としてLSAを入院前に実施した。術前身体機能評価項目は,片脚立位時間,TUG,10m歩行時間を測定した。退院時に行う身体機能評価項目は,術前評価と同様の評価項目を同様の方法で行った。片脚立位時間は最大を2分間として術側・非術側3回実施し,その最長時間を測定値とした。TUGはMathiusの原法に準じて行うが,最大努力歩行にて測定した。10m歩行時間は20m屋内平地直線歩行路(前5mを助走路)とし,最大努力歩行で20m歩行を3回行い,10mに要する時間の平均を算出した。統計処理は,術前因子と術後運動機能の影響を評価するために,目的変数を術後運動機能,独立変数をLSA及び術前身体機能評価項目として重回帰分析を行い,危険率5%未満をもって有意とした。
【結果】
10m歩行時間及びTUGを目的変数とした場合,術前評価項目からは有意な独立変数は選ばれなかった。目的変数を退院時術側片脚立位時間とした場合,LSA〔標準化係数(β)=0.459,p<0.01〕,術前術側片脚立位時間〔(β)=0.433,p<0.01〕,目的変数を退院時非術側片脚立位とした場合,術前非術側片脚立位時間〔(β)=0.597,p<0.01〕,LSA〔(β)=0.282,p<0.05〕が有意な独立変数として選ばれた。
【結論】
本研究結果より,術前の生活機能(LSA)及び片脚立位時間は,退院時の術側・非術側片脚立位時間に影響を与えることが示唆された。さらに術前LSAにおいては,術側・非術側を問わず,TKA術後の片脚立位時間に影響を与える因子といえる。片脚立位時間は,転倒の有無に相関を認める(村田ら2005)ことは一般的となってきている。TKA術後のバランス能力予測因子として術前LSAは重要といえる。
リハビリテーションにおいて,術後機能回復の予後予測は早期退院へと繋げるために重要と言われている。しかし,TKA後の予後予測に関しては術前の身体機能に着目した報告(市橋ら2003)が多く,術前の生活機能に着目した検討は見当たらなかった。そこで,我々は先行研究においてLife space assessment(以下,LSA)を用いて術前活動性を評価し,退院時の歩行能力に相関を認めることを報告した(演者ら2016)。しかし,術前運動機能・活動性を含めて術後の運動機能への影響を検討している報告は,我々が渉猟し得た範囲には見つからなかった。そこで,本研究は術前LSAと演者らの先行研究において術後歩行能力と相関を認めた術前評価項目より,片脚立位,Timed up and go test(以下TUG),10m歩行時間において退院時の運動機能に影響する因子を比較検討することを目的とした。
【方法】
対象は,平成27年7月~28年7月に当院でTKAを施行した79人のうち本研究への同意を得られ,下記の除外基準に当てはまらない51人(男性:11人,女性:40人,年齢:72.4歳±7.8歳,BMI:25.5±2.6kg/m2)とした。除外基準は,退院時にT字杖を使用しての自宅退院が不可能であった者,認知症又は脳血管疾患を有する者とした。術前活動性の評価としてLSAを入院前に実施した。術前身体機能評価項目は,片脚立位時間,TUG,10m歩行時間を測定した。退院時に行う身体機能評価項目は,術前評価と同様の評価項目を同様の方法で行った。片脚立位時間は最大を2分間として術側・非術側3回実施し,その最長時間を測定値とした。TUGはMathiusの原法に準じて行うが,最大努力歩行にて測定した。10m歩行時間は20m屋内平地直線歩行路(前5mを助走路)とし,最大努力歩行で20m歩行を3回行い,10mに要する時間の平均を算出した。統計処理は,術前因子と術後運動機能の影響を評価するために,目的変数を術後運動機能,独立変数をLSA及び術前身体機能評価項目として重回帰分析を行い,危険率5%未満をもって有意とした。
【結果】
10m歩行時間及びTUGを目的変数とした場合,術前評価項目からは有意な独立変数は選ばれなかった。目的変数を退院時術側片脚立位時間とした場合,LSA〔標準化係数(β)=0.459,p<0.01〕,術前術側片脚立位時間〔(β)=0.433,p<0.01〕,目的変数を退院時非術側片脚立位とした場合,術前非術側片脚立位時間〔(β)=0.597,p<0.01〕,LSA〔(β)=0.282,p<0.05〕が有意な独立変数として選ばれた。
【結論】
本研究結果より,術前の生活機能(LSA)及び片脚立位時間は,退院時の術側・非術側片脚立位時間に影響を与えることが示唆された。さらに術前LSAにおいては,術側・非術側を問わず,TKA術後の片脚立位時間に影響を与える因子といえる。片脚立位時間は,転倒の有無に相関を認める(村田ら2005)ことは一般的となってきている。TKA術後のバランス能力予測因子として術前LSAは重要といえる。