[O-MT-01-4] 片側人工膝関節置換術の歩行能力に影響を与える術前因子の検討
Keywords:人工膝関節置換術, 歩行能力, 術前因子
【はじめに,目的】
人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty:以下,TKA)や人工膝関節単顆置換術(Unicompartmental Knee Arthroplasty:以下,UKA)後の歩行能力を予測する術前因子を把握することは,術前理学療法の実施にあたり治療立案の一助となり得る。本研究の目的は,当院にて初回かつ片側のTKAまたはUKAを施行した患者を対象に,退院時の歩行能力に影響を与える術前因子について検討することである。
【方法】
対象は2015年12月~2016年8月の期間,当院にて変形性膝関節症と診断され初回かつ片側のTKAまたはUKAを施行した64名(女性49名,男性15名,TKA 54例,UKA 10例,年齢73.8±5.9歳,身長153.1±8.1cm,体重60.6±11.2kg,BMI 25.8±3.8kg/m2,在院日数25.0±3.7日)とした。除外基準は人工膝関節置換術の既往あるいは認知症を有する者とした。測定は退院日または退院前・前々日に行った。術前因子は,①運動機能評価として,歩行時痛,膝関節伸展関節可動域,膝関節伸展等尺性筋力,片脚立位時間,術前時のTimed Up and Go test(以下,術前TUG),②生活の質(Quality of Life)の評価として,変形性膝関節症患者機能評価尺度(Japanese Knee Osteoarthritis Measure:以下,JKOM),③生活空間の評価として,Life Space Assessment(以下,LSA)を測定した。尚,疼痛評価はNumerical Rating Scale(NRS),筋力評価はハンドヘルドダイナモメーター(Anima社製μ-Tas F1)を使用した。また,術前TUGを除く運動機能項目に関しては,術側と非術側について測定を行った。退院時の歩行能力に影響を与える因子を検討するために,退院時のTUG(以下,退院時TUG)を従属変数,術前因子を独立変数とした重回帰分析を行った。事前にSpearmanの順位相関係数にて有意な相関を認めた変数をステップワイズ法にて投入した。また分散拡大要因(Variance Inflation Factor:以下,VIF)の値を求め,多重共線性を確認した。統計学的解析にはIBM SPSS Statistics ver. 22.0を使用し,有意水準はすべて5%とした。
【結果】
相関分析の結果,退院時TUGは,術側の歩行時痛(r=0.28),術側及び非術側の膝関節伸展筋力(r=-0.29/-0.39),片脚立位時間(r=-0.42/-0.63)に加え,術前TUG(r=0.81),JKOM(r=0.32),LSA(r=-0.28)と有意な相関関係を認めた(p<0.05)。重回帰分析の結果,術前TUG(標準偏回帰係数β:0.43,p<0.01)と非術側片脚立位時間(標準偏回帰係数β:-0.35,p<0.01)が抽出された。VIF値はいずれも1.2であり,多重共線性の問題は生じていないことが確認された。
【結論】
初回かつ片側のTKAまたはUKA後の患者の退院時における歩行能力を予測する術前因子には,術前TUGと非術側片脚立位時間が抽出された。術前時点で歩行能力が高く非術側の片脚立位保持が良好であれば,術後の歩行能力を早期から獲得できることが明らかとなった。
人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty:以下,TKA)や人工膝関節単顆置換術(Unicompartmental Knee Arthroplasty:以下,UKA)後の歩行能力を予測する術前因子を把握することは,術前理学療法の実施にあたり治療立案の一助となり得る。本研究の目的は,当院にて初回かつ片側のTKAまたはUKAを施行した患者を対象に,退院時の歩行能力に影響を与える術前因子について検討することである。
【方法】
対象は2015年12月~2016年8月の期間,当院にて変形性膝関節症と診断され初回かつ片側のTKAまたはUKAを施行した64名(女性49名,男性15名,TKA 54例,UKA 10例,年齢73.8±5.9歳,身長153.1±8.1cm,体重60.6±11.2kg,BMI 25.8±3.8kg/m2,在院日数25.0±3.7日)とした。除外基準は人工膝関節置換術の既往あるいは認知症を有する者とした。測定は退院日または退院前・前々日に行った。術前因子は,①運動機能評価として,歩行時痛,膝関節伸展関節可動域,膝関節伸展等尺性筋力,片脚立位時間,術前時のTimed Up and Go test(以下,術前TUG),②生活の質(Quality of Life)の評価として,変形性膝関節症患者機能評価尺度(Japanese Knee Osteoarthritis Measure:以下,JKOM),③生活空間の評価として,Life Space Assessment(以下,LSA)を測定した。尚,疼痛評価はNumerical Rating Scale(NRS),筋力評価はハンドヘルドダイナモメーター(Anima社製μ-Tas F1)を使用した。また,術前TUGを除く運動機能項目に関しては,術側と非術側について測定を行った。退院時の歩行能力に影響を与える因子を検討するために,退院時のTUG(以下,退院時TUG)を従属変数,術前因子を独立変数とした重回帰分析を行った。事前にSpearmanの順位相関係数にて有意な相関を認めた変数をステップワイズ法にて投入した。また分散拡大要因(Variance Inflation Factor:以下,VIF)の値を求め,多重共線性を確認した。統計学的解析にはIBM SPSS Statistics ver. 22.0を使用し,有意水準はすべて5%とした。
【結果】
相関分析の結果,退院時TUGは,術側の歩行時痛(r=0.28),術側及び非術側の膝関節伸展筋力(r=-0.29/-0.39),片脚立位時間(r=-0.42/-0.63)に加え,術前TUG(r=0.81),JKOM(r=0.32),LSA(r=-0.28)と有意な相関関係を認めた(p<0.05)。重回帰分析の結果,術前TUG(標準偏回帰係数β:0.43,p<0.01)と非術側片脚立位時間(標準偏回帰係数β:-0.35,p<0.01)が抽出された。VIF値はいずれも1.2であり,多重共線性の問題は生じていないことが確認された。
【結論】
初回かつ片側のTKAまたはUKA後の患者の退院時における歩行能力を予測する術前因子には,術前TUGと非術側片脚立位時間が抽出された。術前時点で歩行能力が高く非術側の片脚立位保持が良好であれば,術後の歩行能力を早期から獲得できることが明らかとなった。