[O-MT-02-4] 組み合わせ式人工膝関節二顆置換術(Bicompertmental Knee Arthroplasty)後の運動学的・運動力学的解析
Keywords:人工膝関節二顆置換術, overstuffing, 生体力学
【はじめに,目的】
変形性膝関節症に対する治療の選択肢の一つとして,侵襲が小さく,組織を温存可能な人工膝関節部分置換術が注目されている。しかし,内側単顆置換術と膝蓋大腿関節置換術を組み合わせた二顆置換術(BiKA)術後の生体力学的特徴は十分に解明されていない。本研究の目的は,BiKA術後歩行における運動学的・運動力学的特性と臨床成績に与える影響を明らかにすることである。
【方法】
2011年2月~2013年3月にBiKAを施行した79例中術後1年以降に動作解析を実施した20例20膝(BiKA膝)を対象とした。また,対側膝および健常成人10例20膝(健常膝)を比較対照とした。計測時の疼痛VASは平均10.3%,KSS2011総計は平均128.3±15.5点,Jerkテストは全例陰性で内外側不安定性も認めなかった。これらの症例に対し,光学式モーションキャプチャ技術および逆動力学計算により定常歩行を運動学的および運動力学的に解析した。計測は,赤外線カメラ8台および床反力計2枚からなる三次元動作解析装置により実施された。これら機器の計測周波数は120Hzに設定された。得られたデータはポイントクラスター法に準じ,皮膚のズレにより生じる誤差を最適化法にて最小化した。膝関節座標系はGrood and Suntayの定義に基づいて設定された。さらに,体幹前傾角度が矢状面上の投影角として算出された。また,術前後のCT画像より大腿骨膝蓋溝底部と大腿骨軸の距離を膝蓋溝高(patella groove height,以下PGH)と定義し,術後PGHが増大したものをoverstuffingと定義した。予備研究としてPGH計測の検者内信頼性を検討したところ,級内相関係数ICC(1,1)=0.977(信頼区間:0.801-0.998)であった。統計解析はTukey-Kramer法による多重比較検定,PearsonあるいはSpearmanの相関係数を用い,有意水準は5%に設定された。
【結果】
BiKA膝のキネマティクスは定性的に健常膝と類似していたが,荷重応答期に脛骨が有意に後方偏位していた。股関節伸展モーメントはBiKA膝が健常膝に較べ有意に高値を示した。CT計測で48%の症例に0.5~3.9mmのoverstuffingが認められた。PGHは荷重応答期での脛骨前後並進位置(r=-0.634,p<0.01)およびKSS2011総計(r=-0.610,p<0.01)と負の相関が認められた。一方,関節モーメントはPGHおよび自覚評価と相関を認めなかった。
【結論】
BiKA膝の運動パターンは健常膝と定性的に類似しており,これは全ての主要靭帯を温存し,関節形状の変化が少ない部分置換術の効果と考えられた。BiKA膝においては,外的股屈曲モーメントの増大に拮抗するハムストリング筋活動の増強により,脛骨後方偏位が生じていたものの,PGHが増大した症例では脛骨が前方に偏位していた。PGHは自覚評価とも関連しており,手術に際してoverstuffingに注意すべきと考えられた。また,理学療法介入においては,異常運動および臨床症状の原因を推論する上で,術後画像の評価が肝要であると考えられた。
変形性膝関節症に対する治療の選択肢の一つとして,侵襲が小さく,組織を温存可能な人工膝関節部分置換術が注目されている。しかし,内側単顆置換術と膝蓋大腿関節置換術を組み合わせた二顆置換術(BiKA)術後の生体力学的特徴は十分に解明されていない。本研究の目的は,BiKA術後歩行における運動学的・運動力学的特性と臨床成績に与える影響を明らかにすることである。
【方法】
2011年2月~2013年3月にBiKAを施行した79例中術後1年以降に動作解析を実施した20例20膝(BiKA膝)を対象とした。また,対側膝および健常成人10例20膝(健常膝)を比較対照とした。計測時の疼痛VASは平均10.3%,KSS2011総計は平均128.3±15.5点,Jerkテストは全例陰性で内外側不安定性も認めなかった。これらの症例に対し,光学式モーションキャプチャ技術および逆動力学計算により定常歩行を運動学的および運動力学的に解析した。計測は,赤外線カメラ8台および床反力計2枚からなる三次元動作解析装置により実施された。これら機器の計測周波数は120Hzに設定された。得られたデータはポイントクラスター法に準じ,皮膚のズレにより生じる誤差を最適化法にて最小化した。膝関節座標系はGrood and Suntayの定義に基づいて設定された。さらに,体幹前傾角度が矢状面上の投影角として算出された。また,術前後のCT画像より大腿骨膝蓋溝底部と大腿骨軸の距離を膝蓋溝高(patella groove height,以下PGH)と定義し,術後PGHが増大したものをoverstuffingと定義した。予備研究としてPGH計測の検者内信頼性を検討したところ,級内相関係数ICC(1,1)=0.977(信頼区間:0.801-0.998)であった。統計解析はTukey-Kramer法による多重比較検定,PearsonあるいはSpearmanの相関係数を用い,有意水準は5%に設定された。
【結果】
BiKA膝のキネマティクスは定性的に健常膝と類似していたが,荷重応答期に脛骨が有意に後方偏位していた。股関節伸展モーメントはBiKA膝が健常膝に較べ有意に高値を示した。CT計測で48%の症例に0.5~3.9mmのoverstuffingが認められた。PGHは荷重応答期での脛骨前後並進位置(r=-0.634,p<0.01)およびKSS2011総計(r=-0.610,p<0.01)と負の相関が認められた。一方,関節モーメントはPGHおよび自覚評価と相関を認めなかった。
【結論】
BiKA膝の運動パターンは健常膝と定性的に類似しており,これは全ての主要靭帯を温存し,関節形状の変化が少ない部分置換術の効果と考えられた。BiKA膝においては,外的股屈曲モーメントの増大に拮抗するハムストリング筋活動の増強により,脛骨後方偏位が生じていたものの,PGHが増大した症例では脛骨が前方に偏位していた。PGHは自覚評価とも関連しており,手術に際してoverstuffingに注意すべきと考えられた。また,理学療法介入においては,異常運動および臨床症状の原因を推論する上で,術後画像の評価が肝要であると考えられた。