[O-MT-04-1] 腰椎疾患患者における歩行率向上に影響を与える因子の検討
Keywords:歩行率, JOABPEQ, 腰椎機能障害
【はじめに,目的】
手術適応となる腰椎疾患患者の多くは,何らかの歩行障害を呈しているが,日本整形外科学会腰痛評価質問表(以下JOABPEQ)と歩行特性について検討した報告は少ない。本研究の目的は,JOABPEQで得られた情報を用いて,歩行率の変化に影響を与える因子を検討することである。
【方法】
対象は2013年1月から2016年4月に当院で腰椎疾患に対し手術施行した560名のうち,必要なデータが揃っている159名とした。評価項目は,基本属性(年齢,性別),歩行率,JOABPEQの各項目(疼痛関連障害,腰椎機能障害,歩行機能障害,社会生活障害,心理的障害)とし,術前,退院時の2時点で評価した。尚,歩行率は10m歩行テスト時の歩数を時間(秒)で除した値とした。解析は,歩行率の変化と基本属性及びJOABPEQの各項目の変化値との関係についてspearmanの相関係数を算出した。各変化値は退院時の値から術前の値を引いた値とし,改善幅を示す指標とした。次に従属変数は歩行率の変化,独立変数は年齢,性別,術前から退院時までのJOABPEQの各項目の変化値として重回帰分析を行った。得られた回帰モデルの有意性,適合度,多重共線性はF検定,自由度調整済決定係数,Variance Inflation Factor(VIF)を算出し,確認した。統計ソフトはR version3.2.4 Revisedを用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
全体平均年齢は67.7±14.2歳で,女性45名(28%),男性114名(72%)であった。歩行率の平均(術前,退院時)は(1.82±0.36,1.91±0.30),術前のJOABPEQは中央値(四分位数範囲)で疼痛関連障害43(14-57),腰椎機能障害50(25-75),歩行機能障害44(33-57),社会生活障害21(7-43),心理的障害32(18-51)であった。術前から退院時までの変化値の平均は歩行率(0.09±0.33),疼痛関連障害(22.4±41.2),腰椎機能障害(4.2±30.1),歩行機能障害(20.0±29.5),社会生活障害(8.2±22.2),心理的障害(10.0±17.7)であった。独立変数と従属変数との相関では,腰椎機能障害(rs=0.18,p=0.02),歩行機能障害(rs=0.17,p=0.03),心理的障害(rs=0.24,p<0.01)で有意な相関関係が示された。重回帰分析の結果,歩行率の増加には,腰椎機能障害の改善(偏回帰係数=0.21,p=0.02)が関連した。重回帰モデルの有意性は確認され(p=0.02),自由度調整済決定係数は0.07,VIFは全ての独立変数で2未満を示した。
【結論】
腰椎疾患患者における歩行率増加因子として,JOABPEQにおける腰椎機能障害の改善が挙げられた。腰椎機能障害は動作指導によって改善可能な項目であり,理学療法士介入の効果が期待できる。術前の腰椎機能障害に着目し,その改善に取り組むことで,術後の歩行率を向上できる可能性があることが本研究により示唆された。
手術適応となる腰椎疾患患者の多くは,何らかの歩行障害を呈しているが,日本整形外科学会腰痛評価質問表(以下JOABPEQ)と歩行特性について検討した報告は少ない。本研究の目的は,JOABPEQで得られた情報を用いて,歩行率の変化に影響を与える因子を検討することである。
【方法】
対象は2013年1月から2016年4月に当院で腰椎疾患に対し手術施行した560名のうち,必要なデータが揃っている159名とした。評価項目は,基本属性(年齢,性別),歩行率,JOABPEQの各項目(疼痛関連障害,腰椎機能障害,歩行機能障害,社会生活障害,心理的障害)とし,術前,退院時の2時点で評価した。尚,歩行率は10m歩行テスト時の歩数を時間(秒)で除した値とした。解析は,歩行率の変化と基本属性及びJOABPEQの各項目の変化値との関係についてspearmanの相関係数を算出した。各変化値は退院時の値から術前の値を引いた値とし,改善幅を示す指標とした。次に従属変数は歩行率の変化,独立変数は年齢,性別,術前から退院時までのJOABPEQの各項目の変化値として重回帰分析を行った。得られた回帰モデルの有意性,適合度,多重共線性はF検定,自由度調整済決定係数,Variance Inflation Factor(VIF)を算出し,確認した。統計ソフトはR version3.2.4 Revisedを用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】
全体平均年齢は67.7±14.2歳で,女性45名(28%),男性114名(72%)であった。歩行率の平均(術前,退院時)は(1.82±0.36,1.91±0.30),術前のJOABPEQは中央値(四分位数範囲)で疼痛関連障害43(14-57),腰椎機能障害50(25-75),歩行機能障害44(33-57),社会生活障害21(7-43),心理的障害32(18-51)であった。術前から退院時までの変化値の平均は歩行率(0.09±0.33),疼痛関連障害(22.4±41.2),腰椎機能障害(4.2±30.1),歩行機能障害(20.0±29.5),社会生活障害(8.2±22.2),心理的障害(10.0±17.7)であった。独立変数と従属変数との相関では,腰椎機能障害(rs=0.18,p=0.02),歩行機能障害(rs=0.17,p=0.03),心理的障害(rs=0.24,p<0.01)で有意な相関関係が示された。重回帰分析の結果,歩行率の増加には,腰椎機能障害の改善(偏回帰係数=0.21,p=0.02)が関連した。重回帰モデルの有意性は確認され(p=0.02),自由度調整済決定係数は0.07,VIFは全ての独立変数で2未満を示した。
【結論】
腰椎疾患患者における歩行率増加因子として,JOABPEQにおける腰椎機能障害の改善が挙げられた。腰椎機能障害は動作指導によって改善可能な項目であり,理学療法士介入の効果が期待できる。術前の腰椎機能障害に着目し,その改善に取り組むことで,術後の歩行率を向上できる可能性があることが本研究により示唆された。