[O-MT-04-4] 競泳選手の腰痛とドルフィンキック時の腰椎角度,筋硬度,関節可動域との関連
Keywords:腰痛, 競泳, 筋硬度
【はじめに,目的】
競泳競技としての水泳では障害が発生しやすく,腰痛発生割合は約半数に上るとの報告もある。腰痛発生要因の一つに,競泳中の腰椎の過伸展があり,スタートやターン後に行うドルフィンキック(肩関節を屈曲し,両手を頭上で組み,両下肢を屈伸させる動作,以下DK)は腰椎の過伸展が生じやすい動きと考えられる。DK時の腰椎伸展角度を調べた研究は散見されるが,腰痛者と健常者で腰椎伸展角度を比較した研究は見当たらない。また,DK時にはその姿勢,動作特性から,肩関節周囲筋や股関節屈筋群の硬さにより,DK時の腰椎伸展を増加させ,腰痛につながると考えられるが,腰痛を有する競泳選手と肩関節,股関節周囲筋の筋硬度や関節可動域(ROM)との関連を調べた研究は見当たらない。よって本研究の目的は競泳選手の腰痛とDK時の腰椎伸展角度および肩関節,股関節周囲筋の筋硬度,ROMとの関連を明らかにすることとした。
【方法】
対象は大学水泳部に所属する男子部員で,現時点で競泳時にVASで30mm以上の腰痛があるもの14名(腰痛群:年齢21.9±2.1歳)と腰痛のないもの21名(健常群:年齢20.6±1.5歳)とした。DK時の腰椎角度,股関節角度の評価のために,被験者にはT10,L3,S2の棘突起上,腸骨稜,大転子,大腿骨外側上顆にマーカーを貼付し,全力での水中DKを15m実施させ,その様子を側方から防水処理を施したビデオカメラを用いて撮影した。矢状面上でT10とL3のマーカーを結んだ線と,L3とS2のマーカーを結んだ線とのなす角を腰椎の伸展角度とし,腸骨稜,大転子,大腿骨外側上顆を結んだ線のなす角を股関節角度とした。動画解析ソフトKinovea用い,7.5m地点で股関節最大伸展時の腰椎伸展角度の評価を行い,3試行の平均値を用いた。筋硬度の評価には超音波画像診断装置Aixplorerのせん断波エラストグラフィー機能を用い,座位で肩関節,肘関節を90度屈曲し,内外旋中間位の肢位で,広背筋,大円筋,棘下筋,小円筋を,肩関節外転,肘関節屈曲90度で内外旋中間位の肢位で,大胸筋,小胸筋を,背臥位で腸骨筋,大腰筋を3回測定し,平均値を算出した。ROMの評価はゴニオメーターを用いて股関節伸展,肩関節屈曲を測定した。統計解析はMann-Whitneyの検定を用いて腰痛群,健常群間でDK時の腰椎伸展角度および各筋の筋硬度,ROMを比較した。
【結果】
年齢,身長,体重,競技歴において群間で差はみられなかった。DK時の腰椎伸展角度は腰痛群(23.1±3.1°)が健常群(15.3±2.6°)よりも有意に大きかった。また大腰筋の筋硬度は腰痛群(17.6±4.6kPa)が健常群(13.1±2.6kPa)よりも有意に大きかった。股関節伸展ROMは腰痛群(22.9±7.0°)が健常群(29.3±4.9°)よりも有意に小さかった。その他の項目において群間で有意な差はみられなかった。
【結論】
本研究の結果より,大腰筋の筋硬度の高さ,股関節伸展ROMの小ささが,DK時の腰椎伸展を増加させ,競泳選手の腰痛を生じさせる可能性がある。
競泳競技としての水泳では障害が発生しやすく,腰痛発生割合は約半数に上るとの報告もある。腰痛発生要因の一つに,競泳中の腰椎の過伸展があり,スタートやターン後に行うドルフィンキック(肩関節を屈曲し,両手を頭上で組み,両下肢を屈伸させる動作,以下DK)は腰椎の過伸展が生じやすい動きと考えられる。DK時の腰椎伸展角度を調べた研究は散見されるが,腰痛者と健常者で腰椎伸展角度を比較した研究は見当たらない。また,DK時にはその姿勢,動作特性から,肩関節周囲筋や股関節屈筋群の硬さにより,DK時の腰椎伸展を増加させ,腰痛につながると考えられるが,腰痛を有する競泳選手と肩関節,股関節周囲筋の筋硬度や関節可動域(ROM)との関連を調べた研究は見当たらない。よって本研究の目的は競泳選手の腰痛とDK時の腰椎伸展角度および肩関節,股関節周囲筋の筋硬度,ROMとの関連を明らかにすることとした。
【方法】
対象は大学水泳部に所属する男子部員で,現時点で競泳時にVASで30mm以上の腰痛があるもの14名(腰痛群:年齢21.9±2.1歳)と腰痛のないもの21名(健常群:年齢20.6±1.5歳)とした。DK時の腰椎角度,股関節角度の評価のために,被験者にはT10,L3,S2の棘突起上,腸骨稜,大転子,大腿骨外側上顆にマーカーを貼付し,全力での水中DKを15m実施させ,その様子を側方から防水処理を施したビデオカメラを用いて撮影した。矢状面上でT10とL3のマーカーを結んだ線と,L3とS2のマーカーを結んだ線とのなす角を腰椎の伸展角度とし,腸骨稜,大転子,大腿骨外側上顆を結んだ線のなす角を股関節角度とした。動画解析ソフトKinovea用い,7.5m地点で股関節最大伸展時の腰椎伸展角度の評価を行い,3試行の平均値を用いた。筋硬度の評価には超音波画像診断装置Aixplorerのせん断波エラストグラフィー機能を用い,座位で肩関節,肘関節を90度屈曲し,内外旋中間位の肢位で,広背筋,大円筋,棘下筋,小円筋を,肩関節外転,肘関節屈曲90度で内外旋中間位の肢位で,大胸筋,小胸筋を,背臥位で腸骨筋,大腰筋を3回測定し,平均値を算出した。ROMの評価はゴニオメーターを用いて股関節伸展,肩関節屈曲を測定した。統計解析はMann-Whitneyの検定を用いて腰痛群,健常群間でDK時の腰椎伸展角度および各筋の筋硬度,ROMを比較した。
【結果】
年齢,身長,体重,競技歴において群間で差はみられなかった。DK時の腰椎伸展角度は腰痛群(23.1±3.1°)が健常群(15.3±2.6°)よりも有意に大きかった。また大腰筋の筋硬度は腰痛群(17.6±4.6kPa)が健常群(13.1±2.6kPa)よりも有意に大きかった。股関節伸展ROMは腰痛群(22.9±7.0°)が健常群(29.3±4.9°)よりも有意に小さかった。その他の項目において群間で有意な差はみられなかった。
【結論】
本研究の結果より,大腰筋の筋硬度の高さ,股関節伸展ROMの小ささが,DK時の腰椎伸展を増加させ,競泳選手の腰痛を生じさせる可能性がある。