[O-MT-06-1] 腰痛を有する患者の外来理学療法実施期間に影響を及ぼす因子の検討
Keywords:腰痛, 外来, 治療期間
【はじめに,目的】
平成25年国民生活基礎調査では,腰痛は有訴者率および通院者率で男女とも上位に位置し,理学療法対象患者の中にも腰痛を有する者は多い。近年医療費の高騰が問題視される中,腰痛を有する患者を短期間で治療し社会参加を促していく必要があるが,外来通院が長期間に及ぶ患者が少なくない。また腰痛の遷延,慢性化に関わる要因として心理社会的問題の関与が多数報告されているが,患者の治療期間に着目した報告は乏しい。そこで今回,腰痛を有する患者の外来理学療法実施期間に影響を及ぼす因子を,心理社会的問題も含め明らかにすることを目的に検討を行った。
【方法】
当院外来にて理学療法を実施した腰痛を有する患者のうち,明らかな下肢神経症状,腰椎の骨折・手術の既往,データ欠損,通院困難な者を除いた58名を対象とした。なお,当院では予約制を採用しておらず,基本的に患者の自由意思による通院としている。対象のうち,5ヶ月以上理学療法を実施した者を長期群,5ヶ月未満であった者を短期群とし検討を行った。検討項目は年齢,性別,初診の時点での腰痛持続期間(3ヶ月以上/未満),肩・膝など腰部以外の痛みの有無,腰椎前弯角,腰痛VAS,仕事の有無,医療費の自己負担の有無に加え,日本整形外科学会腰痛評価質問票の疼痛関連障害,腰椎機能障害,歩行機能障害,社会生活障害,心理的障害の各スコアとした。データは全て初診時のカルテ情報,腰椎レントゲン画像より取得し,後方視的に検討を行った。統計解析は,まず2群間の各項目をχ2検定,対応のないt検定,マン・ホイットニーのU検定を用いて比較し,その後理学療法実施期間(長期群/短期群)を従属変数,2群間の比較にて有意差を認めた項目を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析(変数増減法)を行った。有意水準は全て5%とし,統計ソフトはR2.8.1を使用した。
【結果】
長期群は25名(年齢:72.4±10.7),短期群は33名(年齢:71.8±11.1)であった。2群間の比較では,2項目に有意差を認め,長期群の方が腰部以外にも痛みを有する者が多く(p<0.01),初診の時点での腰痛持続期間が長かった(p<0.05)。この2項目を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果,腰部以外の痛みの有無(オッズ比3.82,95%信頼区間:1.12-13.07,p<0.05)のみ有意な変数として選択され(モデルχ2検定p<0.01),初診時に腰部以外にも痛みを訴える者ほど外来理学療実施期間が長期化する傾向が示された。一方で,今回の結果では外来理学療法実施期間と心理社会的問題に関する項目との間に有意な関連は認められなかった。
【結論】
慢性疼痛を有する者は重複した部位に痛みを訴えることも多く,痛みの重複と運動機能の低下が関連するとの報告もなされている。腰部だけではなく,多部位にわたる痛みや機能障害の存在が,長期の介入を必要とする要因の1つとなっていると考えられた。
平成25年国民生活基礎調査では,腰痛は有訴者率および通院者率で男女とも上位に位置し,理学療法対象患者の中にも腰痛を有する者は多い。近年医療費の高騰が問題視される中,腰痛を有する患者を短期間で治療し社会参加を促していく必要があるが,外来通院が長期間に及ぶ患者が少なくない。また腰痛の遷延,慢性化に関わる要因として心理社会的問題の関与が多数報告されているが,患者の治療期間に着目した報告は乏しい。そこで今回,腰痛を有する患者の外来理学療法実施期間に影響を及ぼす因子を,心理社会的問題も含め明らかにすることを目的に検討を行った。
【方法】
当院外来にて理学療法を実施した腰痛を有する患者のうち,明らかな下肢神経症状,腰椎の骨折・手術の既往,データ欠損,通院困難な者を除いた58名を対象とした。なお,当院では予約制を採用しておらず,基本的に患者の自由意思による通院としている。対象のうち,5ヶ月以上理学療法を実施した者を長期群,5ヶ月未満であった者を短期群とし検討を行った。検討項目は年齢,性別,初診の時点での腰痛持続期間(3ヶ月以上/未満),肩・膝など腰部以外の痛みの有無,腰椎前弯角,腰痛VAS,仕事の有無,医療費の自己負担の有無に加え,日本整形外科学会腰痛評価質問票の疼痛関連障害,腰椎機能障害,歩行機能障害,社会生活障害,心理的障害の各スコアとした。データは全て初診時のカルテ情報,腰椎レントゲン画像より取得し,後方視的に検討を行った。統計解析は,まず2群間の各項目をχ2検定,対応のないt検定,マン・ホイットニーのU検定を用いて比較し,その後理学療法実施期間(長期群/短期群)を従属変数,2群間の比較にて有意差を認めた項目を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析(変数増減法)を行った。有意水準は全て5%とし,統計ソフトはR2.8.1を使用した。
【結果】
長期群は25名(年齢:72.4±10.7),短期群は33名(年齢:71.8±11.1)であった。2群間の比較では,2項目に有意差を認め,長期群の方が腰部以外にも痛みを有する者が多く(p<0.01),初診の時点での腰痛持続期間が長かった(p<0.05)。この2項目を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果,腰部以外の痛みの有無(オッズ比3.82,95%信頼区間:1.12-13.07,p<0.05)のみ有意な変数として選択され(モデルχ2検定p<0.01),初診時に腰部以外にも痛みを訴える者ほど外来理学療実施期間が長期化する傾向が示された。一方で,今回の結果では外来理学療法実施期間と心理社会的問題に関する項目との間に有意な関連は認められなかった。
【結論】
慢性疼痛を有する者は重複した部位に痛みを訴えることも多く,痛みの重複と運動機能の低下が関連するとの報告もなされている。腰部だけではなく,多部位にわたる痛みや機能障害の存在が,長期の介入を必要とする要因の1つとなっていると考えられた。