[O-MT-07-3] 右足関節脱臼骨折(L-H分類SER型stageIV)術後に対し軟部組織修復過程を考慮した一症例
―前脛腓靭帯損傷に対し意図的背屈制限を設けた症例―
Keywords:足関節脱臼骨折, L-H分類SER型stageIV, 靭帯損傷
【はじめに】
足関節脱臼骨折のL-H分類SER型stageIVは外在筋腱や靭帯組織に対して早期運動療法にて拘縮を予防し足関節機能改善が求められる一方で,SER型すべてのstageで遠位脛腓靭帯損傷が合併するとされ,組織修復過程早期の伸張ストレスで脛腓間離開による不安定性の残存が危惧される。そのため,前脛腓靭帯の損傷程度を確認し組織修復過程を考慮した術後運動療法が必要となる。今回,L-H分類SER型stageIVの術後,前脛腓靭帯損傷のため組織修復の期間,意図的に背屈可動域獲得を遅延させた運動療法を実施した結果,脛腓間距離が一定に保持でき不安定性なく独歩が獲得できた。靭帯損傷後,組織修復過程を考慮した運動療法の有効性を示す事を目的として若干の考察を加え報告する。
【方法】
症例は30歳代女性である。ボルダリング中に高所から転落して受傷。右足関節脱臼骨折(L-H分類SER型stageIV)と診断され,観血的整復内固定術を施行しギプス固定となる。術後2週でギプス除去,装具着用して退院となる。術後4週で1/3部分荷重が許可され,その後1週ごとに荷重量増加し,術後7週で全荷重許可となる。画像所見にて脛骨後方外側縁~腓骨内側縁距離が受傷後11mm,術直後4mmであった。ギプス固定中は足趾屈筋腱の癒着予防と隣接関節の筋力低下予防を図り,術後2週にてギプスが除去され装具着用となった。評価では背屈-10°/底屈20°,前脛腓靭帯に圧痛(VAS:8)と他動背屈時痛(VAS:8),他動内返し操作で疼痛(VAS:8)が生じていた。術後2週からの運動療法は浮腫管理の徹底と,足趾外在筋腱の癒着予防のため選択的に筋収縮を促し腱の滑走性維持を図った。また,脛腓間離開を防止するため背屈方向への操作は中止し,さらに部分荷重時には踵部補高し底屈位とさせた。術後6週時に前脛腓靭帯の圧痛と他動背屈時痛が消失(VAS:0),他動内返し操作での疼痛も消失(VAS:0)したため組織修復が得られたと判断し,術後6週からは積極的に背屈と外反可動域の改善と7週から全荷重歩行を進めた。
【結果】
術後12週時に背屈18°/底屈45°に改善し,疼痛も消失(VAS:0)した。脛骨後方外側縁~腓骨内側縁距離も4mmで離開なく独歩が可能となった。JOAスコアは86点であった。
【結論】
画像所見により遠位脛腓間の離開が確認できたため,前脛腓靭帯損傷を予測した。靭帯損傷における修復過程は,炎症期,増殖期,成熟期の3期に分けられ受傷後約6週以降で線維芽細胞が減少しコラーゲンが安定・成熟化するとされる。また,脛腓間距離は背屈0°以上で漸増し,荷重によっても有意に延長するとされる。症例においても前脛腓靭帯が成熟,安定を期待し意図的に背屈制限を設けて荷重時は補高による底屈位で実施した結果,術後6週にて前脛腓靭帯の圧痛や動作時痛が消失したため組織修復が得られ脛腓間が安定し術後12週で独歩が安定した。今回,組織修復過程を考慮した運動療法が奏功した一症例を経験した。
足関節脱臼骨折のL-H分類SER型stageIVは外在筋腱や靭帯組織に対して早期運動療法にて拘縮を予防し足関節機能改善が求められる一方で,SER型すべてのstageで遠位脛腓靭帯損傷が合併するとされ,組織修復過程早期の伸張ストレスで脛腓間離開による不安定性の残存が危惧される。そのため,前脛腓靭帯の損傷程度を確認し組織修復過程を考慮した術後運動療法が必要となる。今回,L-H分類SER型stageIVの術後,前脛腓靭帯損傷のため組織修復の期間,意図的に背屈可動域獲得を遅延させた運動療法を実施した結果,脛腓間距離が一定に保持でき不安定性なく独歩が獲得できた。靭帯損傷後,組織修復過程を考慮した運動療法の有効性を示す事を目的として若干の考察を加え報告する。
【方法】
症例は30歳代女性である。ボルダリング中に高所から転落して受傷。右足関節脱臼骨折(L-H分類SER型stageIV)と診断され,観血的整復内固定術を施行しギプス固定となる。術後2週でギプス除去,装具着用して退院となる。術後4週で1/3部分荷重が許可され,その後1週ごとに荷重量増加し,術後7週で全荷重許可となる。画像所見にて脛骨後方外側縁~腓骨内側縁距離が受傷後11mm,術直後4mmであった。ギプス固定中は足趾屈筋腱の癒着予防と隣接関節の筋力低下予防を図り,術後2週にてギプスが除去され装具着用となった。評価では背屈-10°/底屈20°,前脛腓靭帯に圧痛(VAS:8)と他動背屈時痛(VAS:8),他動内返し操作で疼痛(VAS:8)が生じていた。術後2週からの運動療法は浮腫管理の徹底と,足趾外在筋腱の癒着予防のため選択的に筋収縮を促し腱の滑走性維持を図った。また,脛腓間離開を防止するため背屈方向への操作は中止し,さらに部分荷重時には踵部補高し底屈位とさせた。術後6週時に前脛腓靭帯の圧痛と他動背屈時痛が消失(VAS:0),他動内返し操作での疼痛も消失(VAS:0)したため組織修復が得られたと判断し,術後6週からは積極的に背屈と外反可動域の改善と7週から全荷重歩行を進めた。
【結果】
術後12週時に背屈18°/底屈45°に改善し,疼痛も消失(VAS:0)した。脛骨後方外側縁~腓骨内側縁距離も4mmで離開なく独歩が可能となった。JOAスコアは86点であった。
【結論】
画像所見により遠位脛腓間の離開が確認できたため,前脛腓靭帯損傷を予測した。靭帯損傷における修復過程は,炎症期,増殖期,成熟期の3期に分けられ受傷後約6週以降で線維芽細胞が減少しコラーゲンが安定・成熟化するとされる。また,脛腓間距離は背屈0°以上で漸増し,荷重によっても有意に延長するとされる。症例においても前脛腓靭帯が成熟,安定を期待し意図的に背屈制限を設けて荷重時は補高による底屈位で実施した結果,術後6週にて前脛腓靭帯の圧痛や動作時痛が消失したため組織修復が得られ脛腓間が安定し術後12週で独歩が安定した。今回,組織修復過程を考慮した運動療法が奏功した一症例を経験した。