[O-MT-09-1] 変形性膝関節症患者における歩行予備能に影響を与える要因
Keywords:変形性膝関節症, TUG, 予備能
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(膝OA)は,60歳以上では人口の80%以上になんらかのX線学的関節症変化が出現し,約10%が日常生活に支障を来たしているとされている。平成25年の国民生活基礎調査では,要支援となる原因は膝OA等の関節疾患が20.7%と最も多くなっており,膝OAの進行に伴い日常生活動作(ADL)において制限が生じてくる。ADLに制限が生じていると,日常から最大機能に近い機能を発揮する状態となりADL遂行に努力を要す。このような状態は予備能が低いと定義され,安全・安楽なADLを獲得するためには予備能が確保されている必要がある。特にADLにおいて主要な歩行機能は生活範囲の制限とも関連が高い。本研究では,膝OA患者の歩行予備能に影響を与える要因について検討した。
【方法】
対象はTKAおよびUKA施行予定の術前膝OA患者535例(年齢75.0±7.2歳,男性105例,女性430例)とし,10施設の協力を得て実施した。予備能は最大機能に対する至適機能の差とされており,本研究では歩行予備能としてTimed Up and Go test(TUG)を用いて,至適TUG(TUGcom)と最大TUG(TUGmax)からTUG Reserve(TUG-R)を求めた。TUG-Rは橋立らの方法に従い下記の式に基づき算出した。
TUG-R=〔(TUGcom-TUGmax)/TUGmax〕×100/TUGmax
統計学的解析はTUG-Rを従属変数とし,調査項目(年齢,性別,BMI,運動歴の有無,KL分類,障害側)と測定項目(安静時痛,術側・非術側膝屈曲/伸展ROM,術側・非術側膝屈曲/伸展筋力)から,単変量解析にてp<0.20であった変数を独立変数として選択した。重回帰分析ではステップワイズ法により変数選択を行い,調査項目を交絡因子として強制投入して調整を行った。また,TUG-RとADLとの関連を検討するためJKOM,APDLとの相関分析も行った。有意水準は両側5%とした。
【結果】
重回帰分析の結果(p<0.00,R2=0.17),TUG-Rに影響する因子として非術側膝伸展筋力が抽出された。また,交絡因子では年齢(p<0.00,β=-0.19)と性別(p<0.00,β=0.14),BMI(p=0.04,β=-0.08),OA重症度(p=0.03,β=-0.09)に有意性が認められた。相関分析はJKOM(r=-0.25),APDL(r=0.20)と有意な相関を認めた。なお,TUG-Rの平均は2.6±1.8であり,TUGcomは14.8±6.6秒,TUGmaxは11.8±5.5秒であった。
【結論】
本研究の結果,膝OA患者の歩行予備能は非術側膝伸展筋力が高いほど有意に高いことが示された。また,男性であり,年齢が若く,BMIが低値,OA重症度が低いほど高いことも示された。一方,OA重症度の高い高齢の肥満女性では歩行予備能低下が危惧されることも明らかとなった。さらに,JKOM,APDLにはTUG-Rとの相関が認められ,先行研究と同様に歩行予備能とADLには関連があることが示された。本研究は膝OA患者のADLに関連する歩行予備能の要因を明らかにすることができ,今後の理学療法を展開する上での一助になると考える。
変形性膝関節症(膝OA)は,60歳以上では人口の80%以上になんらかのX線学的関節症変化が出現し,約10%が日常生活に支障を来たしているとされている。平成25年の国民生活基礎調査では,要支援となる原因は膝OA等の関節疾患が20.7%と最も多くなっており,膝OAの進行に伴い日常生活動作(ADL)において制限が生じてくる。ADLに制限が生じていると,日常から最大機能に近い機能を発揮する状態となりADL遂行に努力を要す。このような状態は予備能が低いと定義され,安全・安楽なADLを獲得するためには予備能が確保されている必要がある。特にADLにおいて主要な歩行機能は生活範囲の制限とも関連が高い。本研究では,膝OA患者の歩行予備能に影響を与える要因について検討した。
【方法】
対象はTKAおよびUKA施行予定の術前膝OA患者535例(年齢75.0±7.2歳,男性105例,女性430例)とし,10施設の協力を得て実施した。予備能は最大機能に対する至適機能の差とされており,本研究では歩行予備能としてTimed Up and Go test(TUG)を用いて,至適TUG(TUGcom)と最大TUG(TUGmax)からTUG Reserve(TUG-R)を求めた。TUG-Rは橋立らの方法に従い下記の式に基づき算出した。
TUG-R=〔(TUGcom-TUGmax)/TUGmax〕×100/TUGmax
統計学的解析はTUG-Rを従属変数とし,調査項目(年齢,性別,BMI,運動歴の有無,KL分類,障害側)と測定項目(安静時痛,術側・非術側膝屈曲/伸展ROM,術側・非術側膝屈曲/伸展筋力)から,単変量解析にてp<0.20であった変数を独立変数として選択した。重回帰分析ではステップワイズ法により変数選択を行い,調査項目を交絡因子として強制投入して調整を行った。また,TUG-RとADLとの関連を検討するためJKOM,APDLとの相関分析も行った。有意水準は両側5%とした。
【結果】
重回帰分析の結果(p<0.00,R2=0.17),TUG-Rに影響する因子として非術側膝伸展筋力が抽出された。また,交絡因子では年齢(p<0.00,β=-0.19)と性別(p<0.00,β=0.14),BMI(p=0.04,β=-0.08),OA重症度(p=0.03,β=-0.09)に有意性が認められた。相関分析はJKOM(r=-0.25),APDL(r=0.20)と有意な相関を認めた。なお,TUG-Rの平均は2.6±1.8であり,TUGcomは14.8±6.6秒,TUGmaxは11.8±5.5秒であった。
【結論】
本研究の結果,膝OA患者の歩行予備能は非術側膝伸展筋力が高いほど有意に高いことが示された。また,男性であり,年齢が若く,BMIが低値,OA重症度が低いほど高いことも示された。一方,OA重症度の高い高齢の肥満女性では歩行予備能低下が危惧されることも明らかとなった。さらに,JKOM,APDLにはTUG-Rとの相関が認められ,先行研究と同様に歩行予備能とADLには関連があることが示された。本研究は膝OA患者のADLに関連する歩行予備能の要因を明らかにすることができ,今後の理学療法を展開する上での一助になると考える。