[O-MT-09-4] 変形性膝関節症患者におけるFTAの増大に伴うLateral Thrust量の評価についての報告
Keywords:変形性膝関節症, FTA, Lateral Thrust
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(以下膝OA)は,高齢者において最も頻度の高い膝関節疾患であり,超高齢社会のわが国において,医療経済の観点からも重大な問題となっている。内反膝OAにおける膝関節運動力学的負荷の指標としてLateral Thrust(以下LT)があり,発症や進行との関連性が示唆されている。また,LTの関連因子として,膝OA gradeの程度,FTAの大きさ,膝関節伸展制限,膝関節伸展筋力低下の減少が報告されている。しかし,LTを視診にて評価している報告が多く,LTの程度を検討した報告は少ない。そこで今回は,三軸加速度計を使用して膝OAの歩行を評価し,FTAの大きさとLTの相関について検討したため報告する。
【方法】
対象は,両側膝OA16名32肢(膝OA gradeIV,年齢74.9±6.4,全例女性,身長147.9±6.0cm,体重60.0±11.0kg,FTA188.2±4.8°)とした。三軸加速度計は,両側の腓骨頭に専用ベルトにて装着した。課題は助走路と減速路2mずつ設けた14m直線歩行路を独歩にて快適速度で行った。歩行中の加速度データは,加速期と減速期の影響を考慮して,歩き始めの2歩と終わりの2歩を除いた。三軸加速度計から得られたデータよりInitial Contact後の膝外側動揺性であるLTを示す膝外側加速度ピーク値(以下ピーク値)(G),歩行の安定性を示す歩行周期変動(以下CV)(%),歩行周期中の動揺性を示すRoot Mean Square(以下RMS)(m/s2)を算出し,FTAとの相関係数と有意差を求めた。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
ピーク値は0.68±0.27,r=0.246,CVは2.72±1.03,r=0.123,RMSの左右方向では0.25±0.14,r=0.206,前後方向では0.37±0.15,r=0.031,上下方向では0.37±0.15,r=0.182であり,有意差は認められなかった。
【結論】
Mundermannらは膝OA gradeに分けて検討し,末期膝OAであるgradeIII,IVでは初期膝OAであるgradeI,IIに比べて内反モーメントのピーク値が大きい事を示している。また,松尾らは三次元動作分析装置を使用してLT量を測定し,膝OAの進行に伴って増加したことを示している。しかし,本研究結果からでは,FTAの増大に伴うLTの程度を示すピーク値と左右方向でのRMSとの相関は認められなかった。当院にて行った健常成人との比較では有意に増加を認めたが,関節構成要素が破綻している膝OA gradeIVでは個体差が大きいため,先行研究とは相反する結果になったと考える。今後は症例の幅を膝OA gradeI~IIIなども含め,膝OAの発症や進行の予防だけでなく,手術療法後の介入にも繋がる根拠に基づく理学療法を提供するために,より詳細な動作様式を把握する必要がある。
変形性膝関節症(以下膝OA)は,高齢者において最も頻度の高い膝関節疾患であり,超高齢社会のわが国において,医療経済の観点からも重大な問題となっている。内反膝OAにおける膝関節運動力学的負荷の指標としてLateral Thrust(以下LT)があり,発症や進行との関連性が示唆されている。また,LTの関連因子として,膝OA gradeの程度,FTAの大きさ,膝関節伸展制限,膝関節伸展筋力低下の減少が報告されている。しかし,LTを視診にて評価している報告が多く,LTの程度を検討した報告は少ない。そこで今回は,三軸加速度計を使用して膝OAの歩行を評価し,FTAの大きさとLTの相関について検討したため報告する。
【方法】
対象は,両側膝OA16名32肢(膝OA gradeIV,年齢74.9±6.4,全例女性,身長147.9±6.0cm,体重60.0±11.0kg,FTA188.2±4.8°)とした。三軸加速度計は,両側の腓骨頭に専用ベルトにて装着した。課題は助走路と減速路2mずつ設けた14m直線歩行路を独歩にて快適速度で行った。歩行中の加速度データは,加速期と減速期の影響を考慮して,歩き始めの2歩と終わりの2歩を除いた。三軸加速度計から得られたデータよりInitial Contact後の膝外側動揺性であるLTを示す膝外側加速度ピーク値(以下ピーク値)(G),歩行の安定性を示す歩行周期変動(以下CV)(%),歩行周期中の動揺性を示すRoot Mean Square(以下RMS)(m/s2)を算出し,FTAとの相関係数と有意差を求めた。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】
ピーク値は0.68±0.27,r=0.246,CVは2.72±1.03,r=0.123,RMSの左右方向では0.25±0.14,r=0.206,前後方向では0.37±0.15,r=0.031,上下方向では0.37±0.15,r=0.182であり,有意差は認められなかった。
【結論】
Mundermannらは膝OA gradeに分けて検討し,末期膝OAであるgradeIII,IVでは初期膝OAであるgradeI,IIに比べて内反モーメントのピーク値が大きい事を示している。また,松尾らは三次元動作分析装置を使用してLT量を測定し,膝OAの進行に伴って増加したことを示している。しかし,本研究結果からでは,FTAの増大に伴うLTの程度を示すピーク値と左右方向でのRMSとの相関は認められなかった。当院にて行った健常成人との比較では有意に増加を認めたが,関節構成要素が破綻している膝OA gradeIVでは個体差が大きいため,先行研究とは相反する結果になったと考える。今後は症例の幅を膝OA gradeI~IIIなども含め,膝OAの発症や進行の予防だけでなく,手術療法後の介入にも繋がる根拠に基づく理学療法を提供するために,より詳細な動作様式を把握する必要がある。