[O-MT-10-2] 人工膝関節全置換術患者における身体能力の推移
Keywords:人工膝関節全置換術, 身体能力, 縦断研究
【目的】
我々は,人工膝関節全置換術(以下TKA)施行前後の膝関節屈曲・伸展筋力や関節可動域などの身体機能面の経時的変化について報告してきた。しかしながら,本邦におけるTKA施行前後の身体能力の推移については,多施設間でのデータ蓄積による報告や縦断研究での報告が少なく,目の前の患者がどのような経過を辿るのかが明確になっているとは言い難い。そこで,本研究ではTKA施行前後の身体能力面における経時的推移を示すことを目的とする。
【方法】
対象は2010年4月から2015年8月までに4病院でTKAを施行し,術前,術後3週,術後8週,術後12週の4時期全てで5m歩行時間,Timed Up&Go Test(以下TUG),Quick Squat Test(以下QST)を評価している症例とした。それぞれの症例数と平均年齢は,5m歩行時間で219膝,72.9±7.9歳,TUGで214膝,72.7±7.9歳,QSTで176膝,73.8±7.9歳であった。上記の評価項目について4時期における推移を一元配置分散分析にて統計解析した(SPSS Ver.19)。なお,QSTとは我々が独自に用いている評価法であり,膝関節屈曲60°までのスクワットを10秒間に出来るだけ早く行い,その回数を評価するものである。
【結果】
各評価項目における平均値の推移を,術前,術後3週,術後8週,術後12週の順に示す。5m歩行時間(秒)は5.0±2.0,6.1±2.9,4.6±1.6,4.2±1.6,TUG(秒)は12.2±5.3,14.8±8.1,10.9±4.1,10.3±4.8,QST(回)は9.3±3.2,9.1±3.3,10.6±3.3,11.5±3.1であった。各評価項目とも術前と術後12週,術後3週と術後8週・12週との間に有意差が認められ,術後8週と術後12週の間には有意差は認められなかった。また,5m歩行時間とTUGでは術前と術後3週に有意差が認められた。
【結論】
QSTは伸長-短縮サイクル(stretch-shortening cycle以下SSC)運動であり,SSC運動はスポーツ選手の投擲動作時やジャンプ施行時から健常者の通常歩行時まで幅広い動作において認められている。我々はこれまでTKA患者のQST回数と歩行速度やTUGにおいて相関が認められたことを報告しており,QSTが動作能力を反映すると考えている。今回の結果から,術前よりも術後3週は低下傾向を示すも,術後8週間経過すれば術前よりも改善傾向を示し,術後12週経過すれば術前よりも改善するというTKA患者の短期的な身体能力の推移が示された。この結果は,これまでに報告してきた身体機能面の回復過程とほぼ同様の経過を示した。そして,術後8週と術後12週の間に有意差が認められなかったことから,術後12週間経過すれば身体能力面は概ねプラトーに達する可能性が示唆された。術前や術直後の患者は,手術に対する期待と共に不安感や術直後の強い疼痛から,今後どのような経過を辿るのか疑問や不安を持つことも少なくない。そのような患者を前に,臨床から生まれたデータを基に身体能力の推移を提示し,患者に還元することは意義のあることと考える。
我々は,人工膝関節全置換術(以下TKA)施行前後の膝関節屈曲・伸展筋力や関節可動域などの身体機能面の経時的変化について報告してきた。しかしながら,本邦におけるTKA施行前後の身体能力の推移については,多施設間でのデータ蓄積による報告や縦断研究での報告が少なく,目の前の患者がどのような経過を辿るのかが明確になっているとは言い難い。そこで,本研究ではTKA施行前後の身体能力面における経時的推移を示すことを目的とする。
【方法】
対象は2010年4月から2015年8月までに4病院でTKAを施行し,術前,術後3週,術後8週,術後12週の4時期全てで5m歩行時間,Timed Up&Go Test(以下TUG),Quick Squat Test(以下QST)を評価している症例とした。それぞれの症例数と平均年齢は,5m歩行時間で219膝,72.9±7.9歳,TUGで214膝,72.7±7.9歳,QSTで176膝,73.8±7.9歳であった。上記の評価項目について4時期における推移を一元配置分散分析にて統計解析した(SPSS Ver.19)。なお,QSTとは我々が独自に用いている評価法であり,膝関節屈曲60°までのスクワットを10秒間に出来るだけ早く行い,その回数を評価するものである。
【結果】
各評価項目における平均値の推移を,術前,術後3週,術後8週,術後12週の順に示す。5m歩行時間(秒)は5.0±2.0,6.1±2.9,4.6±1.6,4.2±1.6,TUG(秒)は12.2±5.3,14.8±8.1,10.9±4.1,10.3±4.8,QST(回)は9.3±3.2,9.1±3.3,10.6±3.3,11.5±3.1であった。各評価項目とも術前と術後12週,術後3週と術後8週・12週との間に有意差が認められ,術後8週と術後12週の間には有意差は認められなかった。また,5m歩行時間とTUGでは術前と術後3週に有意差が認められた。
【結論】
QSTは伸長-短縮サイクル(stretch-shortening cycle以下SSC)運動であり,SSC運動はスポーツ選手の投擲動作時やジャンプ施行時から健常者の通常歩行時まで幅広い動作において認められている。我々はこれまでTKA患者のQST回数と歩行速度やTUGにおいて相関が認められたことを報告しており,QSTが動作能力を反映すると考えている。今回の結果から,術前よりも術後3週は低下傾向を示すも,術後8週間経過すれば術前よりも改善傾向を示し,術後12週経過すれば術前よりも改善するというTKA患者の短期的な身体能力の推移が示された。この結果は,これまでに報告してきた身体機能面の回復過程とほぼ同様の経過を示した。そして,術後8週と術後12週の間に有意差が認められなかったことから,術後12週間経過すれば身体能力面は概ねプラトーに達する可能性が示唆された。術前や術直後の患者は,手術に対する期待と共に不安感や術直後の強い疼痛から,今後どのような経過を辿るのか疑問や不安を持つことも少なくない。そのような患者を前に,臨床から生まれたデータを基に身体能力の推移を提示し,患者に還元することは意義のあることと考える。