The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » 口述発表

[O-MT-10] 口述演題(運動器)10

Sat. May 13, 2017 2:10 PM - 3:10 PM B4会場 (東京ベイ幕張ホール No. 8・9)

座長:葉 清規(医療法人社団おると会浜脇整形外科リハビリセンターリハビリテーション科)

日本運動器理学療法学会

[O-MT-10-5] 末期変形性膝関節症患者における手段的日常生活動作の低下を歩行速度から予測する

小林 裕生1, 廣瀬 和仁1, 板東 正記1, 藤岡 修司1, 田中 聡2, 加地 良雄1,3, 山本 哲司1,3 (1.香川大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.県立広島大学保健福祉学部理学療法学科, 3.香川大学医学部整形外科)

Keywords:変形性膝関節症, 予後予測, 歩行速度

【はじめに,目的】

関節疾患は,高齢者が要支援に至る要因として最も割合が高い。特に下肢の関節疾患は,移動能力の低下をきたすため変形性膝関節症(膝OA)は,健康寿命に影響を及ぼす疾患である。したがって,膝OA患者の機能低下の予防や予測を行うことは重要である。生活空間が制限されると活動性や身体機能の低下をもたらし,健康悪化の可能性があるといわれている。Life Space Assessment(LSA)は,身体活動性を生活空間で評価でき,健康悪化を予測する初期の指標である。末期膝OA患者の手段的日常生活動作(IADL)の低下とLSAには関係性があり,カットオフ値は56点と報告されている。歩行速度と機能低下の関係は多く報告されているが,LSAを予後予測のアウトカムとし,対象を末期膝OA患者に限定して調査されたものはない。さらに,簡便に評価ができる歩行速度は活動制約に関連する有用な指標であり,歩行速度から予後予測することは意義があると考える。本研究の目的はLSA56点を基準に末期膝OA患者を群分けし,歩行速度と身体活動量を比較すること,IADLの低下を予測する歩行速度のカットオフ値を求めることとした。

【方法】

対象は末期膝OA患者40名(年齢74.2歳±6.9,BMI26.2±3.6kg/m2,男性12名,女性28名,KL分類:GradeIII7名,GradeIV33名)であった。測定項目は,10m歩行テスト,身体活動量の評価としてInternational Physical Activity Questionnaire-short version(IPAQ-sv)とLSAを使用した。10m歩行テストは独歩,通常歩行速度で2回測定し平均時間より歩行速度(m/min)を算出した。IPAQ-svは,質問紙より1週間の平均運動消費エネルギー(kcal)を求めた。LSAは0~120点で評価され,得点が高いと活動性が高い(生活空間が広い)ことを示す。また,対象者をA群(LSA<56点,IADL低下リスク有),B群(LSA>56点,IADL低下リスクなし)の2群に分類した。統計学的解析として,両群における歩行速度とIPAQ-svの比較に2標本t検定,Mann-Whitney検定を使用した。さらに,歩行速度とLSAの得点とのROC解析を行い,IADLの低下を予測する歩行速度のカットオフ値を算出した。いずれも有意水準は5%とした。

【結果】

本研究では,A群10名,B群30名であった。群間比較の結果,歩行速度(m/min)はA群49.5±13.8,B群59.5±12.5で有意差をみとめた(p=0.04)。IPAQ-sv(kcal)はA群326.3±639.3,B群4404.7±6426.8であり有意差をみとめた(p<0.01)。ROC解析の結果,歩行速度のカットオフ値は54.2m/min(AUC:0.72,p=0.02),感度63.3%,特異度80.0%,陽性尤度比3.1,陰性尤度比0.4であった。

【結論】

本研究の結果,生活空間が狭いと歩行速度は遅く,身体活動量が少ないことが明らかとなった。歩行速度52.4m/minは末期膝OA患者におけるIADLの低下を予測するための有用な指標になることが示唆され,対象者の特性を考慮した理学療法介入や社会参加の提案の一助になると考える。