[O-MT-11-1] リバース型人工肩関節全置換術における結髪動作と肩関節機能について
Keywords:リバース型人工肩関節全置換術, 肩関節機能, 結髪動作
【はじめに】
リバース型人工肩関節全置換術(以下,RSA)は,主に広範囲腱板断裂の修復不能例や修復術後の再断裂例に対する外科的治療法として,2014年から本邦にも導入された。RSAは肩甲上腕関節の凹凸形状により三角筋の張力とモーメントアームが増加することで,腱板機能が消失しても三角筋機能により上肢の挙上運動が可能となる。しかし,外旋機能が低下することも報告されており,結髪動作など外旋運動が必要とされる日常生活動作に影響することが考えられる。本研究の目的は,RSA術後における結髪動作について調査し,結髪動作に必要な肩関節機能を検討することである。
【方法】
対象はRSAを施行された18例18肩(男性8例,女性10例:平均年齢75.1±5.7歳)で,基礎疾患は広範囲腱板断裂であった。評価時期はRSA術後1年とし,結髪動作の評価指標は「手を頭の後ろにし,肘を前後に動かす」ことが良好な群(以下;G群)と不良な群(以下;P群)に分類した。肩関節機能の評価項目は自動可動域(屈曲・外転・下垂位外旋・外転90°位外旋),他動可動域(屈曲・外転・下垂位外旋・外転90°位外旋),肩関節筋力(屈曲・外転・下垂位外旋・外転90°位外旋)とした。両群における各評価値の比較はマン・ホイットニーのU検定を用いた。なお,有意水準は5%未満とした。
【結果】
G群は10名(男性5名,女性5名),P群は8名(男3名,女性5名)で両群の年齢・身長・体重に有意な差はなかった。肩関節機能は,自動可動域において屈曲がG群121.5±14.8°・P群86.4±25.6°,外転がG群119.0±21.4°・P群76.4±24.1°,下垂位外旋がG群26.0±10.1°・P群10.0±6.5°,外転90°位外旋がG群28.5±20.3°・P群5.5±11.1°とG群の方が有意に高かった(p<0.05)。他動可動域および筋力値に有意な差はなかった。
【考察】
結髪動作獲得について,中村らは腱板断裂や拘縮肩の症例において屈曲129.1°・外転111.2°・下垂位外旋20.0°・外転90°位外旋51.0°の自動可動域が必要と報告している。本研究においてもG群で同程度の自動可動域が示されたが,外転90°位外旋に関してはRSA症例が低値であり,肩甲胸郭関節などの代償機能によって補っている可能性が考えられる。また,両群に他動可動域および筋力値に差がみられなかったことから,自動可動域の制限要因について更なる検討が必要と考える。
【結論】
結髪動作が良好な群と不良な群の肩関節機能について比較を行った。RSA術後症例においては,屈曲・外転・外旋の自動可動域が結髪動作獲得に必要であることが示唆された。特に,外転90°位外旋の自動可動域では肩甲胸郭関節などの代償機能が考えられ,自動可動域の制限要因を含め,今後更なる検討が必要と考える。
リバース型人工肩関節全置換術(以下,RSA)は,主に広範囲腱板断裂の修復不能例や修復術後の再断裂例に対する外科的治療法として,2014年から本邦にも導入された。RSAは肩甲上腕関節の凹凸形状により三角筋の張力とモーメントアームが増加することで,腱板機能が消失しても三角筋機能により上肢の挙上運動が可能となる。しかし,外旋機能が低下することも報告されており,結髪動作など外旋運動が必要とされる日常生活動作に影響することが考えられる。本研究の目的は,RSA術後における結髪動作について調査し,結髪動作に必要な肩関節機能を検討することである。
【方法】
対象はRSAを施行された18例18肩(男性8例,女性10例:平均年齢75.1±5.7歳)で,基礎疾患は広範囲腱板断裂であった。評価時期はRSA術後1年とし,結髪動作の評価指標は「手を頭の後ろにし,肘を前後に動かす」ことが良好な群(以下;G群)と不良な群(以下;P群)に分類した。肩関節機能の評価項目は自動可動域(屈曲・外転・下垂位外旋・外転90°位外旋),他動可動域(屈曲・外転・下垂位外旋・外転90°位外旋),肩関節筋力(屈曲・外転・下垂位外旋・外転90°位外旋)とした。両群における各評価値の比較はマン・ホイットニーのU検定を用いた。なお,有意水準は5%未満とした。
【結果】
G群は10名(男性5名,女性5名),P群は8名(男3名,女性5名)で両群の年齢・身長・体重に有意な差はなかった。肩関節機能は,自動可動域において屈曲がG群121.5±14.8°・P群86.4±25.6°,外転がG群119.0±21.4°・P群76.4±24.1°,下垂位外旋がG群26.0±10.1°・P群10.0±6.5°,外転90°位外旋がG群28.5±20.3°・P群5.5±11.1°とG群の方が有意に高かった(p<0.05)。他動可動域および筋力値に有意な差はなかった。
【考察】
結髪動作獲得について,中村らは腱板断裂や拘縮肩の症例において屈曲129.1°・外転111.2°・下垂位外旋20.0°・外転90°位外旋51.0°の自動可動域が必要と報告している。本研究においてもG群で同程度の自動可動域が示されたが,外転90°位外旋に関してはRSA症例が低値であり,肩甲胸郭関節などの代償機能によって補っている可能性が考えられる。また,両群に他動可動域および筋力値に差がみられなかったことから,自動可動域の制限要因について更なる検討が必要と考える。
【結論】
結髪動作が良好な群と不良な群の肩関節機能について比較を行った。RSA術後症例においては,屈曲・外転・外旋の自動可動域が結髪動作獲得に必要であることが示唆された。特に,外転90°位外旋の自動可動域では肩甲胸郭関節などの代償機能が考えられ,自動可動域の制限要因を含め,今後更なる検討が必要と考える。