第52回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会 » 口述発表

[O-MT-11] 口述演題(運動器)11

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 B4会場 (東京ベイ幕張ホール No. 8・9)

座長:村木 孝行(東北大学病院リハビリテーション部)

日本運動器理学療法学会

[O-MT-11-3] 腱板断裂術後3ヶ月のshoulder36が術後経過に与える影響

中嶋 良介1, 有阪 芳乃1, 川井 誉清1, 荻野 修平2, 村田 亮2, 石毛 徳之2 (1.松戸整形外科病院リハビリテーションセンター, 2.松戸整形外科病院MD)

キーワード:腱板断裂, shoulder36, 術後経過

【はじめに,目的】

腱板断裂術後の経過は術前の日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(以下,JOA score)との関連などが報告されている。近年,患者立脚型肩関節評価法Shoulder36 V1.3(以下,Sh36)の有用性が報告され,普及してきているが,客観的評価と主観的評価の関連に留まり,Sh36良好となった例と術後経過の関連を述べている研究は少ない。そこで本研究の目的は,鏡視下骨孔腱板修復術後の主観的評価の違いが術後経過へ影響を及ぼすか検討することとした。


【方法】

対象は2014年3月から2016年5月までに当院を受診し,当院肩専門医より腱板断裂と診断され,鏡視下骨孔腱板修復術を施行し,術後1年経過観察可能であった113例(男性57例,女性56例)とした。年齢は66.4±8.6歳であった。再断裂例および大断裂,広範囲断裂例は対象から除外した。当院ではJOA score,Sh36共に術前,術後3ヶ月,術後6ヶ月,術後1年で取得している。術後3ヶ月時点でのSh36において,スポーツ項目を除いた,疼痛,可動域,筋力,健康感,日常生活機能の5項目34設問がすべて3以上であるものを良好群とし,1つでも3未満の設問があった場合は困難群と定義し群分けを行った。2群間における術後経過の比較にはJOA scoreを用いて検討を行った。JOA scoreはX線所見評価,関節安定性評価を除いた80点満点で評価した。統計学的検討にはSPSSを用い,良好群,困難群の術後6ヶ月,術後1年時のJOA scoreに対し二元配置分散分析にて解析を行った。有意水準は5%とした。


【結果】

良好群は35名,困難群は78名であった。JOA scoreは良好群において術後3ヶ月では54.3点,術後6ヶ月では67.1点,術後1年では73.8点であった。困難群においては術後3ヶ月では43.7点,術後6ヶ月では60.5点,術後1年では71.6点であった。また,術前JOA scoreは良好群51.1点,困難群48点となり2群間に有意差は認められなかった。また,良好群,困難群の術後経過には交互作用が認められた(P<0.05)。


【結論】

腱板断裂術後の術後経過は断裂サイズや術前JOA scoreに影響されると報告されているが,本研究の結果より,術後3ヶ月時点でのSh36は術後経過に何らかの影響を及ぼすことが示唆された。術後3ヶ月に主観的評価であるSh36を改善することが術後経過に良好な影響を与える要因になる可能性があると考える。中野らは腱板断裂術前患者において,Sh36の評価の有用性について報告している。本研究の結果より,腱板断裂術後3ヶ月においてもSh36は有用な評価である可能性が示唆された。可動域や筋力などの客観的な指標に加え,術後3ヶ月までに患者が主観的に「やや困難であるができる」と感じる程度まで回復できるよう,術後早期の理学療法を進めていく必要性があることも示唆された。また,今後は術後3ヶ月でSh36が良好となるようなアプローチ・介入方法などの考案も課題として挙げられると考える。