第52回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会 » 口述発表

[O-MT-12] 口述演題(運動器)12

2017年5月13日(土) 16:50 〜 17:50 A6会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室303)

座長:東 裕一(高木病院リハビリテーション部)

日本運動器理学療法学会

[O-MT-12-4] 妊娠後期の骨盤底筋障害と身体活動量の関係

廣瀬 綾1, 原田 佳奈1, 安田 真理子1, 山下 真人1, 松本 大輔2, 欅 篤3 (1.社会医療法人愛仁会高槻病院技術部リハビリテーション科, 2.畿央大学健康科学部理学療法学科, 3.社会医療法人愛仁会高槻病院診療部リハビリテーション科)

キーワード:骨盤底筋障害, PFDI-20, 身体活動量

【はじめに,目的】骨盤底筋障害は,妊娠・出産や加齢に伴い骨盤底筋群が脆弱化することで惹起されると言われている。中でも近年女性の腹圧性尿失禁は増加傾向であり,その多くは妊娠中及び出産後に発症し,一旦消失しても再発しやすく一部は慢性化すると言われている。長島らによると,妊娠初期,30週,37週すべてにおいて尿失禁有無別に歩数を比較したところ,尿失禁有群で有意に少ないと報告されている。またアメリカ産婦人科学会運動ガイドラインでは,妊娠中および産後に少なくとも20~30分の中等度の運動をほぼ毎日行うことを推奨している。

今回妊娠後期の骨盤底筋障害と妊娠前・妊娠後期の身体活動量との関係性を調査し,今後の理学療法介入における一助とすることとした。


【方法】対象は,2016年6~9月に当院マザークラス(産前母親教室)の参加者で妊娠30~38週の妊婦63名(経産婦9名,平均年齢33.0±5.3歳,妊娠前BMI20.5±3.0,妊娠後体重増加量7.5±3.1kg)とした。調査項目は,骨盤底筋障害はPelvic Floor Distress Inventory-20(PFDI-20)日本語版,身体活動量はIPAQ日本語版を用い妊娠前と妊娠後期について調査した。PFDI-20は骨盤底筋障害の自覚症状についての質問紙で,骨盤臓器脱症状6項目,結腸-直腸肛門障害症状8項目,下部尿路機能障害症状6項目の合計20項目で構成されている。また調査実施日前後1週間以内の胎児体重2064±468.4g,頭大横径83.2±5.3mmであった。

アメリカ産婦人科学会運動ガイドラインを参考に,妊娠前と妊娠中ともに30分/日,5日/週以上の運動を実施しているものを「運動実施群」,それ未満のものを「運動非実施群」とし,上記項目において2群比較を行った。統計学的解析にはχ2検定およびMann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%未満とした。


【結果】骨盤底筋障害の自覚症状ありの割合は,骨盤臓器脱症状52.4%,結腸-直腸肛門障害症状66.7%,下部尿路機能障害症状60.3%,いずれかの症状がある者は82.5%であった。

身体活動量については運動実施群16名(25.4%),運動非実施群47名(74.6%)であった。両群間において年齢,妊娠週数,出産経験,妊娠前BMI,妊娠後体重増加量,胎児体重,頭大横径には有意差は認めなかった。骨盤底筋症状については,運動実施群11名(68.8%),運動非実施群41名(87.2%)であり,運動実施群が運動非実施群と比較して有意差はないものの低い傾向を示した(p=0.093)。

【結論】身体活動量の結果より,妊娠前と妊娠中ともにガイドラインで推奨されている以上の身体活動量のある者は非常に少ないことが明らかとなった。これは対象が総合周産期母子医療センターへ通院している妊婦であったため,何らかの合併症などにより身体活動量を制限されていた可能性も考えられる。また,運動実施群で骨盤底筋症状が少ない傾向を示したことから,有効な運動の種類や量を検討していく必要性が示唆された。