[O-MT-14-1] 変性後側弯症患者に対する胸腰椎矯正固定術がproximal junctional kyphosisに至る因子の検討
Keywords:変性後側弯症, 胸腰椎矯正固定術, proximal junctional kyphosis
[はじめに,目的]
近年では脊椎術後に隣接椎間障害,近位隣接椎間後弯(proximal junctional kyphosis:以下PJK)に至る症例の術前アライメント評価の報告は散見されるが,術前のADLや心理的側面,臨床所見などの因子を含んだ報告は少ない。今回は,矯正固定術後PJKに至る症例の術前の予測因子を検討し,術前術後のリハビリテーションでの指導や介入戦略の一助にすることを目的とする。
[方法]
対象は2012年5月から2016年7月までに当院にて変性後側弯症に対する矯正固定術を施行した106名中,術前に評価可能であった64名とした。除外基準は,術前歩行困難な者,下肢関節疾患の手術既往を有する者,術後重篤な合併症があった者とした。対象者の内訳は男性10名,女性54名,年齢(平均±標準偏差)72.4±4.7歳であった。また,全対象者を脊椎専門医の診断により術後4週間未満にPJKとなった者(以下PJK群),それ以外の者(以下CTR群)の2群に分類した。評価項目は年齢,Oswestry Disability lndex,Pain Catastrophizing Scale,腰背部・下肢痛のVAS,TUG,FRTとした。FRTにおいては,矢状面の画像よりリーチ開始時とリーチ最大到達時における股・足関節角度とその角度変化量,肩峰・大転子の移動量比率を算出した。また画像所見として骨盤形態角・骨盤傾斜角・胸椎後弯角・腰椎前弯角・仙骨傾斜角・sagittal vertical axisを測定した。なお,FRTの画像解析にはimageJ(ver1.6.0_24)を用いた。統計解析は各評価項目を対応のないt検定・Mann-WhitneyのU検定を用いて両群の差を検討した(p<0.05)。
[結果]
股関節角度変化量の平均±標準偏差(CTR群/PJK群:30.8±20.4°/41.5±18.8°)と足関節角度変化量の平均±標準偏差(CTR群/PJK群:3.4±3.2°/6.0±4.1°)のみに両群間で有意差が認められた。
[結論]
伊藤らは,胸腰椎矯正固定術患者は術後FRT時で足関節戦略をとる割合が増加すると報告している。今回の結果よりPJK群はCTR群と比較して術前のFRTの距離に有意差がなく,股関節屈曲・足関節底屈角度変化量が多いことから,立位バランス時に股関節戦略を選択している傾向にあると考えられる。しかし術後に立位バランスを足関節戦略でとらざるを得なくなるため,制御できず脊椎固定部位の上部で代償してPJKを助長させることが示唆された。以上より胸腰椎矯正固定術後患者は術前術後で立位バランス時に,足関節戦略を選択できるようなリハビリテーションを行うことでPJKを予防できる可能性がある。
近年では脊椎術後に隣接椎間障害,近位隣接椎間後弯(proximal junctional kyphosis:以下PJK)に至る症例の術前アライメント評価の報告は散見されるが,術前のADLや心理的側面,臨床所見などの因子を含んだ報告は少ない。今回は,矯正固定術後PJKに至る症例の術前の予測因子を検討し,術前術後のリハビリテーションでの指導や介入戦略の一助にすることを目的とする。
[方法]
対象は2012年5月から2016年7月までに当院にて変性後側弯症に対する矯正固定術を施行した106名中,術前に評価可能であった64名とした。除外基準は,術前歩行困難な者,下肢関節疾患の手術既往を有する者,術後重篤な合併症があった者とした。対象者の内訳は男性10名,女性54名,年齢(平均±標準偏差)72.4±4.7歳であった。また,全対象者を脊椎専門医の診断により術後4週間未満にPJKとなった者(以下PJK群),それ以外の者(以下CTR群)の2群に分類した。評価項目は年齢,Oswestry Disability lndex,Pain Catastrophizing Scale,腰背部・下肢痛のVAS,TUG,FRTとした。FRTにおいては,矢状面の画像よりリーチ開始時とリーチ最大到達時における股・足関節角度とその角度変化量,肩峰・大転子の移動量比率を算出した。また画像所見として骨盤形態角・骨盤傾斜角・胸椎後弯角・腰椎前弯角・仙骨傾斜角・sagittal vertical axisを測定した。なお,FRTの画像解析にはimageJ(ver1.6.0_24)を用いた。統計解析は各評価項目を対応のないt検定・Mann-WhitneyのU検定を用いて両群の差を検討した(p<0.05)。
[結果]
股関節角度変化量の平均±標準偏差(CTR群/PJK群:30.8±20.4°/41.5±18.8°)と足関節角度変化量の平均±標準偏差(CTR群/PJK群:3.4±3.2°/6.0±4.1°)のみに両群間で有意差が認められた。
[結論]
伊藤らは,胸腰椎矯正固定術患者は術後FRT時で足関節戦略をとる割合が増加すると報告している。今回の結果よりPJK群はCTR群と比較して術前のFRTの距離に有意差がなく,股関節屈曲・足関節底屈角度変化量が多いことから,立位バランス時に股関節戦略を選択している傾向にあると考えられる。しかし術後に立位バランスを足関節戦略でとらざるを得なくなるため,制御できず脊椎固定部位の上部で代償してPJKを助長させることが示唆された。以上より胸腰椎矯正固定術後患者は術前術後で立位バランス時に,足関節戦略を選択できるようなリハビリテーションを行うことでPJKを予防できる可能性がある。